大改造! 屹立パワーで大☆学祭! その15
鏡華ちゃんのたこ焼きをもうひとパック買って、俺はそれをどこで食べるかと学校内をウロウロしていた。今日の見回り分はもうないし、昼飯代わりにたこ焼きでも食って、午後は、さてどうすっかな……。
「あ、御竿護」
「げ」
通路にある消火栓の前に、体育座りをするセンパイがいた。紙パックの牛乳が、ぽつんと淋しげに置かれている。こういう時でもぼっちとか、本当友達いないんだろうな。
「じゃ、俺まだ仕事あるんで」
もちろん嘘だ。だがセンパイは目ざとくもたこ焼きを指差し、
「そんなもの持って仕事なわけないでしょ。いいからそれちょうだい」
と図々しく強請ってきやがった。
「確かに仕事は終わりましたけど。でもセンパイにあげるたこ焼きはないっす」
「なんでそんな意地悪言うの。ボクが食べたいって言ってるんだよ? 光栄に思いなよ」
「自分に光栄に思われるような価値があると思ってるんすか」
俺は「じゃ」とたこ焼きを見せびらかすように軽く持ち上げてから、さっさとその場を後にしようとした。この人と関わるとロクでもない。
「ね、ねぇ! ちょっと待ってよ!」
「うわっ」
センパイが右足にしがみついてきやがった。それでも引きずるようにして三メートルほど進んだのだが、見た目の割にセンパイが重く、俺は息を切らしながら止まることに。
「あぁもう、離せ。このメンヘラ野郎」
「お願いだからたこ焼きちょうだいってば! 屹立であるボクが言ってるんだよ!?」
「だからそれがよくねぇんだろ。欲しいなら欲しいって言えばいい。家の名前なんて出さずに」
しがみつく手から力が抜ける。それを見逃さずに行ってしまえばいいんだろうが、眉尻を下げるセンパイがなんとも情けなく、俺は仕方なしに隣に座った。
「第一、なんでたこ焼きなんて欲しいんだよ。買いに行けばいいだろ」
「……ボクは、人を魅了しちゃう体質みたいでさ。大丈夫な人もいるみたいなんだけど、大抵の人はボクの虜になっちゃうんだ」
「へー、あー、そー。たこ焼き食う?」
「食べる」
なんか重要なことを言っていた気もするが、今はたこ焼きのほうが大事だ。即答したセンパイにいちパック渡してから、俺は自分の分を食べ始める。
うん、冷めても美味い。流石鏡華ちゃん。また今度、保健室に飯をたかりに行こうかな。
「だからボク、壱以外の人と、こうやってご飯を食べること、あんまりなくて。両親からも厄介払いされちゃったし。というか、あれか、壱以外、両親はいらないのかも」
「おい」
「な、なんなの」
俺は爪楊枝に刺した自分のたこ焼きを、センパイの口に入れて無理やり黙らせた。更にもうひとつ突っ込んでから、
「美味いもん食ってる時に、そういう話すんな。これだからメンヘラ野郎は疲れるんだよ。あれか? 不幸話でもすれば、俺が同情でもして、よしよしって頭撫でるとでも思ったか?」
「ふが!」
「両親から何をどう思われてるかは知らんが、会長は、あんたの兄さんだけは、あんたを邪険にしてこなかっ……いや、邪険にしてる、か?」
思い返せば、結構酷いことをしていた気もする。でも、本当に邪魔なら、俺の家に迎えには来なかったはずだ。家真ん前だけど。
「わかったら大人しく食ってろ。あーあ、たこ焼き食う気無くなっちまったわ。やる」
残りふたつのたこ焼きをセンパイの口に押し込んでやる。なんか叫び声を上げているが、いやこれはあれだな、たこ焼きの叫び声に違いない。
「じゃ、さいなら」
「ふがー!」
あぁ、俺いいことしたなぁ。




