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サザンクロスの花をキミに  作者: 黒舌チャウ
西部地域 ー 豪撃のメリナ ー

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第四十八話  メーちゃん

「……はぁ……ふぅ…………はぁぁぁっ……ひぐっ……!!」


「今度ため息ついたら、のど、くり抜くよ?」



 先頭を歩いていたリィザが、一瞬のうちに、最後尾から二人分遅れた距離を歩いていたクロヴィスの喉元に剣を突き付けた。



「だぁってよぉ! "ワカナエ"だぜ!? 行きたくねぇよぉっ!!」


「……しょうがないでしょ。今は魔獣の出現報告も出てないんだし」



 神殿で魔獣を倒した一行は、ひとまず王国都市への帰還を目指していたが、その帰路、街道の宿場町で、宰相ヴァレリオ・ハイザラークからの伝令を受けていた。


 内容は、西部地域の都市「ワカナエ」に向かえ、というもの。

 

 かつての獣人族の都であり、現在は獣人族の特性と肥沃な大地を活かし、産業都市として栄える「ユーオー」。

 そしてそのユーオーと王国都市との間に位置するワカナエは、三族戦争までは西部側の砦として「不落のワカナエ」と呼ばれ、幾度となく大規模な戦闘の行われた地であった。

 現在はその地形を活かし、ケンケンの一大産地となっている。



「リィだって、オレの気持ちわかるだろっ? ……なぁ、魔物討伐とかなんとか言って遅らせようぜっ」


「……クロ。メーちゃんにそんな嘘がバレたら、どうなるかわかってるよね?」


「ぐっ…。……け、けど、ヴァレリオ様からの伝令聞いたろっ? 理由もなしに行けなんて、絶対…!」

「わかってる。でも、だからってどうするの? こっちにだって行かない理由がない以上、後が怖すぎる。それとも、クロだけ残る? あたしは行くけど」


「う……くっ……」



 がっくりとうなだれたクロヴィスが再び歩き出すと、リィザが大きなためいきの後で、クロヴィスになにか話しかけている。



「クロヴィスさんが、あれほど嫌がるなんて…。ワカナエにいったい何が…? メーちゃん、という方が関係しているのでしょうか?」


「メーちゃんは、リィリィとクロのことが大好きだからねっ。でも、ふたりとも恥ずかしがりやだから」


「……は……はぁ……」



 マヘリアが宿場町で買った「まんまる焼き」を頬張りながら、うれしそうに答える。いまいち要領を得ないテオが生返事をしていると、カティアが助け舟を出した。



「…メーちゃんっていうのは、カイル様の妹君、メリナ様のこと」



 メリナ・ジェイブルは、現在、王国の軍事を統括するカイル・アンブルの妹であり、リィザたちの父サイラスの異母妹にあたる。

 カイルとメリナの兄妹はサイラスによくなついていたが、特に妹のメリナはサイラスへの「想い」を公言してはばかりなく、当時から一部関係者の間では知らぬ者はいなかった。

 現在はワカナエの領主であるジェイブル伯爵家に嫁ぎ、二子をもうけている。



「…エミリア様とメリッサ様には、殺意が爆発してたって師匠が言ってた」


「な…なんだか、すごい方なんですね……」


「なるほど。クロヴィスがサイラス様によく似ているなら、リィザもサイラス様の面差しを宿していることになるだろうからな。それで『大好き』…か。うーん…。見たいような、行きたくないような……」



 ランスが後ろを振り返り、リィザとクロヴィスの顔を見比べながら苦笑する。



「メーちゃんは、すごく優しいよ? お姉さんなのに、かわいくて。上品だし、頭もいいし、あとすごく強いんだよっ」


「さすがは武門のアンブル公爵家のお生まれだな。武芸も嗜まれるのか」



「ありゃ、嗜むなんて次元じゃねぇよ」


「『俺を剣で殺せるのは、サイラス兄者とメリナだけだ』が、カイル叔父様の口癖」


「え?」



 ランスたちに追いついたリィザとクロヴィスが、生気の失せた表情で口々に言うと、そのまま通り過ぎていった。



「……そんなに、お強いのか?」


「すごいんだよっ? 私たちも小さい時はよく稽古してもらったんだぁ。昔は『豪撃のメリナ』って呼ばれてて……実はね、私が大斧使ってるのもメーちゃんの影響なんだよねぇ」


「ご…っ……なるほど……」



 もじもじしながら言うマヘリアをよそに、一国の姫君が大斧を手にリィザたちを圧倒する姿を想像しながら、ランスは遠い目をしていた。



「……なんだか、俺まで気が重くなってきたな」


「ま…まぁ、僕たちはきっと眼中にないでしょうし、リィザさんとクロヴィスさんに、おまかせしましょうっ」


「………………」


「ランスさん?」



 なぜかゆっくりと無言のまま離れていくランスに、テオがとまどっていると、



「テオ……」


「ク…クロヴィスさん…っ! …いやっ…今のは、その…っ」


「クロ。メーちゃんに、テオは剣技に興味があるって紹介しよう」


「……いいなぁ、それ。剣に目覚めた神官なんて、メリナ様の興味を引きそうだぁ」



 無表情で言い放つリィザの言葉に、クロヴィスが禍々しい笑みを浮かべる。 



「そ…そん……そんなぁっ……!」



 ランスとカティアの悪い笑みと、まんまる焼きの最後の一口を頬張ったマヘリアの朗らかな笑い声に囲まれながら、青ざめたテオの悲痛な声が街道に響いていた。




 記 A・C  D・L


思いつきで書いたブリッジ回です(´・∞・`;)3話あります

しばし、お付き合いください(´;∞;` )

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