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サザンクロスの花をキミに  作者: 黒舌チャウ
東部地域

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28/99

第二十二話  要塞都市ブーゲンビリア

「あっ! ランスがいるよっ」


「あははっ、ホントだー」



 マヘリアが指さした先には、プニニモドキが三体、仲良く日向ぼっこをしている。


 住民たちから盛大な見送りを受け、昨日助けた町を後にした一行だったが、それまでとはうってかわって、特に魔物とも遭遇することもなく穏やかそのものであった。



「プニニは、いないのかなぁ」


「プニニは魔王の分身って言うぜ?」


「えー? なにそれ」



 クロヴィスが干し肉をかじりながら言うと、マヘリアはころころと笑った。



 プニニとプニニモドキは、王国全土に生息する生物である。


 丸い体をプニプニと上下させ、飛び跳ねて移動する等の生態は共通であるが、白い体色につぶらな瞳が特徴のプニニに対し、灰色の体色のプニニモドキはどこかだらしない顔をしている。




「なにかを捕食するでもなく、生殖活動も見受けられない。魔物なのに愛らしく、無害で、討伐しても何も益なく、だれも討伐しようとは思わない。そういった特徴から、封印された魔王の、力を蓄えるための仮の姿ではないか。といった、伝承があるんですよ」



 テオの補足にカティアも加わる。



「…割と本気で研究してる人もいるよね」


「ええ。魔法都市だけでなく、教会都市でも、プニニ研究者がいました」

 

「学者先生の考えることはわかんねぇよなぁ」






 その後も魔物と遭遇することなく、一行は無事、要塞都市ブーゲンビリアに到着した。 

 主要都市に比べれば規模こそ小さいが、防御施設としてのそれは主要都市にも劣るものではなく、「要塞都市」の名に恥じぬものであった。



「かなりの数が避難しているんだな……」



 食料の配給待ちか、城内は多くの人でごった返している。

 ランスの視線の先には、ぼろぼろになった服を着た幼い兄妹の姿があった。



「あたしたちで出来ることは何でもやろう」


「ああ……そうだな」



 歩きながらしばらく兄妹を目で追っていたランスだったが、リィザの言葉に、なにか心に決めたような表情で前を向いた。



 一行はそのまま、都市の中心にある「役場」へと向かった。

 「役場」はブーゲンビリアのような中規模都市においては、軍事・行政・司法を一堂に扱う場で、リィザたち一行はそこに詰めているであろう侯爵に会いに行くのだった。




「エリザベッタ様ですね! お待ち申し上げておりました! おい! すぐに閣下にお伝えせよ!」



 役場に着くと、対応した衛兵が高揚した様子で言った。

 部下らしき別の衛兵が飛ぶように奥へと走る。



「歓迎されてるのはわかるが……こりゃ、よほど厳しいみてぇだな……」


「そうですね……。僕たちの様子は、きっと耳に入っていたでしょうから」


「まぁ……やるこたぁ変わんねぇんだし、期待には応えてやらねぇとなっ」



 クロヴィスとテオが、声を落とし話していると、



「それもあるだろうけど、それだけでもないと思うけどね」


「え……? リィザさん、どういうことですか?」


「そのうちわかるよ」



 ふ、っと笑うリィザをテオが不思議そうに見ていると、先ほどの衛兵が奥から戻り、一行は役場の二階にある執務室へと通された。



 

「エリザベッタ! マヘリア! よく来てくれたねっ! あぁ、マヘリアっ! よく顔を見せておくれっ! …なんて美しい…! アリシアを思い出すよっ……!」


「エ…エリアス伯父様……はずかしい……」


「恥じらいうつむくその姿……っ! ……あぁっ…! 野性味を帯びたその美しさと相まって、そよ風にたわむ可憐な野花のようだ……っ!」



 両腕をすぼめるように寄せながら身体の前で手を組み、赤い顔でうつむくマヘリアの周りを、侯爵がくるくると回るように動き回っている。




「なんか…すげぇな……」

「は…はい……」

「だから言ったでしょ?」

「的確な表現だ。勉強になる……」

「…勘弁して」



 一行が思い思いの反応を口にしている間も、侯爵はマヘリアをほめちぎりながら、その周りを動き回り続けている。



 エリアス・ブーゲンビリアは、マヘリアの実母であるアリシアの兄であった。

 常に王国の歴史と共にあり、王家や勇者の血をも引く武門の名家であったこともあって、「全獣」との子を宿したアリシアはブーゲンビリアの名を失ったが、エリアスは溺愛する妹と、その子マヘリアを常に気にかけてきた。



「閣下、そろそろ…」

「……あぁっ…! この……っ…ん、ああ、すまない。会うのは久しぶりだったものでね。それとエリザベッタ、ここにはうちの者は私しかいない。閣下はやめてくれないか? 君も、私に様付けで呼ばれるのは嫌だろう?」


「わかりました、エリアスおじ様」



 エリアスは満足気に微笑むと、



「改めてよく来てくれた。君たちの活躍は、ここ要塞都市にも伝わっているよ。東部地域の現状は説明するまでもないだろう」


「はい」



 リィザが重く、しかしどこか力強く答えると、一行の皆も真剣な表情でうなづく。



「本来であれば東部地域を挙げて君たちをもてなすところだが、今は逆に、君たちの力を大いにあてにさせてもらわなばならない」


「もとよりそのつもりです、おじ様」


「助かる……。君たちには遊軍として動いてもらうことになるだろう。だが、しばらくはここ要塞都市(ブーゲンビリア)で羽を休めるといい」


「いいえ、おじ様。すぐにでも動けます」


「たのもしい限りだが、これは私からの頼みでもある。兵や避難民らの間でも、君たちの話で持ち切りでね。こういった状況だ。すこしでも希望を持たせてやりたい」


「そういうことでしたら……」


「すまないな」



 そう言って微笑うエリアスは、さきほどとは違いひどく疲れた様子に見えた。



「……伯父様……」



 マヘリアが耳を倒し心配そうに声をもらすと、執務室の外が急に騒がしくなった。一階で大声がし、階段を駆け上がる音が聞こえる。



「閣下…ただ今、トクサから急使が……」


「トクサ……。入れ!」



 扉の外から努めて冷静な声がすると、エリアスは張り詰めた表情でその者に声をかけた。




 記 A・C

エリアスは、ちょっとお気にキャラです(´・∞・` )

「ブーゲンビリア」って、名字に使いたくなる響きです…。なんとなく品があって。

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