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第百三十四話 ミスリールヘイヴン到着


「もう少しでミスリールヘイヴンに到着しますよ」


挿絵(By みてみん)


 俺たちの横に馬を寄せながらにっこりと微笑むフィーネ。


「そうか。だがわざわざ案内してもらって良かったのか?」

「ああ、そのことでしたらお気になさらず。私も別件でミスリールヘイヴンに呼ばれておりますのでついでですから」


 フィーネは物静かな雰囲気のエルフだ。他のエルフがああいう感じなのであくまでも相対的な話ではあるが。強いて言えばフリンに少しだけ似ているかも。


「なあフィーネ」

「はい、なんでしょう?」


「アルディナは銀髪だったが普通のエルフとは違うのか?」


 あまりたくさんエルフを知っているわけではないが、通常エルフの髪色はフィーネやカリンのように黄金色のブロンドだ。そういう意味で、アルディナの銀髪は異彩を放っていた。


「ああ、隊長はああ見えて王族ですからね、銀髪は王族の証です」


 なるほど、エリンやフリンも銀髪だったがやはりそうなのか。


「外部の人間にそんなことを教えても大丈夫なのか?」

「構いませんよ。秘密でもなんでもないことですから」


 それもそうだな。見れば一目瞭然だし。ただ、それを知って誘拐しようとする輩が現れるんじゃないかと心配にはなる。エルフにとっては常識かもしれないが、ただでさえ希少なエルフだ。王族となればその価値は跳ね上がるだろうことは想像に難くない。


「なあフィーネ」

「なんでしょうセリーナさん?」


「ちょっとくっ付きすぎじゃないのか?」

「ああ、これは仕方がないのです。ファーガソンさまの発する匂いに惹きつけられてしまいますので」


 いつの間にか馬を降りて悪びれるわけでもなく回した腕にギュッと力を入れるフィーネ。


 なんだその匂いを発するって?


「……リエン、そんな馬鹿なことあるのですか?」

「うん、どうやらファーガソンは異性……特に亜人に対するフェロモンみたいなものを発している可能性が高い」


 リエン……そうなのかっ!? それじゃあなんだか悪い魔物みたいじゃないか……。


「そのフェロモンとやらは魔法でどうにかならないのか?」

「あのねファーガソン、魔法なら何でもできると思ったら大間違いだよ。甘えないで」


 いや、魔法は何でも出来るといったのはお前なんだが……


「はあ……まったく厄介ですね。それなら仕方ありませんか」


 大きなため息を吐くセリーナ。よくわからないが諦めてくれたらしい。


「なあセリーナ」

「なんですか?」


「なぜお前までくっ付いているんだ?」

「駄目ですか?」

「いや全然」 

 

「ファーガソン、おんぶ」

「了解」

「理由は聞かないんだ?」

「何かあるのか?」

「無いけど」


 リエンを背負う。まあ、ここまで来ればもう危険は無いだろう。


  

「ぐぬぬ……何やら外の方が楽しそうなんですけど」

「何してるのリリア?」

「な、何でもないですよ千早。そろそろミスリールヘイヴンが見えて来るかなって」


「ミスリールヘイヴンかあ。やっぱり期待しちゃうよね、巨木の中にある街ってイメージ」

「だよね? 私も楽しみにしてたんだ」

「リリアは来たことないんだっけ?」

「うん、初めて」





「ようこそミスリールヘイヴンへ」


 すでに入国審査は終えているので、ここで足止めを食らうことはない。そのまま門を素通りして街へ入ってゆく。


 我々はかなり規模の大きい集団なので、早くも宿泊先の売り込みや商人たちが群がって交渉が始まっている。


 街の人々にも注目されているのか見物の人垣が凄いことになっているな。


 ミスリールヘイヴン自体は人族基準でいえば中規模の街に相当する。森の中にあるとは思えないほど広大で街の奥行きは見渡すことすら出来ない。おそらく一日二日ではとても回り切れないだろう。



「ファーガソン殿、警護の任務お疲れ様でした。予定ではここで一週間ほど滞在しますので、その間は自由にしていただいて大丈夫ですよ。出発日が決まりましたら追って連絡しますので」


 アリスターさんの商隊はこの街で大きなビジネスを予定しているらしい。仕入れや休息も必要ということで、一週間は仕事からは解放されることになる。久し振りのまとまった自由時間だ。



「さてと……ん? どうしたんだチハヤ、リリア?」


「こんなの……おかしいよファーギー!!」

「本当ですよ、こんなの詐欺じゃないですか!!」


 なぜかガッカリしている二人。


「何を期待していたんだ? 噂にたがわず素晴らしく美しい街じゃないか」


 降り注ぐ日の光。整えられた石畳。清潔で整然とした街並み。少しだけ故郷の街を思い出す。控えめに言ってもガッカリする要素など無さそうなのだが……?


「だって普通の街なんだよ?」

「そうですよ、こんなのおかしいですって」


 ……一体二人はどんな街を想像していたんだろう? すまん、どうやら俺には理解できそうにない。



「ふふふ、ガッカリされましたか? ミスリールヘイヴンは我々エルフが外の世界に慣れるための街、そのため環境も含めて人族の街をそっくり再現しているのです」


 フィーネの言葉でやっと理解できた。ああ、なるほど、二人はもっとエルフっぽい街が見たかったのか。


「「フィーネさん、本当のエルフは巨木の中に住んでいるんですよね? ね?」」

「え!? ええ、まあ……ですが最近の若い世代はそうでもなかったり……ごにょごにょ」


 チハヤとリリアの圧を受けて後ずさるフィーネ。


「フィーネさん見たい!!」

「お願いしますフィーネさん!!」


 瞳を輝かせながら懇願するチハヤとリリア。


「え? 興味を持ってくださるのは嬉しいんですけれどそれは難しいかと……外部の人間の立ち入りは禁じられておりますので」


 まあそうだろうな。わざわざミスリールヘイヴンという場所を作っているくらいだ。



「むうう……こうなったら……ファーギーお願い!!」


 え? 俺? 駄目なものは駄目だろう? ほら、フィーネだって困っているじゃないか。


 まあ……俺が言って駄目なら二人も諦めてくれるかな?


「フィーネ、何とかならないか?」

「ふえっ!? そ、そそそうですね……私には権限はありませんが隊長なら何とかしてくれるかもしれません……」


 アルディナか……仮にも王族だし、立場的にもたしかに可能性はあるかもしれないな。

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