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最強冒険者のグルメ旅 ~据え膳も残さずいただきます~  作者: ひだまりのねこ


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第百十五話 中級ファーガソン


「実は二人に折り入って頼みたいことがあるんだが……」

「「頼みたいこと?」」


 サッリがようやく動けるようになったところで二人に本題を切り出す。



「なるほどねえ……まあそういうことなら、ファーガソンさんは命の恩人だし……わかったよ。魔族のことは一切口外しない。妹を助けたい気持ちは私にもよくわかるし」


「私も言いません。ネッコたちも無事でしたし、それに……ファーガソンさまが困るようなことはしたくありませんから!!」


 リンダもサッリもあっさりOKしてくれた。ありがたい。


「悪いな二人とも。復旧の費用は可能な範囲で援助するつもりだ。それに俺の仲間たちにも協力を頼むように約束する」


 とりあえず二人が理解ある女性で助かった。


「ただし」


 リンダの視線が厳しくなる。


 やはりそう簡単には行かないか……。


「もし授からなかったら、また頼むよ」


 そっちか……ハハッ、実にリンダらしいな。


「ああ、俺で良ければ任せておけ」


「あの……ファーガソンさまは、またヴァレノールにいらっしゃるんですよね?」

「ああ、一度仲間の所へ戻るが、後日あらためて来るつもりだ」


「でしたら、またその時……お願いします」

「ああっ!! ずるいぞサッリ。ファーガソンさん、私も!!」


「それは構わないが……サッリは大丈夫なのか?」


「あはは……今度は中級ファーガソンでお願いします」

「わ、私は全力ファーガソンで構わないぞ!!」

「お姉ちゃん……それって私が回復魔法使う前提だよね?」


 全力ファーガソンはまだ理解できるが、中級ファーガソンってなんだ?  




「というわけで、二人とも魔族のことは誰にも話さないと約束してくれた」


『そうか……良かったよ。ありがとうファーガソン』


 一番気にしていたマキシムだったが、ホッとした表情を見せる。


『私たちも片づけとか手伝わないとね、マキシム?』

『……わかってるさマギカ』


 マキシムとマギカは俺たちの仲間として一緒に町を救ったという形でリンダが町の人々には説明してもらうので問題は無いだろう。


 そもそもこの国では魔族とネクロビートルの関連を知っている人間がそもそもほとんどいないから怪しむ人間はまずいないだろうし、仮に気付いた人間がいたとしても魔王はすでに倒されているのだから関連付けることは難しい。



『うっ……こうしてみると結構ボロボロになってるね……』


 皆で町へ入るとマキシムが頭を抱える。


「そうだな……元通りにするとなると数か月、いや年単位の時間は必要かもしれないな」

『うわあ……それを聞いたらますます気が重くなってくるね……』


 資金の問題よりも修復できる人手が足りない。北部戦線のせいでどこも人手不足なのだ。


「ははは、まあ悪いことばかりではないさ。外観は悪いが都市機能は破壊されていないし住宅も大半は軽い修復で問題なく住める。ヴァレノールは小さな町だし大金が動くことで経済が活性化して町が生まれ変わるメリットの方が大きいと思うぞ」 


 イデアル家が管理していた領地も投資を続けたことで人やモノが集まって繁栄していたんだ。領地を取り上げられて投資が止まった町は見るも無残に寂れてしまった。



「ねえファーギー」

「どうしたチハヤ?」


 町の様子をじっと眺めていたチハヤが何かを思い付いたように声を上げる。


「たぶんね、直せるよアレ」

「……アレって何を?」

「だから町」


 チハヤの言葉に全員ポカーンとしている。言っている意味はわかるが理解できないのだ。


「えっと、まさかとは思うが、あの壊れている町を直せる魔法があるのか?」

「うん、なんかね、神聖魔法には対人と対物両方の治癒系統の魔法があるんだって」


 リエンがそう言ったのならそうなのだろう。にわかには信じられないが。


「やってみて良い?」


 今なら皆避難所に居て外に人はいないから、魔法を使うなら絶好のチャンスかもしれない


 出来るだけチハヤの神聖魔法は人前で見せたくない。聖女だという噂が立ってしまったら厄介だしな。


「わかった。やってみてくれ。ただし、完全に直す必要はないからな? アレ? 思ったより被害が軽かったな、って思うくらいが理想だ」


 完全に元通りになるとは思えないが、あまりにも被害が軽ければそれはそれで言い訳出来なくなってしまう。


「うん、わかった」


 軽い感じでチハヤが魔法の準備を始める。


 準備と言っても、チハヤの場合魔力を集めたり練ったりする必要が無いようで、頭の中で魔法を思い浮かべるだけなんだとか。リエンが苦笑いしていたな。



  万物に命の息吹を、聖なる光よ、今こそ届け給え!癒しの聖光!



『神浸の光雨しんしんのこうう


 天から光の雨が降り注ぐ。


 信じられないことに光の雨が当たった場所が修復されてゆく。


 穴が開いた壁も、割れた壺も元通りになってゆく。


 まさに……神の奇跡。これが……聖女の力……なのか!!




「おっと、チハヤもう十分だ」

「わかった」


 光の雨が止むと町には虹の橋がかかる。


 うむ、丁度良い塩梅だな。これなら先ほどまでよりも復興も容易だろうしギリギリ誤魔化せそうだ。


『ふわあ……チハヤさまは凄い方なのですね』


 マギカがチハヤの魔法を見て感動している。


「ふふふ、そんなこと……あるかな」


 胸を張り過ぎてひっくり返るチハヤ。マギカが慌てて助けに入る。


 どうやらすっかり自信を得て本来の明るさが全開になって来たな。




「さて、後はリンダたちに任せて一旦仲間の所へ戻るぞ」 


 避難している人々を早く安心させてやりたい。皆も心配しているだろうし。


「ドラコ、お願い」

『にゃああ!!』


 ドラコの体がぐんぐん大きくなる。ここへやって来たときよりもやや大きいのは双子を乗せるからだろう。


『うわっ!? 大きくなった!?』

『え……? どういうことですか、これ』


 そうか、二人ともどらこが大きくなるのは初めて見るんだったな。


『まきしむとまぎかものる』


『え? 良いの?』

『わあっ!! 楽しそうなのです』


 マキシムとマギカはさっそくドラコの背中に乗ってはしゃいでいる。


「チハヤ」

「ありがとうファーギー」


 チハヤをドラコの背中に乗せてから飛び乗る。


「よし、出発だドラコ」

『はいなの~』

 

 大きく伸ばした純白の翼を羽ばたかせてドラコが宙に舞い上がる。


 地上からわずか一メートルだが。



「ドラコ、もう少し高く飛んでも良いんじゃないか?」

「駄目だよファーギー怖いじゃん」


 万能に思える聖女さまでも高い所はやはり怖いらしい。

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