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球技大会は保健室で! その1

「護先輩、どう、ですか? 痛かったら言ってくださいね……?」


 保健室のベッドに腰掛ける俺。そんな俺の足と足の間から下獄の頭が揺れている。俺に触れる手つきは一見すれば優しいが、そのくせにきっちりと、的確に、急所を触ってくるものだから、俺は痛みで微かに顔をしかめた。


「ごめんなさい! 痛かったですか?」

「……っ、いやいい、続けてくれ」

「は、はい。じゃなるべく痛くないように、早く終わらせますね」


 そう言い下獄は再び俺に、厳密に言えば俺の足に包帯を巻き始めた。内心でため息をつきながら見下ろしつつ、俺は転生しても運動神経のない俺自身に、酷く落胆していた。

 そもそも今日は球技大会だ。なのに俺が保健室にいるのは、つまりはまぁ、情けないことに怪我をしたからなのだが――




 ポートボール、というのを知ってるか? バスケに類似したスポーツなのだが、微妙にルールが異なっているのが特徴だ。

 ドリブルは禁止、パスのみでボールを回していくこと。ゴールはゴールマンと呼ばれる選手が台に乗り、ボールをキャッチすると点数になること。あとはガードマンっつうゴールを阻害する役割もあるか。

 なんにしろ、俺は小学校の授業ぶりに、このポートボールをやることになったわけだ。


「つか練習してこなかっただろ、なんで当日になって……」


 俺はポートボールのルールが書かれた用紙に目を通しながら、誰に言うでも一人零した。

 いや、練習をしなかったわけではない。それこそ体育でバスケやらバレー、もちろんポートボールもやったし、ドッチボールだってやった。球技大会の種目が、当日発表というふざけたことがなければ、別になんでもよかった。


「大丈夫だって。護は俺が守るからよ」

「俺を守ったところで勝利には何ひとつ近づかんのだが」


 自信に溢れる太刀根に突っ込んでから、俺は対戦表に目をやった。学年で総当りして、上位二チームが学年対抗の試合に出るというものだ。


「御竿くん、安心して。全員やれば問題ないから」

「そういうゲームでもねぇよ」


 猫汰は猫汰で、相変わらず物騒なことを言っている。やりそうで怖い。


「んで俺のポジションはどこよ」


 同チームに太刀根と猫汰がいる以上、負けはほぼほぼないと思うのだが、一応確認はしておく。


「御竿くん、君にはガードマンを頼もうと思っているんだけど」

「そりゃいい! ま、ボールが回ってくることなんてないと思うけどな!」

「そりゃどーも。二人の活躍を後ろから見てるよ」


 心にも思ってないことをよく言えるな、俺。でも二人は任せろと言わんばかりに笑い、


「おう! 俺の姿をしっかり焼きつけてくれよな!」

「御竿くんのためなら、邪魔は全部排除してみせるよ」


と準備体操を始めた。俺はそれに苦笑いを返し「はは、頼むわ……」となんとか絞り出したのだった。

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