表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サザンクロスの花をキミに  作者: 黒舌チャウ
御守り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/99

第八十三話  花霞【紅】

「ぐああぁぁぁぁ……っ!!」


「シルグレ!!」



 炎に包まれたシルグレが、膝をつき、苦しそうに声を上げた。



「ひぃゃあっはっはっはっは!!! ザマぁねぇな、バケモンがぁっ!」



 「派手な商人」は、シルグレを指さして腹を抱えて笑ってる。



 くそっ……あいつ……!



「全獣の丸焼き肉も、案外金になるかもなぁっ! こんがりおいしく焼けてくれよぉ? くくっ……ぁははははっ!!」



 ……でも……今なら、きっと油断してる。


 オレが…………オレが、やらなきゃ……!



「ぐああぁぁぁぁ…………ッハッハッハッ!!」


「……あ?」

「え? ……あっ」



 「派手な商人」を睨みつけて、そっとナイフを抜いたオレの視界の外から、突然シルグレの笑い声がした。

 

 指さしたままの姿で口を開けて固まった「派手な商人」の視線に合わせて、シルグレを見る。



 シルグレは相変わらず炎に包まれていて……でも、さっきと何かが違う……。



「この程度で、オレを仕留めたつもりか? お前、ホントに”おちゃめ”なやつだな」 



 また、「おちゃめ」って言ってる。

 あれも気に入ってるのかな……?


 ……そうじゃなくて。

 なんだろう……何が違っ…………!?



「オォォォッ!!」



 シルグレが片膝をついたまま、下から斬るようにして斜めに大剣を振り上げると、身体を包んでいた炎が一瞬でかき消えた。



 まだ、ゆらゆら残る小さな炎が大剣を照らして、刀身を染めてる。

 

 花が舞っているみたいで綺麗だ。


 あれ?



「あ……錆がなくなってる……」



 錆だらけだった大剣は、鏡みたいに傷ひとつない綺麗な刀身に変わっていて、シルグレの立派な尻尾を映してる。



「えッ!? なんか、反応地味だな!」



 シルグレが、さっきの体勢のまま、オレに向き直って吠えた。



「えっ? あ、ごめんっ」


「もっと驚くだろ、フツー! 『んなっ!? 何だ、あれは!?』とか、『どうなってるの!?』とか、『一体、何者なんだぁ!』とかぁ!」


  

「な……何なんだ、ありゃぁ……。何がどうなってやがる…………あいつ……何者(なにもん)だ……!」



「あ! ほら! ああいう反応だよ! あれが正解だろ!」



 動揺した様子の「派手な商人」を後ろ手に指さして、シルグレが吠え続ける。



「ごめんってば。その……なんだか、ちょっと見とれちゃってて……」



 オレの言葉に、急に静かになったシルグレが、「派手な商人」に向き直って大剣を構えた。

 横顔は、すこし微笑ってるように見える。



「ふふんっ……それも、悪くはないな。いい答えだ」 



 それにしても……。

 シルグレの構える大剣は、さっきまでとは、まるで別の剣みたいだ。


 あんなに大きくなければ、「勇者様が持つ剣だ」って言われても納得しちゃうかも。



「……それ、もしかして魔法を吸収したの?」


「ん? ちがうぞ? なんだそれ」



 え?



「え……だって、さっきまであんなに錆だらけだったのに、魔法を受けた途端キレイになったんだよ?」


「ああ……ふっ、魔法は関係ない。こいつはな……使い手の『正義の心』が昂った時に真の姿を現すのさっ!」


「え? ……うーん……と、よくわかんないけど……すごい」


「……え? そんな反応!? 『何それ! 激熱ぅ!』とか、そういうのじゃないのか!?」



 激熱?


 

「え…っと……そういえば、その剣って名前とかあるの?」


「急だな。名前……考えたことない……が……名前か。……いいな! なにがいいと思うっ?」


「えっ、オレ?」


「ああ! さっきも、いい案、出してくれたしな!」



 えぇ……。急に言われてもなぁ。

 でも、ごまかすためとはいえ、話振ったのオレだし……。



「じゃあ……。……さっき、刀身に炎のかけらが反射してすごく綺麗で……。まるで、剣の中で花が舞ってるみたいだったんだ。……だから……『花霞(はながすみ)』……なんて、どう……かな……?」


「て……」


「……?」


「……ててて天才だ…ッ!!」


「えっ!? ……そ…そうかな……?」


「お、おい……! 聞いたか、今の!? ここに天才がいるぞ…ッ!! ……こ…これが天才の力…………圧倒的だ…………」


「なんかヤダ」



 「派手な商人」のほうにまで呼びかけたり、オレを呆然と眺めたり、忙しく動いた後、刀身をくるくる返しながら目を細めてる。



「……『花霞(はながすみ)【紅】』……! ……()い……!』



 なんか足されてるけど、もういいや。気に入ったみたいだし。




「すっかり余裕かましやがって……! ……はんっ! だが、おかげで詠唱の時間は、たっぷりもらった! 今度こそ死ねぇぇっ!」



 あ! なんでだろう、忘れてた……!!



 「商人」がそれぞれ突き出した杖の先に、魔法陣が浮かび上がった。

 さっきのよりも大きい。



「懲りない奴らだな……何度やっても同じだ。……吠えろ! 『花が……違うか。……うーん」



 大剣を構えて駆けだそうとしてたシルグレが、急に足を止めた。


 首をひねって、何か考え事してるみたいだけど――



「シ……シルグレ! あぶないっ! 魔法、魔法……!」


「……は…っ! これだ……!」



 一瞬、口を開けて空を見上げたシルグレが、目をつむって静かに構え直す。


 さっきより大きな炎の渦が、シルグレを飲み込もうとした瞬間――



「……舞え。……『花霞』……」 



 え……? なんかシルグレ、声かっこよくなってない……?



 大剣を高く、切っ先を下に構えたシルグレが、くるりと回る。

 大きな音を立ててぶつかった炎の渦の先端が、花びらが散るみたいに舞って消えて――


 その流れのまま、シルグレは、大剣を振りながら進み始めた。


 一振り、一振り、振るごとに――だんだん速く、鋭く。


 でも……力強いだけじゃない、流れるような動き。



 やっぱり、シルグレが戦う姿は綺麗だ。



「うわ…っ!」

「……ひっ!」



 振った刀身が、また見えなくなるほど速くなった頃には、シルグレは一気に距離を詰めていた。

 横に大きく振りかぶったシルグレの前には、杖を持った「商人」が二人。

 


()ッ!」



 シルグレが鋭い声といっしょに大剣を振り抜くと、二人の身体はポッキリ折れたみたいに二つに離れて、地面に落ちた。


 「おばけ」でも見たみたいな顔で、シルグレを見上げた顔のまま。 

 


 「血の雨が降る」なんて言うけど、そういうのはなくて。

 ただ、水の入ったバケツを倒した時みたいに、倒れた身体の断面から、血がこぼれ出てる――そんな感じ。



「……か…っ…! …………ひ…っ!」



 腰を抜かした「派手な商人」が、転がってる「商人」とシルグレとに、視線を行ったり来たりさせてる。


 脚を動かしてるけど、力が入ってないのか、ただ何度も地面を滑らせてるだけだ。



「ま…待て…ッ! ……まま待てって……! はなっ、話を……話を聞いてくれ……ッ!!」



 転がった二人と同じ顔でシルグレを見上げる「派手な商人」が、腕を大きく振り回しながら大声を上げてる。



「レーーイっ! こいつ、話があるらしいが、どうする?」



 シルグレが、オレのほうを振り返って声を上げた。


  

「……話……?」




  

 

 




 

レイ自身は中二病じゃないんですけど、中二的ネーミングセンスがあったようです ”(´・∞・`*)


シルグレの大剣は両刃設定だったんですけど、便宜上、何度も「刀身」記述したこともあって、「片刃で想像してる方が多いかも(´・∞・` )」ということで、名前を「和」にしてみました ”(´・∞・` )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ