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絶体絶命! 予測不能の期末勉強!? その8

 この流れだと、恐らく残りも来るだろう。それがわかってるだけでも心構えが違う。来るなら来やがれ、よくわからん奴め!

 コン、コン、コン。来た!


「護先輩、ウチです、ウチ」

「はぁい御竿ちゃん♪ あ、け、て?」


 磨りガラスからはわずかに長い外ハネのピンク髪と、艶がある長い紫髪が見える。二人で来やがったか!


「ね、ねぇ、御竿護。あ、あれ、先生でしょ。開ければいい、よね?」


 相変わらず腰を抜かしたままのセンパイが、俺にすがるようにして小声で呟いた。ここまできたら本当に先生だろうと開けるつもりはない。

 つか絶対先生じゃない。わからんのか、このポンコツメンヘラ野郎が。


「護先輩、開けてください」

「ねぇえ♪ お願いよぉ、御竿ちゃん♪」


 相変わらず開けさせようと、扉の向こう側では何かしら言っているようだが、俺は断として開けることはなかった。諦めた人影が「へのこついてもあかんかぁあああ」と、全年齢対象には極めて危ない単語を吐き捨てる。

 いや、BLだし、そもそもが全年齢対象ではないからセーフといえばセーフなのだが、なんでだ、なんか詳しく説明したら駄目な気がする。


「ねぇ、御竿護、へのこって」

「うるせぇ! 聞くな、感じろ! あれは感じるもんだ!」

「う、うん、わかった」


 俺の剣幕に押されたセンパイが、たじたじになりながら食い下がった。やっと腰が立つようになったのか、俺の体操服にしがみつきながら立ち上がる。

 伸びる、と思ったが、元々保健室で借りたものだし、別に構わないかとそのまま立ち上がらせた。

 さて残るは一人、いや二人か? なんにしろパターンはもう読めたし、このまま寝てしまっても問題なさそうだ。俺が首をポキポキと鳴らしベッドに片足を乗せたところで、コンコンコンとまたノックの音が聞こえてきた。


「センパイ、俺は先に寝るんで。おやすみなさいっす」


 両足をベッドに乗せ、さて布団を被るかという時、


「護くん、オレだ! 開けたまえ!」


と見なくてもわかる威厳に満ちた声が聞こえてきた。尚更相手にしたくないと無視を決め込んだ俺とは反対に、なんとセンパイは「壱!」と扉に駆け寄るようにして近づいていきやがった。


「おいやめろ! 開けんな!」


 俺はベッドから半ば転げ落ちるようにして出ると、鍵を開けようとしていたセンパイを引き剥がした。

 ちらりと鍵を見る。よかった、まだ開いてない。

 ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、ガタガタと扉が激しく揺れだした。


「はっはっは! 護くん、恥ずかしがることはない! 今こそひとつになる時だ!」

「壱! 壱ぇ! なんで!? なんでボクじゃないの!? こんな奴よりボクのほうが壱とひとつになれるんだよ!?」


 俺はなりたくねぇし、なってくれるならなってくれて構わん! センパイを扉から離れさせ、俺は窓に向かいながら人影に向かって声を張り上げる。


「お前ら二人ともうるせぇんだよ! おい、向こう側の奴! 窓側に回ってこいよ! そっちなら開けてやる!」

「おぉ、本当か! ならばそちらに行こう!」


 人影が扉から離れた。

 俺はその隙を見計らい、カーテンを開けてから窓の鍵を開ける。事態が呑み込めず「壱、壱」と騒ぐセンパイの首根っこを掴むと、そのまま外に放り出した。


「いった……! 何すんの! 御竿護!」


 尻もちをついたままのセンパイに構うことなく、俺は容赦なく窓の鍵を閉めた。そのままカーテンも閉めて完全に遮断する。


「ちょっと、ねぇってば!」


 センパイが窓を叩きながら何かしら言っているが、俺はもう寝てしまおうと再びベッドによじ登る。


「ねぇってば! って、あれ? 壱、じゃない……? だ、誰! や、やだ、やだってば! そんなの……ああああ!」


 その先、センパイがどうなったのかは知らん。何せ俺は布団を頭まで被って、そのまま寝ちまったからな。

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