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サザンクロスの花をキミに  作者: 黒舌チャウ
襲撃

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第五十二話  気に入っていたの

「けっこう大変。壊すにもほどがあるわ」



 南西部の町、コンアイからすこし離れた神殿。

 その最深部で、オハナサンがプニプニと、その丸い体を上下させていた。

 

 オハナサンの周りでは、植物の枝がしきりに動きまわり、先の戦闘で崩れた瓦礫を片付けている。



「でも、あの穴はいいわ。ここ、埃っぽくて、カビ臭かったもの」



 オハナサンの見上げる先には、マヘリアが開けた大きな壁の穴。

 


「風と日差しが入って素敵。今度、村のみんなを連れて来ようかしら」



 心地よい風と光に目を細めた後、大きく飛び跳ね向きを変えたオハナサンは、外へと向かいぴょんぴょんと飛び跳ねながら回廊を行く。

 回廊の途中、"人影"たちが思い思いの方向を向きただ立っている横を飛び跳ねながら神殿の外へ出ると、オハナサンは眉間に妙な角度でしわを寄せた。






「………………」



 オハナサンが村に戻ると、装備を固めた男たちがいるのが見えた。

 全部で百人ほどだろうか。村中のいたるところに散っていたが、そのうちの三割ほどが村の中央に固まっていて、指揮官とおぼしき男がしきりに声を上げているのが聞こえた。



「チッ……どこに隠れてやがる。おい、てめぇら! タラタラやってんじゃねぇぞ! でけぇプニニを殺らねぇ限りは帰れねぇからな!」


「……いたぜ、中隊長! あそこだ!」



 オハナサンが村の中央へとぴょんぴょん進むと、指揮官とおぼしき男の隣にいる男がオハナサンを指さし声を上げた。



「あ? おっ。ははっ! 本当に、でけぇな! 報告通りだぜ!」



 周りに散っていた男たちも手を止め、一斉にオハナサンへと視線を向ける。



「あなたたち、ここで何をしているの?」


「……へっ。決まってんだろ。魔物退治さ」



 話しかけたオハナサンに、中隊長と呼ばれた男は一瞬面食らったような顔をしたが、すぐさま開いた口を笑みに変え、楽しそうに言った。

 男たちが立っている村の中央には、オハナサンが村人たちに付けてあげた「南十字星」の花が散らばっている。



「殺したのね」


「ああ。なかなか楽しめたぜ? 魔物ってのは、いたぶる楽しみがねぇから、つまんねぇんだけどな。ここのやつら、ガタガタ震えてやがった。一匹殺るごとにいい反応してくれたぜ。どうせなら、おめぇみたいにしゃべってくれたら、もっと、よかったんだけどなぁ」


「あなたたちの侵入に気付けなかった。なぜ?」


「あぁ、ははっ。今、技術部が、がんばっててな。便利なもん作ってんだよ。まぁ、魔物にこんなこと言っても、わかんねぇだろうが」


「そう」


「それはそうと、おめぇも、せいぜい楽しませてくれよ。……おい! こいつぁ、オレの獲物だ! てめぇらも、手ぇ出すんじゃねぇぞ!」


「けど、中隊長…報告によりぁ、こいつの能力に関しては情報がねぇ。ここは全員で……っ! …うっ……ぐぶ…っ」



 進言した部下の腹を剣の柄で一突きにした後、倒れた部下を、無言で散々滅多打ちにした中隊長が吐き捨てるように言った。



「オレは"『大逆』の片割れ"かっさらわれて気が立ってんだ。邪魔すんなら殺すぞ」



 他の部下たちは、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、倒れた男を見下ろしている。



「悪ぃな。恥ずかしいとこを見せちまった」


「あなたたち、いたぶるのが好きなのね」


「ああ。大好きだ」


「私は絶対にしないわ」


「そうかよ」


「私ね、ここが気に入っていたの。あの子たちも、ね」


「そうかよ。もういいか?」 


「いいわ」

 


 中隊長が笑みを浮かべ、剣の柄に手をかけた時、周りを取り囲んでいた部下たちが、にわかに騒ぎ始めた。



「……てめぇら!! 邪魔すんなっつ……ああ…? …なんだ、ありゃ……」



 中隊長があたり見回すと、いつの間にか数百を超す"人影"が村の周りを取り囲んでいた。






「……ぐぅぅっ……! …て…めぇ…っ! なにが、『絶対しない(ぜってぇしねぇ)』だ……っ!」


「ごめんなさいね。でも"嘘"は、ついてないわ」



 オハナサンの前には、五体の"人影"に囲まれ、血まみれで地面に倒れた中隊長の姿があった。

 部下たちも同様に、全身血まみれで倒れているものの、だれひとり死んでいる者はいない。ところどころで、悲鳴が上がっていた。



「絶対にしないわ。"私は"、ね」


「……くそっ……! てめぇ……ただじゃおかねぇ……っ!! 今度会った……っ……ぐ…ぁぁああああっっ!!」



 二体の"人影"が、中隊長の残りの「筋」をめがけ、ゆっくりと切っ先を差し込む。他の三体も、急所を外し槍を突き立てた。

 


 オハナサンは大きく飛び跳ね向きを変えると、村の入り口に向かってぴょんぴょん進んでいく。

 入口まで来て振り返り村をしばらく眺めた後で、「もう、いいわ」と言い放つと、

たちどころに上がった絶叫が徐々に小さくなっていくのを背に、森の中へと消えていった。




 特、記 A・W


本作での「オハナサン」の登場は、これで最後です(´・∞・` )…と、思います


リンカネのママみたいのを書きたくて、作ったキャラでしたが、いつの間にかこんな感じに…(´・∞・`;)ホント、構想通りにいってるキャラがいない…

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