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第百十四話 全力ファーガソン


『う、うーん……あ、あれ……? ここは……どこ? アナタたちは誰?』


 目を覚ますなりキョロキョロと周囲を見渡し、見知らぬ場所、見知らぬ人間に驚くマギカ。


 短髪のマキシムとは違って腰まである長い髪を結っているので、角があることがわからない。こうしてみるといわゆる薄幸の美少女という形容が良く似合う。魔王の娘だと知らなければ、の話ではあるが。


『わあっ!! 良かった……マギカ、死んじゃうんじゃないかって心配したんだよ』


 涙目でマギカに飛びつくマキシム。浄化される前の傍若無人な様子からは想像も出来ないほど年相応に見える。実際の年齢は知らないが。


挿絵(By みてみん)


『……もしかしてマキシム? なんだか雰囲気が変わったんじゃない?』

『そう? ああ、でもマギカも見た目の感じ結構変わっているから同じ感じなのかな?』


 元々そっくりな双子だから鏡を見ている感じなのかもしれない。



「マギカ。俺は冒険者のファーガソンだ」

「チハヤだよ」

『どらこなの』


『マギカ、この人たちが助けてくれたんだよ』

『そうだったのですね……助けてくださりありがとうございます』


 深々と頭を下げるマギカ。



「まあ、助かって良かったよ。もっとも町がこの有様だから喜んでばかりはいられないが……」


 ネクロビートルは魔力を帯びたものしか食べないので人的な被害が無かったのは幸いだった。怪我人もその多くは突き飛ばされたりしたもので、それもすでにチハヤの魔法で全快している。


 問題は酸性の唾液による構造物への被害だ。こちらは修復に時間がかかるだろうな。


『ファーガソンさま、ネクロビートルは我々魔族に寄生しているので勝手に付いて来てしまうのです。決して命令して町を襲わせたわけではないのです』


 遠目にも煙が立ち昇る町を見て青ざめるマギカ。


「それはさっきマキシムからも聞いた。おそらくは転移魔法が発動した際に一緒に連れて来てしまったのだろう。まあ元はと言えば結局帝国のせいなのだから、あまり気にするな」


 この子たちに責任を負わせるのはあまりにも気の毒だ。俺に出来る支援は出来る限りするつもりだが……まあ費用は後で帝国に賠償請求してやるか。


「ネクロビートルの件は自然災害扱いで誤魔化せると良いんだが、問題はあの姉妹にマキシムの存在がバレているということだな」

『うっ……それは……ごめんなさい……』


 今度はマキシムががっくりと落ち込む。まああの時はマギカを助けたくて選択の余地など無かったからな……。とはいえ、あの姉妹を何とかしなければ魔族の関与ということにされて処刑されてしまう可能性が高い。


「どうするのファーギー?」

「むう……とりあえずあの姉妹に会って話してみるさ。チハヤとドラコはここで二人と一緒に待っていてくれ」

「うん、わかった」

  



「おおっ!! 急に居なくなるから探したぜお兄さん」


 町へ戻るなり例の姉妹と再会することが出来た。どうやら向こうもこちらを探していたようだ。 

 

「そうか、手間を取らせたな。俺はファーガソン、白銀級の冒険者だ」

「は、白銀級!? マジかよ……そんなの初めて会ったぞ……」

「お、お姉ちゃん、初対面の方に失礼でしょ。私はサッリと言います、魔法使いです。この町で冒険者と防衛隊の仕事をしています。助けていただき本当にありがとうございました」


 ぺこりと頭を下げるサッリ。この子が妹か。柔らかいブロンドの髪……貴族の血が入っているのかもしれないな。


「こりゃあ悪かった。私はリンダ、この町の防衛隊隊長をやってる。ありがたいことに『炎刃』っていう二つ名もあるが私には過ぎた名だと思ってるよ。私たちと町を救ってくれて本当に助かった。何か御礼をしたいんだが……あいにく町がこんな状態だからな……」


 姉のリンダは赤毛の戦士か。この辺りではあまり見ないから北方の血が入っているのかもしれないな。鍛え上げられた肉体が美しい。隊長を務めているのも納得の貫禄だ。


「ああ、その件なんだが……人払い出来る場所で話が出来ないか?」


 まだ周囲に魔族の件を話していないようだし、今の内に話がつけられれば……


「ほう……そう来たか。良かろう、こちらも願ったり叶ったりだ」

「はわわ……さすが白銀級さまは積極的なのです……」


 何だろう? 微妙に話が食い違っているような気がするんだが。



「どうだ? ここなら全員避難しているから誰も来ないし、使いたい放題だぞ」


 連れて来られたのは町の宿屋、おそらくだがかなり高級な部類だろう。


「ああ、申し分ないが勝手に使ってしまって大丈夫なのか?」

「気にすんな。ここのオーナーは私の知り合いだからな」


 カラカラと笑うリンダ。こういう大らかな性格の女性は実に好ましいな。 


「そうか、それでは早速話を――――」

「ああ良いってそういうのは。あんまり時間も無いし早速始めようぜ?」


 なぜか服を脱ぎだすリンダ。


「お、お姉ちゃん、積極的だね……わ、私も……えいっ!!」


 待て、なんでサッリまで脱ぎ始めたんだ?


「ファーガソンさん、何ボーっとしてるんだ? 早くファーガソンしようぜ?」


 ちょっと待て、もうファーガソンがここまで広がっているだと!?


「わ、私は三人欲しいです、ファーガソンさま!!」

「あはは、サッリ、いくら白銀級のファーガソンさんでもそれは無理だろ? 双子なら可能性あるかもだが」


 そういうことか。


「サッリ、そういうことなら手加減は出来なくなってしまうが?」

「はうう……だ、大丈夫……です。簡単な回復魔法なら使えますから……」

「くっ……やるなサッリ、だがファーガソンさん、私も鍛え方が違うからな。遠慮なく全力ファーガソン頼むぜ!!」


 全力ファーガソンか……壊れてしまわなければいいが……





「こ、これが……全力ファーガソン……か。甘く見ていた……ぜ」


 起き上がるどころか身動きすら満足に出来ないリンダ。


「…………」

「お、おいっ!? サッリ!! 大丈夫か? 馬鹿野郎が……無茶しやがって……」


 一方のサッリは放心状態でピクリともしない。やってしまった……大丈夫だろうか?  

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