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サザンクロスの花をキミに  作者: 黒舌チャウ
東部地域 ー ザイエフとレイ ー

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34/99

第二十八話  帰還

「……おいっ! 誰か出てくる……!」


「ザイエフ様だ…ッ! ……よくぞ、ご無事で……っ」

「…はははっ! 戦隊長も無事だぞっ!」

「勇者様ーーーッッ!!!」



 大口の魔獣を倒し、ザイエフとレイを連れ洞窟を出ると、外で帰りを待っていた討伐隊の歓声が一行を迎えた。



「おめぇらッ! なんでオレは『ははは』なんだよ!!」



 レイが大声を上げると、討伐隊からドッっと笑い声が上がった。


 洞窟の外には、リィザの指示による荷車隊がすでに到着していたが、だれもここを離れようとはしなかったのだろう、車を牽くケンケンが伏せてゆったりしている。



「お前たち……なぜこんなところにいる……。帰ってトクサを守れと命じたはずだ……っ」


 

 ランスの肩を借りたザイエフが鋭い口調で兵たちを睨むと、討伐隊の兵たちは一様にバツが悪そうに下を向いた。 



「……ったく。お互い様ってやつだ。今ぐれぇは勘弁してやれよ。それよりオレは今、最高の気分だ! 早く帰って酒が飲みてぇ! おめぇら、さっさと乗れ! トクサに帰るぞ!!」



 レイの号令に、消沈していた兵たちも息を吹き返し、負傷者の搬出準備に取り掛かかり始めた。

 



「討伐隊の方々の怪我も、なんとか持ち直せそうです」



 改めて兵たちの傷の具合を診て回っていたテオが、ザイエフのもとに戻ってきた。

 引き続きザイエフの治療にかかろうとすると、



「俺は、もういい……。それより、こいつを診てやってくれ……」


「あぁ? オレはなんともねぇよ」


「なんともないのに、戦闘中なにもせずに突っ立ってたのか……?」


「……チッ……」



 テオが確認すると、返り血で外からではわかりにくかったが、胸下部に大きな傷を負っていた。



「ひどい怪我じゃないですかっ!?」


「……へーきだっ。帰ってから自分でやる」


「いけませんっ! そこ、座ってください!」 




「テオにも、ああいうところがあるんだな」


「気の小さいところはあるけど、案外、胆が据わってるかもね」



 ケンケンを引いたランスが微笑みながら、独り言のようにリィザに言った。

 二人の視線の先では、レイを荷車に座らせ、何度も立ち上がろうとするのを、しきりに何か言いながら押しとどめるテオの姿があった。



「……なぁ、さっきの魔獣なんだが……」


「……やっぱりランスも気付いたんだ? さすが"お話"好きだね」


「リィザも気付いてたってことは、あれはやっぱりそうなのか……?」


「……わからない。あたしだって、実物を見たことはないんだし。それに……あの話は好きじゃない……」



 ランスが真剣な顔つきでリィザを窺い見るが、リィザはテオたちのほうへ視線を向けたまま答えた。



「……まぁ…それもそうだな……。それに…魔獣の特性からも、はずれる。きっと、思い過ごしだろう」



 ランスも視線を戻すと、とうとう根負けしたレイがテオの"癒し"の魔法を受けていた。





「やれやれ……見かけによらず強情なガキだったぜ」


「ふ…そうだな……」



 トクサへの帰路についた荷車の上、レイがため息まじりにザイエフにぼやいていた。

 テオはレイの治療を終え、クロヴィスのケンケンに乗っている。



「しかしまぁ……他のガキ共もすごかったが、勇者様ってのは、やっぱり別格なんだな」


「あぁ…俺たちも見るのは初めてだが、ああも力の差を見せつけられると嫌になってくるな……」


「…の割りにゃ、ずいぶん、うれしそうじゃねぇか」


「あれほどまでに、すごいのなら……。『隻眼』を守って死んだボスたちも、決して無駄死になどではなかった……。そう思っただけだ……」


「…あぁ……だな……」



 レイは荷台の縁に肘をかけ、視線を別に向けている。



「ふ…ずいぶん気になってるようだな……。あの娘、シルグレ様の御息女と聞いたが……」


「あん…? …別にオレは……いや……まぁ、ちょっとな……」

  


 マヘリアに視線を向けたまま、レイは首から下げた御守りに手をやる。



 傷つき、疲れ果て、しかし賑やかな荷車隊は、トクサへの凱旋の途についた。




 記 A・C 

レイは、ずっと後で再登場しますよぅ(´・∞・` )

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