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大パニック!? 寒中マラソン大会 その1

 あれ、おかしいな。

 マラソン大会って、こんな寒い時期にやることだったか? 確かに最近は、熱中症予防の問題で夏にはやらなくなったが、何が悲しくてこんな寒空の下で走らなきゃならんのだ。

 しかも、だ。

 なぜ後ろから、大量のゾンビ(に扮した生徒)が追いかけてきているのだろう。



 ※



 冬休みも明け、一月も半ばを過ぎた頃。

 初詣は結局ロクな目に合わなかったし、観手からは「同性ならオッケーです!」なんていらん太鼓判を押されちまったし、太刀根と猫汰からは根掘り葉掘り聞かれて疲れたし。


「あと二ヶ月かぁ……」


 机に突っ伏し、ため息と共にそう零せば、タイミング良く隣に座った猫汰が「卒業式までの話かい?」と授業の準備をしながら聞いてきた。


「まぁ、そんなとこかな」


 身体を起こして曖昧に返してから、俺も引き出しに置きっぱの教科書を取り出した。


「卒業式といえば、もうすぐだね。三年生のためのマラソン大会」

「マラソン? 三年生の?」


 こんな時期にかと思ったが、まぁ雪はそこまでないし、走ろうと思えば走れるか?

 それよりも気になる単語が聞こえ、俺は「どゆこと」と引き笑い気味に、肘をつきながら猫汰を見た。


「三年生が気に入っている後輩を捕まえるためのマラソン大会だよ」

「ふぁ!?」


 そんなマラソン聞いたことねぇぞ!


「それって何、鬼ごっこ?」

「似ているけれど、ちゃんとゴールはあるよ。僕ら後輩は捕まる前にゴールすればいい。そう、簡単なことだった、んだけど」


 猫汰の言いたいことはわかる。恐らく去年までは簡単だったのだ、それまでの後輩にとっては。


「今年は会長がいる……」

「そう。完全無敗のあの人がいる。去年しか僕らは知らないけど、あの人を狙う先輩は腐るほどいたんだ。もちろん誰にも捕まらず、尚且つ歴代最速のタイムでゴールしているよ」

「ここにきてまた無理ゲーか……」


 高笑いしながら自分たちを追いかけてくる会長の姿が思い浮かんで、背筋が一気に凍りついた。


「大丈夫、安心して。コースの途中に武器があるんだけど」

「なんで」

「僕ら後輩組は、それを使うことを許可されている」

「だからなんで武器」

「でも早い者勝ちだから、なるべく先頭を走ったほうが有利だよ」

「ねぇ、武器って何」


 猫汰はキョトンと目を少しだけ丸くして、それから「おかしなこと言うね」と薄く笑った。


「武器は武器だよ。それ以上でも、それ以下でもない。あぁ、それから御竿くん」

「うん?」

「別に先輩方全員が捕まえるために走るわけではないんだよ。ただ僕ら後輩は、誰が誰を狙っているのかわからないまま走らなければならないから、結構本気で走る人が多いみたいだけど」

「……」


 結局それって、全力で逃げろってことだよな?

 キーンコーン――

 詳しく聞きたかったが、タイミング良くチャイムが鳴ってしまう。朝礼をしにきた牧地が「来週はマラソン大会よぉ♪」と嬉しげに言ったが、内容をよく理解していない俺は、盛り上がる教室の熱に全くついていけなかった。

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