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サザンクロスの花をキミに  作者: 黒舌チャウ
御守り

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第八十二話  赤錆の大剣

「え…っ? どういうこ……うわっ」



 追いかけて瓦礫の中に入ると、シルグレがまた突然立ち止まったせいで大きな尻尾に顔を突っ込むはめになった。



「妙だと思ってたんだ。この村はさほど大きくはないが、守りはしっかりしている。だが、それにしては抵抗した跡があまり見られない。……まるで、奇襲でも受けたみたいに、な」


「……シルグレ?」



 シルグレが伸ばした右腕の先を見ると、長い棒を握っていた。

 長い棒の先は「赤茶けた柱」につながっていて、「柱」は瓦礫の中に突き立ってる。



「だが……手引きしたやつがいれば話は別だ……!」



 声に力がこもったかと思うと、ガラガラと瓦礫の崩れる音がした。


 シルグレが柱を引き抜いたから。



 ――でも。



 柱かと思ってた物は、思ってたよりも平べったかった。



「剣……?」



 すごく大きい。


 刀身だけでもオレより大きくて、身体の大きなシルグレが持ってるのを見ても、あんなのどうやって振り回すんだろうって思うくらい。

  

 でも……すっごく、錆びてる。


 いくら刀身が幅広だからって、普通の見た目だったらオレだって「柱」だなんて思わないもん。




「来たか」


「え? 来た、って…………あ……」



 つい錆が気になって、肩に担がれた大剣をじっと見ちゃってた……。


 シルグレが見てる方向を見てみると、たくさんの人たちが歩いてくるのが見える。

 

 二十人ぐらい……かな。 


 でも……こっちに向かってくる間にも、建物の間からぱらぱらとすこしずつ合流してきてる。


 見た目は……商人さんみたいだ。




「そちらの方々! 大丈夫ですか!」



 商人さんの中で、一番派手な格好をした人が大きな声を上げた。


 優しそうな声だったけど、すこし距離が近くなって顔がよくわかるようになってから、怖い目をした人だと思った。



「いやぁ、行商の途中で立ち寄ったのですが、こんなことに……。手前共も、さきほどから生き残った方を探していたのですが、お二人の他には……?」



 黙ってるシルグレを見上げると、目を細めて、鼻をひくひくさせてる。



「ああ、これは失礼を……恐ろしい思いをされたばかりでしょうに……。今、食べ物と水を…」

「クサいな」


「……は?」



 え?


 い…いきなり、失礼だよ……!



「クサいって、言ってんのさ。お前らから、狼の魔物(ベラーレプス)の血のニオイがプンプンするぜ」


「……いったい何を仰っているので……?」


「ふんっ……たしかに魔物は、死ねば身体は崩れて無くなる。飛び散った血も、しばらく経てば同じだ。けどな……ニオイってのは、そう簡単には消えないんだ。人族のお前らには、分からないだろうけどな」


「それは……村中(むらじゅう)こんな様子なのです、魔物の血のニオイがしても何ら不思議は…」

「それに、このニオイ。いろいろ混じってて今まで気付かなかったが、ハナマガリ草だろ? 煮詰めたできた液体は、動物避けにも使われる。おかげで、頭がガンガンするぞ」


「……さきほどから、何を仰っているやら。手前には、さっぱり……」



 商人さんは、にっこり笑ってるけど、目はずっと怖いままだ。



「生け捕りにした狼の魔物(ベラーレプス)の腹でも裂いて村の近くまで引きずり、闇に紛れて瀕死のそいつを村の前に置いたってとこだろ。やつらは魔物の中でも仲間意識が強いからな」


「………………」


「ついでに、ハナマガリ草の液を撒いて感覚を狂わせてやれば、怒り狂った魔物の群れの出来上がりだ。侵入しやすいように、入り口も用意してやったんじゃないのか?」

 


 にっこり笑ったままの商人さんを、周りの商人さんたちがチラチラ見てる。



「周りのやつらも護衛っていうならまだしも、同じ商人風の恰好なんて、な。

そんな多人数で行商っていうのも、無理があるだろ」


「……あんたみたいのは、想定外だったものでね」


 

 笑顔が消えて、眉毛の形を歪ませた商人さんから、違う人みたいな声が聞こえた。

 右の頬を軽くひくつかせてシルグレを睨んでる。 



「ようやく、まともに会話ができそうだな。……それで? 今さら、のこのこ出てきて何の用だ」


「……いやね、うちの(もん)が加減を間違えたせいで、村の人間が想定以上に死んじまったんでね。本当なら、十人ほどは確保できる予定だったんだがねぇ……」


「奴隷商人か」


「いやいや、『魔物に襲われて寄る辺の無い人たちに新しい仕事を紹介して差し上げる、心優しい真っ当な商人』でございますよ」


「はんっ……」


「……魔物に襲われた可哀想な所ってのはねぇ、大抵、女子供がかくまわれて残るものなんだよ。だけどねぇ……あの馬鹿のせいで……とんだ無駄骨を折っちまった……」



 途中から歯を食いしばったように言う商人さんに、シルグレが不機嫌そうな声で続けた。



「その『馬鹿』は、お前が始末したんだろうが……そんな話はどうでもいい。……オレは、『何の用だ』と聞いたぞ……」


「……そう、怒りなさんなよ。当然、金目の(もん)は頂いていくが、こんなちゃちな村じゃ、たかが知れてる。……その坊や、渡してくれないかい?」



 え……オレ……?



こいつの兄ちゃん(戦士)が命を賭して守り抜いたものを、お前のような外道に渡すわけにはいかんな。戦士の名折れだ」


「シルグレ……」


「ずいぶんな言われようだ。……こんなガキ一人のために死にたかぁないだろう?」


「オレが、か? 心配してもらって悪いが……お前らこそ、生きて帰れると思ってるのか?」



 すこし腰を落として構えるシルグレに、「派手な商人さん」が顔を歪ませた。



「……言ってくれるじゃないか。かっこいいねぇ……あぁ、かっこいい……。……まったく…………下手(したて)に出てやってりゃ、散々ナメたこと抜かしやがって! 獣風情がぁッ!!」



 「派手な商人さん」が大ぶりな短刀を引き抜くと、周りの「商人」たちも一斉に動き出した。



「全獣なんて珍しい(もん)、殺すにゃ惜しいが……この際、ガキだけで構わねえ! ()れ!!」


「オレまで生け捕りにするつもりだったのか? ……ハッハッ! ”おちゃめ”な、やつらだ!」



 ……おちゃめ?



「油断かましてんじゃねぇぞ、この犬っころがぁぁくぎゅ……!」


 

 シルグレの後ろから斬りかかった「商人」が大剣に叩き潰された。



 速い……! それに、片手……!


 

 反対側から突っ込んできてた「商人」たち三人も、一瞬驚いた顔をした後で、シルグレが横に払った大剣でまとめて吹き飛ばされる。


 大きく飛んで、地面に落ちてからも、崖を落ちる人形みたいな恰好で転がっていった。



「オオォォォォォッッッ!!!」



 シルグレが大剣を振るうたびに、「何かが壊れる音」がして、「商人」たちが飛んでいったり叩きつけられたり。


 速すぎて刀身は見えないけど、錆の赤茶色の線が走って、大きく揺れる尻尾の銀色が光って。


 なんだか――すごく綺麗だと思った。




「くそ…っ! 何なんだ、あのバケモンは……! おい、さっさとしねぇか!」



 「派手な商人さん」の姿がないと思ったら、いつの間にか、ずっと後ろにいた。


 その前には、「商人」が二人いて、杖を持って――



「……ッ!? シ…シルグレ、魔法……! あぶないっ!!」



 オレが声を上げるのと同時に、炎の渦が一直線にシルグレに放たれていた。

レイのお話が、なかなか終わらないッ(´゜∞゜`;)おおぅ


ちなみに、ハナマガリ草(鼻曲がりそう)、思いついた時は天才かと思っちゃいました(´・∞・`*)ぶふー


52話「気に入っていたの」で出てきた中隊長もそうなんですけど、アウトローなキャラ書いてると筆が進みます(´・∞・`;)なぜか

文字数ヤバくなったので、けっこう割愛しました(´・∞・`;)ちょっと変になったかもしれません


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