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絶体絶命! 予測不能の期末勉強!? その2

 とりあえず俺は空いてる席に座る。後から入ってきた奴らも、鏡華ちゃんが教壇に立っているのを見て一瞬動きが止まるも、大人しく席へとついていく。

 そうして本鈴が鳴る頃には、化学を受ける全員が着席した。


「さて、全員揃ったようだな。不思議に思ってる奴もいるだろうが、今日は先生が急遽休みになった。だからこの俺様が来た。わかったな? 授業を始めるぞ」


 これ以上の説明は不要とばかりに、鏡華ちゃんは淡々と授業を進めていく。正直化学の先生よりわかりやすいし、なんなら理解出来てない生徒をすぐに見分け、隣に来て説明までしてくれた。


「それじゃ、今日やった分の復習をやるぞ。小テストを作ってきてやったから、前から順番に取って後ろに回していけ」


 B4サイズの紙が回ってくる。名前を記入してから問題に取り掛かるも、その問題数の多さに最後までは出来なかった。

 時間になって回収されたテストを鏡華ちゃんはパラパラと捲っていく。それから「なるほど……」と小さく呟いた後、


「今日の授業はここまでだ。来週は俺様じゃないからな、安心しろ。それから御竿、放課後保健室に来い。来なかったら……わかるな?」

「へ? な、なんで俺だけ……」


 いきなり指名されて狼狽える俺。だけど鏡華ちゃんは構うことなく、教材をトントンとリズムよく整え教室を出ていってしまった。周囲から、憐れみやら羨望やら入り混じった視線を送られた気がした。

 そうして放課後。俺は渋々ながらも保健室へと来たわけだ。太刀根と猫汰は相変わらず部活だ。試験前だからといって休みはないらしい。大変だな。


「鏡華ちゃん、入るよ」


 ほぼほぼノックと同時に入れば、鏡華ちゃんの「おう」という声が奥の部屋から聞こえてきた。前におでんを食べた椅子に座って、鏡華ちゃんが奥から出てくるのを待つ。


「よく来たな」


 手を拭きながら出てきた鏡華ちゃんは、早速とばかりに俺の反対側に座る。そのやけに真剣な面持ちに、これは只事ではないと俺も背筋を伸ばした。


「御竿。来週に期末があるのはわかっているな」

「は、はい」

「歯に物を着せる言い方は好きじゃないからはっきり言う。お前、このままだと全教科赤点待ったなしだぞ」

「……え」


 それは衝撃だった。

 いや、確かに勉強してこなかったけど! つか、こういうゲームってボタンポチでステータス上がるもんだろ!? まぁ、ボタンなんてどこにもなかったけどさ!


「ままま待てよ、鏡華ちゃん。まさか全教科赤点だなんて、嘘だろ……?」


 俺は慌てて鏡華ちゃんに詰め寄った。だけど鏡華ちゃんは特に動じる様子もなく、机に両肘を置いて顎を乗せながら、


「職員会議にも上がってな。二年の御竿護は小テストの結果も芳しくない。さっきの小テストでもそれは十二分にわかった」

「会議にも上がるって、俺どんだけよ……」

「まぁ、赤点を取ること自体はさほど問題じゃない。問題は後日行われるパーティーだ」

「パーティー? 学園の?」


 昼休みに猫汰が言っていたあれか? そういや、赤点取ったらなんたらって言いかけてたような……。

 思い出そうと視線を彷徨わせていると、鏡華ちゃんが息をひとつ吐き出し、参ったとばかりに眉をひそめた。


「赤点を取った奴はな、パーティーで奉仕、いや給仕をすることになる。女子はチャイナ服、男子はバニーだ」

「ちょっと待て」

「学園に出回る裏アンケートによれば“抱きたい男子”の各学年、男女それぞれにおいて、御竿、お前は六冠を達成している。これは異例の出来事だ」

「色々嬉しくねぇよ」


 なんだ、抱きたい男子って。てか六冠? 女子からもそう思われてんの? せめて“抱かれたい男子”になりたかった。

 複雑な気持ちになりながらも、俺は鏡華ちゃんに「それで?」と続きを促す。


「このままだと御竿。お前の取り合いが起こり、保健室に大量の怪我人が来ることになる。それは大変めんど……いや良くない」

「おーい保険医ー、今なんつったー」

「ま、そういうわけだから、期末までの一週間、俺様が勉強を見てやる」

「なるほどね……」


 俺としてもバニーなんて着たくないし、赤点も取りたくない。鏡華ちゃんが見てくれるなら願ったり叶ったりだ。しかしそこで俺は「あれ」とあることに気づく。


「太刀根は教えてくんないのかな」

「……俺様の見立てだと、あいつは御竿のバニーを見たいほうだと考えていたが、違うのか?」

「あー、それは……」


 否定出来ない。そしてそれは太刀根だけでなく、猫汰も、もちろんその他も、頼れない状況なのだと、改めて俺は思い知らされたのだ。

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