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第25話 喪失


 静まり返った駅前広場。

 中央で対峙する2つの人影。


 片や、機械大剣を手にした龍の少女。

 対するは、銀色の鱗に覆われた人型械獣。


 少女の澄んだ双眸と、周囲の風景を反射するゴーグルが視線を交わす。


 先に声を発したのはデリートだ。


「ナルホド。やはりキサマが各地でソートル襲っタ犯人カ」


 陶磁器のようにのっぺりとした顔面から、無機質な合成音声が発せられた。


「ソートル1機を失っタの痛いデスが、オカゲでキサマをおびき出せタ」


 デリートは火を(くす)ぶらせるドルゲドスの残骸を一瞥する。

 不気味な片言口調には、怒りも焦りも介在していない。


 嶺華は収めかけた機械大剣を構え直すと、新たな獲物に標準を合わせた。


「ご安心くださいませ。お仲間同様、貴方もすぐにスクラップにして差し上げますの」


 今にも飛びかからんとする嶺華に対し、デリートは全く動じる様子がない。


「ワレは先日のオ礼をしに来たのデス」


 デリートが掲げて見せた右手には、不思議な剣が握られていた。


 長さ1メートルほどの半透明の刀身。

 そこだけ見れば日本刀のシルエットに近いが、その柄には六角柱の結晶が取り付けられていた。

 無理やり取り付けられたかのような結晶は、明らかに剣の重心を歪めている。


「珍妙な剣ですこと」


「忘レタとは言わせマセン。キサマに折られた『アナライズロッド』が、新たナ姿を得タのデス」


 六角柱の結晶は、前回嶺華とデリートが戦った時も存在していた。

 その時は、剣ではなく槍。


 だがそんなものを見せつけられた所で、嶺華が手を止める理由にはならなかった。


「如何に面妖な武器であろうと、わたくしの駆雷龍機の前には無意味ですわッ!!」


 竜脚装甲がレンガの敷き詰められた地面を蹴る。

 轟速で射出された少女が人型の喉元を狙う。


 デリートは一歩も動かない。


「『コード付き』、その首もらいましたわ!!」


 鈍い金属音。

 水平に振り抜かれた機械大剣は、デリートの長剣によって受け止められた。


 一撃でデリートの首を斬り飛ばすつもりだった嶺華は首をかしげる。


「あら? 少しはやるではありませんの。でもこれは受け止められましてッ!?」


 脇を締めながら素早く刀身をひねり、渾身の縦斬りをデリートの脳天に振り下ろす嶺華。

 間髪入れず、2撃、3撃と、角度を変えた斬撃が繰り出される。


 しかし、その全てが1本の長剣に阻まれた。

 デリートは無言のまま直立姿勢を崩さず、最低限の手首の動きだけで長剣を操っている。


 嶺華の表情から笑みが消えた。


「しゃらくさいですわッ!!」


 嶺華は力任せに斬り上げて長剣を弾くと、空いた胴に素早い回し蹴りを叩き込んだ。

 龍の膂力を宿す旋脚(せんきゃく)が直撃すれば、械獣の装甲など木端微塵。

 そのはずだった。


 嶺華の右足が銀色の体表に触れる直前、無言を貫いていたデリートが呟く。



「ウェーブ出力50パーセント」



「えっ?」


 嶺華の蹴りは、デリートの体表に直撃した。


 ……が、軽い。

 デリートの体は木端微塵どころか微動だにしていない。

 まるで格闘技初心者のように、力無い弱々しい蹴りだった。


 足先に違和感を覚え、固まる嶺華。


「…………」


 そこへ、真上から長剣が振り下ろされる。

 嶺華は慌てて右足を引き、真後ろへ飛び下がった。


「ッ! 今のは……?」


 疑問符を浮かべながらも、次の行動に移る少女。


 今度は高速機動による撹乱攻撃だ。

 両足の竜脚装甲で交互に地を蹴り、慣性力と重力を無視してジグザグに駆ける。

 背部ユニットの龍翼が進行方向を自在に操り、デリートの背後へと滑り込む。


「ふッ!」


 デリートの反応が追いつかない速度での強襲。


 だが、大剣でデリートの背中を貫かんと踏み出した時、再び少女の足から力が抜けた。


「あッわッッ!??」


 龍翼によって制御していた推進力が乱され、嶺華は無防備に飛び上がってしまう。


 ゆっくりと振り向いたデリートは、鋭い斬り上げで迎撃。


「くッ!!」


 嶺華は突き出しかけた機械大剣を胸の前に引き寄せ、辛うじて長剣を受け止めた。

 片膝をついて着地した嶺華に向かって、デリートが長剣の柄を向ける。



「ウェーブ出力80パーセント」



 デリートが呟いた直後、嶺華のアームズに明らかな異常が現れた。


 連結した装甲の接触部が、ガチガチと音たてて震える。

 背中の龍翼からは、ショートした電線のように火花が散った。

 手足の関節が錆びついた歯車のように重くなる。


「な、なんですのこれッ!??」


 突然言うことを聞かなくなった体に、困惑を隠せない嶺華。

 焦燥に悶える少女の前に、銀色の影が立ちはだかる。


「この前はワレのアナライズロッドを折らレテしまいマシタが……オカゲで収穫もアッタ」


 デリートの手に握られた剣。

 その柄に付いた結晶が、毒々しいピンク色に輝きだした。


「あらゆるコアユニットは固有のデンゼル波動を持ツ。ソシテ、波動を打チ消スようなデンゼル波動を浴びせれバ、コアユニットは機能不全を起コス」


 嶺華の頬を冷や汗が伝う。


「まさか……」



「キサマのコアユニットは完全二解析済ダ! それを打ち消スこともナッ!」



 デリートの繰り出した前蹴りが、嶺華の腹部に突き刺さった。



「ごぁッ!!」


 重厚な装甲に包まれた少女が、軽々と吹き飛ばされる。


 普段の嶺華なら、一歩も動かずに受け止められるはずの攻撃。

 その攻撃が、衝撃が、装甲の内側まで届く。


「……う……え…………?」


 尻もちをつくように落下した嶺華は、さらに混乱した表情を浮かべた。


「痛……い?」


 蹴られたお腹をぺたぺたと触り、自らの感覚に間違いがないことを認識してしまう。


「嘘ですの…………」


 嶺華を最強たらしめる鉄壁の盾・次元障壁。

 あらゆる攻撃を通さない不可侵のバリア。


 その加護が、失われつつあった。


「コアユニットが機能不全に陥レバ、アームズを制御スルこともできズ、次元障壁を展開スルこともデキナイ」


 妖しげな光を放つ長剣を見せつけるように構えたデリートが、ゆっくりと近づいてくる。


「ワレの半身、アナライズロッド改め『アナライズソード』でキサマを斬る!」


 嶺華はふらふらと立ち上がるが、その動きはまるで重りを背負わされたかのように鈍い。

 自重すら制御できない装甲はただの拘束具に変わってしまった。

 自らの鎧に囚われた少女へ、半透明の刃が迫る。


「くッ!」


 斜めに振り下ろされた長剣を機械大剣の腹で受け止める嶺華。

 そこへ間髪入れずに回し蹴りを放つデリート。

 金属質の長い足が鞭のようにしなり、嶺華の脇腹に襲いかかった。


「ぎぅッッ!」


 華奢な少女を守っていた分厚い装甲が、アルミ缶のように易々と(へこ)む。


 デリートの攻撃は止まらない。

 右、左、右、左と連続で振り下ろされる長剣が、執拗に嶺華の首を狙う。


 嶺華はぎしぎしと異音を鳴らす腕部装甲を無理やり動かし、機械大剣でいなし続ける。

 なんとか致命傷だけは避けていたものの、防戦一方では長くは保たない。


「しまっ」


 大剣を握る手首目掛けて、真下からの斬り上げ。


 嶺華は咄嗟に剣を引いてガードしたものの、衝撃で剣を握る手を離してしまう。


 宙高く飛ばされた機械大剣は嶺華の後方、10メートル以上離れた花壇に突き刺さった。


「モラッタ」


 長剣を一度引き、体を捻って腰だめに構えるデリート。

 直後、まるで居合のように全身を解き放った。


 巨大械獣に引けを取らない膂力を乗せた、必殺の薙ぎ払い。

 回避は不可能かに思われた。


 その時、嶺華は悔しそうに叫んだ。



「アウターパージ!」



 刃が首を刎ねるよりも先に、龍の装甲が弾け飛んだ。


 鈍い音と共に長剣が止まる。


「………………何ダ?」


 無機質だったデリートの声に、初めて感情が浮かび上がる。


 首を守るように割り込んだ嶺華の右腕。


 その手には、トゲトゲした骨のような短剣が握られていた。


 受け止めた長剣を払い除け、刃を伴う右フックで反撃する嶺華。

 薬指側から刃を生やした逆刃持ちスタイルだ。 


 飛び退いて回避したデリートは、嶺華から5メートル離れた位置まで後退した。


「ナルホド。ウェーブ出力を80パーセントまデ上げテモ、動けた理由がワカッタ」


「わたくしがこの姿を見せるなど、屈辱ですわ……!」


 雷龍の下から現れたのは、真っ黒な強化外骨格。

 軽量性を追い求めた装甲は少女の体にぴったりと張り付き、細身な体のラインをくっきりと浮かび上がらせる。

 薄い装甲の隙間からは、生き物のように蠢く筋繊維が見え隠れしていた。


「ソウカ! キサマもワレと同じ『第三世代』か!! ……道理デあのアームズを動かせるわけダ」


 納得したように頷くデリート。

 無機質だった声には、いつの間にか情動が浮かんでいた。

 まるで、仕事では無口なサラリーマンが、プライベートで旧友に出会ったかのように。


「わたくしを野蛮な方々と一緒にしてもらっては困りますの!!」


 嶺華は短剣を逆刃に持ちながら、ファイティングポーズのように両腕を上げた。

 平べったい背部装甲が静かに吸気を行い、少女の全身へ再びエネルギーを供給していく。

 そのアームズの名は。


「『龍之逆鱗(リュウノゲキリン)』! 力を貸してくださいまし!!」


 稲妻の装甲を脱ぎ捨てた少女は、白骨の短剣を手に立ち上がる。


「キサマはココデ確実に消去スル」


 デリートは長身の体を屈めると、バネのように急加速して走り出した。

 先程と同じように、速度と体重を乗せた斬撃を繰り出してくる。


 だが嶺華は、上半身を反らすだけで長剣を回避した。


 続く斬り上げ。

 これは左足を一歩引き、半身になることで回避。


 無言で長剣を振り回すデリートの攻撃は、先程と比べて明らかに速くなっている。

 だが、太刀筋は嶺華に届かない。


 避ける、避ける、避ける。

 弾く、弾く、弾く。


 デリートの妨害工作は全く効いていない。


「そんな攻撃、わたくしには当たりませんの!」


 駆雷龍機を纏っている時と比べ、嶺華の戦い方はがらりと変わった。


 相手の剣筋をじっと観察し、次の技を見極める。

 細い体を俊敏に動かし、常に長剣の進行方向から離脱。

 避けきれない斬撃は、力点をピンポイントで弾いていなす。

 相手の攻撃の勢いを殺さずに、合気の如く受け流す。


 微弱ながら展開された次元障壁を短剣に集めることで、曲芸のような動きを実現していた。


「チィッ!」


 力任せに振り下ろされたアナライズソードを弾かれ、デリートがバランスを崩す。


「そこですの!」


 一瞬の隙を見逃さなかった嶺華は、デリートの膝裏を掬うように足払いを掛けた。


 不意を突かれ、派手にひっくり返るデリート。


 すっくと立ち上がった嶺華は、敵に背を向けて走り出した。


 つまるところ、逃走。


「次会ったら、絶対リベンジしてやりますの!!」


 龍之逆鱗(リュウノゲキリン)と呼ばれた短剣を虚空で振るう。

 すると、剣が描いた軌跡に沿って小さな亀裂が広がっていく。

 駆雷龍機の機械大剣には遠く及ばないが、この剣でも空裂を生み出すことができる。


 じわじわと広がる割れ目は、すぐに人一人が通れる大きさにまで成長。


 嶺華が後ろを振り返ると、デリートはまだよろよろと立ち上がった所だった。

 この距離ならば、デリートが追いつくよりも、嶺華が空裂に飛び込む方が早い。


「覚えてろ、ですわ」


 嶺華は恨めしそうに呟きながら、暗黒の空間に片足を踏み入れた。



 ◇◇◇◇◇◇



 少女の目の前に広がる、異次元の星空。


 もう一歩、片足を空裂の中に踏み出せば、いつもの暗闇の中へ逃げ込むことができる。


 どこまでも、誰もいない暗闇が、嶺華の居場所だ。


 あと一歩踏み出せ。

 あと一歩。


 だが、嶺華の足が止まった。


 力が入らない。


 呼吸ができない。


 少女は恐る恐る、下を見る。


「……………………っ」


 生えた。


 半透明の刃。


 お腹から。



 ◇◇◇◇◇◇



「…………が…………あ……」


 デリートが投擲(とうてき)した長剣が、嶺華の体を貫いていた。


「逃ガすト思っタカ?」


 あっという間に追いついたデリートは長剣を掴み、嶺華の体ごと空裂から引きずり出す。


 そのまま嶺華の背中に足を乗せると、突き刺さった刀身を無理やり引き抜いた。


「うぐぅぅぅッッッ!!」


 栓を取り除かれ、強化外骨格の裂け目から生暖かい液体が溢れ出す。


 両膝をついて蹲る嶺華の目の前で、逃げ込むはずだった空裂が無慈悲に閉じた。


「かッ……あ…………」


 デリートの右手が嶺華の首へ伸びる。


 銀色の指が髪に触れた瞬間、刃が一閃。

 嶺華は振り向きざまに短剣を振り抜き、不意打ちを狙った。


「抵抗ハやめテオケ」


 しかし力が入るはずもなく、短剣を握る手首は容易くデリートに掴まれてしまった。


「フンッ!!」


 デリートは嶺華の手首を掴んだまま持ち上げると、大きく振りかぶって放り投げた。


「きゃああああああ!!!」


 天地をひっくり返され、華奢な体が放物線を描く。


「次元障壁再展開ッ!」


 少女は叫ぶと同時、背中から灰色の駅舎に突っ込んだ。


 コンクリートの壁が派手にひび割れ、ずるずると落下する黒き鎧。

 地面に叩きつけられた嶺華は苦悶の表情を浮かべた。


「うっ……ぐ……」


 次元障壁の展開が間に合い、駅舎の壁のシミになることは回避した嶺華。

 しかし、背部装甲では白いランプがチカチカと明滅し、エネルギーの枯渇を訴えていた。

 次にデリートの攻撃を受ければ、オーバーヒートは避けられないだろう。


 立ち上がろうとする嶺華だったが、喉からせり上がる不快感に思わず口を押さえる。


「がはッッッ!!」


 赤黒い液体が手のひらを染めた。


 同じ液体は、お腹からもどくどくと流れ続けている。


「はぁッ、はぁッ、わたくしが、ありえませんの……げほッ……」


 無敗無敵を貫いてきた龍の少女は、必殺の攻撃力を誇る大剣も、鉄壁の防御力を誇る装甲も失った。


 立ち上がることができない少女の元へ、銀色の影が死を運ぶ。


「消去スル」


 天へと掲げられた長剣が、嶺華に向かって振り下ろされた。


「くッ!!」


 右手で短剣を握り直し、ギリギリの所で斬撃を受け止める嶺華。

 アームズに残る次元障壁を短剣の刀身へと集中させる。


 次元障壁同士が干渉し、激しく弾ける琥珀の火花。

 強化外骨格からは悲鳴のような甲高い音が響いた。


「くうぅぅぅ…………!!」


 嶺華は歯を食いしばり、低い姿勢で長剣を押しのけようとする。

 対するデリートは銀色の腕に恐るべき力を込め、上から短剣を押さえつける。


「往生際が悪イ!」


 ここまで不利な状況でも剣一本で食らいつく嶺華は、装者として天賦の才能を持っているのだろう。


 だが状況を打開できない以上、鍔迫り合いはいつまでも続かない。


「あ」


 破裂。

 次元障壁、0%。

 

『コアユニットオーバーヒート』


 嶺華の背部装甲が強制的に開き、焦げた臭いと煙を放出した。

 龍之逆鱗のエネルギーは完全に枯渇。

 強化外骨格から力が抜け、攻撃を受け止めていた短剣が地面に落下する。


 それを見たデリートは、再び長剣を天に掲げた。

 堂々と剣を構える姿はあたかも剣道の達人のよう。


「消去ッ!!!」


 半透明の刃は嶺華の脳天を寸分の狂いなく捉え、異次元の膂力でもって振り下ろされる。


「……ッ!」


 同じく剣を極めた嶺華の目には、剣筋がスローモーションのように見えていた。


 刃を受け止める剣は無い。

 アームズによって強化されていた身体能力も失った。


 それでも、嶺華は諦めない。


 純粋な反射神経だけで、首を左に振る。

 己の筋力だけで、左に跳ぶ。


 息を止め、最後の力を振り絞り、嶺華は全身全霊で回避を試みた。


「…………!」


 鋭い刀身が、黄金色の髪を掠める。


 …………。


 地面すれすれの高さで、長剣の切っ先がぴたりと止まる。


 …………。


「はぁッ、はぁッ」


 一瞬で真横に駆けた嶺華は、デリートから3メートルも離れたところで呼吸を再開した。


 振り向くデリート。

 曇天を反射するゴーグル越しに、嶺華と目が合う。


 表情など無いはずの無機質な視線は、少女の姿を見て、確かに笑っていた。


 …………。


 嶺華の体も、自らの異変に気付いている。

 嶺華の心が、理解できていないだけだ。


 …………。


 たった2秒間、時間が止まる。


 …………。


 嶺華は見た。

 見てしまった。


 機械大剣を振るい、幾千もの剣戟を披露してきた少女の右腕。

 異次元の扉を開き、幾千もの械獣を屠ってきた少女の右腕。

 


 その右腕が、付け根から切断されていた。



 少女の右肩に咲く赤い花。


 ゆっくり倒れる華奢な体。


 理解を拒む脳に向かって、痛覚の津波が押し寄せる。



「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」



 喉を灼きつくすほどの絶叫。


 嶺華は左手で右肩を押さえ、硬いレンガの地面でのたうち回る。


 撒き散らされる血飛沫が、黒い強化外骨格を赤く染め上げた。


 痛みのレベルはさらに上がっていく。


「~~~~~~ッッッ!!!!」


 声帯が音を作れないほどの悲鳴。


 縮こまった少女はビクビクと痙攣し、接近するデリートに意識を向けることすらできなかった。


「大人しく死んでいレバ、苦シムことは無カッタのダガ」


 デリートは今度こそ嶺華を葬るべく、血塗れの長剣を構えた。


「コレデ終わりダ。消去スル!!!」


 無防備に伏す嶺華に向かって、刃を振り下ろす処刑人。


 龍の少女に、残酷な最期が訪れる。


 

 ――――――――その時。



「うおおおおおおおおおおおッッ!!!!!」



 青い狼が突っ込んで来た。




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