表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サザンクロスの花をキミに  作者: 黒舌チャウ
北部地域 ー アオニ村のアニカ ー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/99

第三十三話  ムカデの魔獣

 森の奥からは、大きな音がしていた。

 連続性はあるが、どこか不規則で、まるで地面を乱打するかのような音だが、大きな揺れはなく、代わりにビリビリとした振動が"古木の広場"全体を震わせていた。


 一行が古木の根元で動かずにいると、魔物が徐々に広場を満たしていく。



「おいおい、このままじゃ囲まれちまうぞっ!」


「……でも、魔物たち……まるで僕たちに気付いていないみたいですね…」



 テオの指摘どおり、魔物の群れは続々と広場に流れ込んでくるものの、一行にはまるで気にも留めず、むしろ森の奥を警戒しているように見えた。



「……どうする? へたに動けば、あの数だ……。かといって、このままでは本当に囲まれかねない……」


「リィリィ?」



 ランスとマヘリアをよそに、リィザはいまだ森の奥を見ていた。



「……くる」



 リィザが、つぶやくと同時に、森の奥から聞こえる「大きな音」に別の音が混じり始めた。森の奥から広場に入るあたりの魔物が宙を舞う。

 水面すれすれを泳ぐ魚が水を切るように、魔物の群れの中を「何かが」走っていた。


 やがて広場の中央近くに来た時、「何か」が身体を大きく反らすのが見えた。牛の魔物(ワッカアルマ)を、その口もとの大きなハサミで捕らえている。

 たちまち、それを両断した「何か」は再び水面に潜るように身体を戻し、魔物の群れを蹂躙し始めた。



「……あいつ……あいつが、さっき言ってたやつよ……」



 アニカがマヘリアにしがみつきながら、その後ろに隠れた。



「冗談じゃねぇな、ありゃあ。どうする、リィ。今なら、魔物どもに任せてオレたちは逃げられそうだけどよ」


「………………」

「………………」


「……あん? おーい! ……どうしたんだ? ランスまで、よ」


「逃げても、あいつはすぐに追いかけてくる。やるよ?」


「お…おぅ。……どうかしたか?」


「………………」


「…………? ……ったく、しゃあねぇな!」



 クロヴィスが剣を抜き、「何か」の方へと向き直ったころには、すでに「何か」の周りの魔物は絶え、赤い石が散らばっていた。


 その全体を現した「何か」は、一度、とぐろを巻くような動きをみせた後、一行へと向き直り、その半身を反らすと、口からのぞいていた魔物の脚を飲み込んだ。




 体はいくつもの節で分けられ、太く先の鋭い脚が無数に伸びている。触角は、体長に匹敵しそうなほど長い。

 大きく発達したハサミ状の顎は、先ほど両断した魔物の血で濡れていた。




「イィィィィッッ……!! 気持ち悪いィィッ!!!」



 マヘリアが、凍えるような仕草で尻尾の毛を逆立てる。立派な尻尾が、マヘリアの身幅の倍ほどになっていた。 



「マーは、ああいうの苦手だもんな」


「マー、無理しないでいいから。アニカを守ってて」


「や……っ、やれるよっ! だだいじょうぶ……!」


「三人とも、来るぞっ!」



 "ムカデの魔獣"は大きなハサミを打ち鳴らし、反らしていた半身を戻すと、地面を乱打しながら向かってきた。

 リィザ、マヘリア、クロヴィスは思い思いにかわし、ランスはアニカたちを庇いながら、防御魔法と盾を併用して受け流す。



「サカサカしてる……ッ! 気持ち悪い……ッ!!」


「サカサカ? …んで、どうすんだっ? けっこう動きも速ぇし、こりゃ、やっかいだぞっ」


「節のどれかに(コア)があるはずだ。ただ、奴の背板は魔法を通さない。俺が動きを止める。その間に仕留めてくれ」


「……ぅお…っと! あぶねぇ! リィもランスも、さっきからなんだか知らねぇが、あとで説明しろよなっ!」



 ムカデの魔獣は反らした半身を大きく振り回すと、再びとぐろを巻き、最後部のトゲでクロヴィスに襲い掛かった。

 頭部と最後部を双頭のように動かし、一行を攻め立てる。



「とんでもねぇぞ、くそっ! テオ、お姫様は任せた!」


「あ、は…はいっ! 行きましょうっ」



 テオがアニカを連れ、古木の裏手へと走っていった。

 体勢を立て直した一行は、ランスを中心に陣形を取る。



「カティア、魔獣との距離が欲しい。いけるか?」


「…わかった。時間ちょうだい」


「リィザ、エサ役を頼む」


「はぁ…。しっかり止めてよね?」


「俺がダメでも、よけられるだろ?」


「当然でしょ」



 カティアが詠唱を始め、その間もムカデの魔獣の猛攻は続いている。



「ねぇっ、(コア)ってどこにあるのっ?」


「節のどこかだ。たしか、絶えず動いているらしい」


「なんだそりゃ! 範囲効果の魔法で一気に、ってわけにはいかねぇのかよ!?」


「あいつの背板は、魔法を通さないって言ったでしょ」


「じゃあ、当たりを引くまでやるってのかっ!?」


「そういうことだ。……始めるぞっ!」



「…静謐にして迅疾たるその名は汝。暁を疾駆せし風の化身。

我、カティア・レッダの名において"約束"を交わす。

厭え。大気の鱗。【衝波】(イムプルス)

 


 カティアが杖をかざすとムカデの魔獣の眼前の大気が揺れ、大風に屋根がめくれるように、一瞬のうちにその体を地面から引きはがした。



「駆けろ。月の吐息。【疾風刃】(ゲイルラーミナ)



 弾き飛ばされるように宙を舞うムカデの魔獣に、杖から放たれた疾風が追い打ちをかけ、魔獣はさらに空中で押し出されるかたちとなった。



「すごいです、カティアさん!! 同属性とはいえ、連続で魔法を放つなんて…っ!」



 興奮気味のテオの賛辞に、真顔で左手の人差し指と中指を立てて見せたカティアだったが、ランスの言葉通り、魔獣を無数に切りつけた風の刃は、その外殻を破ることはできなかった。


 やがて、大きな音とともに仰向けに地面に落ちた魔獣は、すぐさま体を丸め正位置に戻すと、猛りきった様子で突進を始める。



 「来るぞっ! みんな手筈どおりに頼む!」



 盾を構え、前に出たランスの後ろでは、光を纏ったリィザが控えていた。




 記 A・E


 



詠唱の文言、いつもより長めに書いてみました(´・∞・` )

考えるの大変すぎるっ!!(´;∞;` )わぁぁっ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ