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そこはそれとない都会の出来事 その7

「あ! おはようございます、御竿さん!」


 朝。集合場所になっているロビーへ着くと、やけに上機嫌な観手が甲高い声で俺を呼んできた。流石にホテルの部屋までは別だったものの、このテンションを見るに、昨日何があったのかを把握してそうな雰囲気である。


「あれれ? やけにお疲れのようですが、ゆっくり休めなかったんですか? あ、もしかして……」

「残念だが、お前が想像するような事態にはなっていないからな」

「まぁ、知ってますけどね〜。太刀根さんももうちょっとだったのに。本当に惜しいです〜」

「知ってるならわざわざ聞くな、確認するな」


 そう言ってから、俺はポケットからスマフォを取り出した。時間までまだある。部屋に残してきた(放置したともいう)二人を待つ間、暇潰しでもしているか。

 昨日の騒動で、猫汰は俺より先にベッドに丸くなり、太刀根に関しては、なぜか気絶した状態でイドちゃんによって運ばれてきた。


「にしても、太刀根っていいとこのお坊っちゃんだったんだな」


 いつも遊ぶアプリを開き、本日のログインボーナスを受け取る。これだけでも受け取っておかねば。


「最初にお渡しした資料に書いてあったはずなんですけど。ま、いいです。あ、ほら御竿さん、ちょうどいいところに」

「ん?」


 観手が俺の肩を掴みガクガクと揺すってきた。軽く舌打ちをしてやったというのに、構わず揺すり続ける観手に根負けし、示したほうを見れば。


「テレビ?」


 ホテルのロビーによくあるデカいテレビ。ニュースのお天気お姉さんが「ではCMの後で」と爽やかに笑って手を振っているところだ。


「お姉さんがどうした」

「CM見てください。説明するより断然早いかと」

「はぁ……」


 面倒くさいと思いつつ、やることも特にないのでそのままテレビを見続ける。朝のテレビにありがちな、水道やら家やらのCMの後、どっかの会社のCMが流れ出した。


『確かな技術、築き上げてきた伝統。それを完成させるのは、貴方です』


 職人らしきおっさんが、タオルを巻いて何かを作っている。その後に、受付らしきお姉さんがにっこりと微笑んだ。


『ロウソクからハイヒールまで。貴方を見守る、太刀根グループです』

「……で?」

「はい?」


 再びニュースが流れ出したタイミングで、俺は観手に視線を移した。首からギギギと変な効果音が出た気がした。


「何を作ってるんだ、太刀根んとこは」

「今言ってたじゃないですか〜。ロウソクからハイヒールまで、つまるところなんでもですよ〜」

「ほう、なんでも、ね……」


 朝に流していいCMだったのか。いやいや、俺が変なことを考えているだけだ。そんなものを扱う会社が、こんな堂々と宣伝するわけないだろう。

 俺は話題を変えようと、スマフォを仕舞って辺りを見回した。他の生徒もだいぶ集まってきたが、二人はまだ来ない。また喧嘩でもしてるのか?


「今日はどこ行くんだっけ」

「忘れちゃったんですか? 今日はあそこです、“蒼葉城址”」

「あぁ、そう……」


 山の上にある観光地を思い浮かべる。正直何かあるようなとこではないが、なかなか行く場所でもなし。それなりに楽しみ、かもしれない。

 そうして待っていると、牧地に首根っこを掴まれた太刀根と猫汰がやって来た。やはり起きて早々問題を起こしていたらしく、牧地からは「御竿ちゃんにも責任があるから♪」と口調とは似つかない表情かおで念を押された。

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