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サザンクロスの花をキミに  作者: 黒舌チャウ
西部地域 ― コーロゼン防衛戦 ―

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第六十六話  この命に代えても ―前編―

――本記録は、担当随行記録班員アガット・エボニーによる逸脱行為、及び殉職により正式な記録が途絶えたため、その後の当該関係者に対して行った記憶の読み取りと聞き取りをまとめ、記録に代えたものである。

  

 本記録をアガット・エボニーに捧ぐ

    「ミネルヴァの梟」随行記録班長 アルフレッド・コーラル



~~・~・~~・~・~~・~



「くそ……ヘタに近寄れねぇ……!」



 クロヴィスは、次々と襲いかかる魔物を切り伏せつつ、マヘリアを追っていた。


 強い光を纏うマヘリアには、もはや通常の意識はない。

 銀色に輝く尻尾をひるがえしながら、「歌い踊る」先々で魔物が消し飛ぶその様は、禍々しくも神々しさすら感じるほどであった。



「だいぶ深くまで斬り込んできちまったぞ……!」



 リィザたちと別れてから、あてもなく魔物の群れを切り裂くマヘリアを遠巻きに追ってきたが、 すでに四方は魔物で溢れ、見える範囲でも魔物の切れ目がないほど深く入り込んでしまっていた。



 その時――



「……今かよ…………最悪だな……」



 クロヴィスが引きつった笑みを浮かべ向けた視線の先には、「歌う」ことを止め、立ち尽くすマヘリアがいる。


 纏っていた光が徐々にその輝きを失うと、やがて消え失せ、それと同時にマヘリアも力なくその場に倒れ込んだ。



「もうすこし早く……いや、早かったらもっと魔物多かったのかぁ? どっちみち、こんな深くまで入り込むことねぇのによぉ……っ!」



 クロヴィスが、魔物を切り伏せつつマヘリアに駆け寄る。

 まるで眠っているかのようなマヘリアの穏やかな表情に微笑んでから、あたりを囲む魔物を見据えた。



「マーには指一本触れさせねぇ! かかって来な! ……とか、決めてぇとこだけど、そのまま突っ立っててくれると助かるぜ?」



 マヘリアに恐れをなしてなのか、遠巻きに囲むだけだった魔物たちが、徐々に攻撃の気配を漂わせる。



「……だよなぁ」



 苦笑を浮かべ、双剣を握る手に力を込め直したクロヴィスの額から一筋の汗が流れた。

 





「……チッ。キリがねぇぜ……。リィは、まだ仕留めらんねぇのかよぉ……!」



 体を回し、魔物の胴を切り裂いたクロヴィスが声を上げる。


 倒れたままのマヘリアを庇いながら戦い続けていたクロヴィスは、すでに無数の傷を身体中に受けていた。



「本来、速攻での強襲の予定だったからな。足止めを食った分、魔獣に隠れる時間をやってしまったんだろう……!」



 組み合った魔物の首にあてた手斧を引き、倒れた背中にとどめの一撃を加えながら獣人の男が言った。

 特殊な形状をした手斧を振り、付いた血を払ったその男もまた、多くの傷を負っている。中には深い傷もあるようだった。



「んなこた、わかってるよ。ご丁寧にどうもっ。愚痴くらい言わせろよな」


「『泣き言』の間違いじゃないのかっ?」


「言ってねぇし! アガットこそ、足にきてんじゃねぇのっ? 早いとこ退いたほうがいいぜっ?」


「ずいぶん優しいじゃないの、クロヴィス。おにいさん泣いちゃう」


「なにが『おにいさん』だよっ。もうオッサンだろーがっ」



 二人は、言い合いながらも次々と魔物を倒していく。

 素早い動きと、的確に急所を捉える戦闘術は、「ミネルヴァの梟」に属する者が幼い頃より叩き込まれるものであった。



「そもそも、いいのかよ。随行記録班は、『いかなる状況においても、その戦闘行為の一切を禁ず』だろ?」


「『ただし、記録任務の遂行上、必要最低限の自衛に関してはその限りではない』だ。勉強不足だぞ、クロヴィス」


「この状況じゃ、拡大解釈ってやつだろ」


「無理して難しい言葉を使うなよ……。今は、頭は戦闘に使え」


「うるせぇ! ……本当にいいのかよ……」


「今の俺があるのは、『梟』を再興して下さったサイラス様とメリッサ様のおかげだ。お前を死なせてまで任務に忠実であろうとする馬鹿は『梟』にはいないさ」


「……いらねぇよ……そういう重てぇの……」


「ふっ。ここまでの記録はドロレスの分があるし、途切れた分は班長が何とかしてくれる。……だいたいなぁ、これだけ囲まれて突破するだけの自信は、俺にはない!」



 通常、緊急時の連絡役も兼ねて、随行記録には二人の班員がつくことになっている。

 今回も例外ではなく、もう一人の班員はリィザたちに付き従っていた。



 「ミネルヴァの梟」は戦闘要員ではない。

 情報の収集とその伝達。かつて三族が争っていた時代に創られた『梟』は魔物の出現によってやがて無用の長物となっていったが、培われた技術は密かに受け継がれ、サイラス・ウィスタリアの尽力によって再び日の目を見ることとなった。




「なんにせよ、こんな状況だ。人手は多いに越したことはないだろ? 足手まといにはならないつもりだ」


「わかったよ。でも、あんまり無茶はすんなよなっ?」



 先ほどよりも傷が増え、「赤」の範囲が広がったアガットを気にかけながらも魔物を切り伏せていたクロヴィスだったが、



「……またか。マーを頼むっ!」



 魔物を押しのけながらやってくる上位種の大型に気付き、駆け出した。




 後、記 A・C



ここで、各話末に書かれた「記 〇・〇」の謎が明らかにー ”(´・∞・`*)”

「A・C」こと「アルフレッド・コーラル」、「A・E」こと「アガット・エボニー」です ”(´・∞・` )


実はここまでのすべて! 随行記録の報告書だったんです! \(´・∞・` )

だから地の文があっさりしてたんです!決して、作者の文章力がないからでは……(´;∞;` )ないからではぁぁ…っ


サイラス編での設定を、能力不足の言い訳として使おうと思いついた設定ですが、各記録班員が書いている、と思って読んでみると、また違って見えるかなぁとか思ったりしてます ”(´・∞・`*)一応、誰がどんな出来事に随行するかについて、法則性があったりします



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