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夏だ! 海だ! 無人島だ!? その8

「どけ、って。どけよ……!」


 黒狼を押してもびくともせず。

 すると今まで俺を舐めていた白狼が、俺の海パンを器用に咥えやがった。そのまま下ろそうとするものだから、俺は黒狼を押すのをやめ、海パンを脱がされまいと必死に海パンを掴んで抵抗をする。


「やめ、やめろおおお! 俺は触手も人外も嫌いなんだよ!」


 それが雄相手、しかも自分自身がそうなってしまうなんてまっぴらだ。そういうのは二次元の中だけでいいんです(ここも二次元と言えば二次元か)。


「誰、誰か……!」


 情けないことだが、俺は無意識のうちに“誰か”に助けを求めていた。正直それは誰でもよかった。太刀根でも猫汰でも、それこそ会長でも(センパイは除外で)。

 ずる、ずる、と少しずつ下ろされる海パン。あぁもう限界かもしれんと、強く目を閉じた時だ。


「んも〜。躾のなっていないワンちゃんたちですね〜」

「観、観手……?」


 俺がその姿をはっきりと確認する前に、二匹の狼が軽く吹っ飛び、木の幹にその体を強く打ち付けた。何事かと、震えたままの身体を叱咤し起き上がる。そこには、杖のようなものを握りしめる観手が、俺に背を向けるようにして立っていた。


「観手……」

「まだ無事なようで何よりです。それにしても」


 観手が狼たちを静かに見据える。体勢を整えた狼が、飛びかかろうと低く構える、が。

 奴らはそこから動こうとしなかった。いや、さっきまでギラギラしていた目から、獰猛どうもうさが消えている。狼たちは観手を怖がっているようだった。


「さ、ワンちゃん。いい子ですから、おうちに帰りましょうか。さもないと、切り落としますよ?」

「キャ、キャウン!」


 一目散に逃げていく狼たち。俺から観手の背中しか見えないが、それでもわかる。きっと今の奴は、魔王並の悪どい顔とオーラを放っているのだと。


「そうだ、観手」

「はい」


 くるりと観手が振り返り、腰が抜けたままの俺を見下ろす。


「手」

「手?」

「……立ち上がれねぇから、手、貸せって言ってんだよ」

「も、もしかして御竿さん……!」


 観手は途端に慌てだすと、俺の顔の横にしゃがみ込んだ。水着とは言え、大胆なその行動に、俺は赤くなった顔を隠すようにそっぽを向く。しかし観手は俺の考えなど露知らず、


「あああ、ごめんなさい御竿さん。私が遅かったせいで、あの狼たちに捧げてしまったんですね!」

「は? お前何言って」

「でも大丈夫です! 確かそういうエンドもありましたから!」

「俺は何も捧げてねぇし、捧げるつもりもねぇ! これは、その……、腰が抜けて……」


 最後のほうは声が小さくなってしまった。さっきとは違う意味で、羞恥心で顔が熱くなる。


「あ〜、なるほど。それじゃ仕方がないですねぇ。はい」


 無邪気に笑いながら、観手が手を差し伸べてくる。俺はなるべく観手を見ないようにして、手を掴み、足をゆっくりと動かしたつもりだったのだが、まぁ、それが良くなかった。


「うわっ」

「きゃっ」


 バランスを崩した俺は、観手を押し倒す形で倒れてしまう。しかも、まだ力の入らない身体は、観手の柔らかな身体に深く深く伸しかかった。


「観、観手、ごめん! すぐにどくから!」

「ちょ、ちょっと御竿さん、そんなに動かないでください……! 重いんです!」

「……すまん」


 スン、と我に返った。エロゲ展開よろしく、慌てたのは俺だけ? 何これ、なんか悲しい。そんな悲しんでる俺に「観手ちゃん、大丈夫!?」と茂みを掻き分けて登場してきたのは牧地だ。


「ぁ、牧地先生……」


 俺は口の端だけ持ち上げ笑ってみせる。


「観手ちゃんがいきなりいなくなったから、何かあったのかと慌てて探してたんだけど……」

「先生、これ誤解っす。話を」

「御竿ちゃあああん! 我慢出来ないからって手を出すなんて最低よ! アタシが相手してあげるわ!」

「それこそマジ勘弁っす!」


 危うく色々奪われそうになったが、俺たちはこうして、無事に合流出来たわけだ。あれ。そういや会長、どこにいるんだろ……?


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