エピローグ「戸惑いの女神たち編⑤」
リョウタロウの傍に現れた気配によって、パーフリィは理解した。
「ラ……ライヴァ神が降臨されたようです」
「……それってどういうことなんだ!」
「あ、あの! 懲罰の女神でおそらくリョウタロウ様は……」
「そんな!」
シスターは思わず声をあげてしまうのを抑えられなかった。
なんの縁もゆかりもない彼が処罰されてしまうことに、だ。
「……あいつの覚悟なんだろうね。むかつくけど」
ラナはそう言って、歩き疲れた女の子に手をやりそのまま背に乗せて前を見つめていた。
「あの、ラナさんのお兄さんの村に――」
「それがあいつの言葉なんだ。仲間としたら従うしかないだろ?」
「あ……はい!」
パーフリィは、ラナが彼の仲間だと言ってくれたことに素直に喜んだ。
そして願わくば、彼がひどい刑罰に処されることのないようにと女神であるのも忘れて願ったのだった。
▽
女神の園に集まる女神たちは、リョウタロウが大人しく連行されていく様子をそっと見守った。彼が祈れば今すぐにでも解放させてあげるのにとどこか期待しながらも。
だが、彼はそんなことを願ったりはしない。
それくらいは魂を見ればわかりやすいくらいに分かっていた。
「……どうですか?」
「はい。彼が願ったことという強引な技ではありましたが、無事転生を果たさせましたとのことです」
「そうですか」
周囲へとその言葉を聞かせるためにあえて、周囲に女神が集まるように指示をしてそのことを伝えさせるとやはり心配していたのか、戸惑っていた女神たちは一様に嬉しそうな黄色い声が園に響き渡った。
「ソリューシャ神、それで運命の女神は――」
「もちろんです」
こういうこともあろうかと、アブソリューナ神はリョウタロウには内緒であることを頼んでいたのだ。
……懲罰の女神が留守の間に。
「リョウタロウへの罪滅ぼしになればいいのですが……」
「それは彼への共愛に触れますので」
「分かっています」
そして周囲はまた再び、リョウタロウを見届けるためにそっと見守り始めた。
△
俺は今、連行をされている。
目の前にいる女神の監視下に合いながら。
決して目を合わせることなく、決して口を開くわけでもないのに目の前の女神様
懲罰の女神様はずっと俺を見つめ続けている。
「……」
「……」
周囲は馬車を改造したらしい作りになっていて、周りはあえて晒すことができるほどに視界がフリーになっていて檻にいる俺の周囲に私兵が護衛として付いているのだが、俺たちが何も語らずお互いに何も行動しないせいか何かその場には緊迫感に溢れている気がしていた。
まぁ、仕方ないよな。
いきなり女神が降臨したんだから。
だが、俺としてはそんなことはどうでもいい。
もう手遅れなのだから。
「あなたは後悔していますか?」
「……」
俺はその女神様の言葉をあえて、無視してやり過ごした。
後悔なんてない。
後悔なんてするくらいなら最初からしないし。
「め、女神殿……」
そこへ馬を寄せてきた貴族が女神様に話しかけてきた。
だが――
「……」
その貴族の語り掛けが聞こえているはずなのに、全く取り合わず俺のみをずっと目の前の女神様は見ていた。
空気が一団と重くなるのを感じる。
相手は女神、自分が貴族の身分程度じゃどうやってもムリな感じのその様相な相手だ。一国の王ですらという空気感に貴族はあえて話しを俺へと向けてきた。
「なんですか?」
「ああ、貴君――いや、貴様が証言したこと、それから証拠によってあの者は貴族たち共々供述しその罪を認めたということだ」
「……そうですか」
もはや俺にとってそんなことはどうでもいい。
結局のところは、あの街から逃げるという選択を取るしかなくなったのだから。
全部俺のせいだと今回は何も抵抗はせずにその罰とやらに付き合うことにした。
……自分らしくもなく、見どころがないだろ的な女神たちへの小さな報復の意味でもあったりもする。
「……」
それにしても、この女神様ずっと俺を見ていて退屈にはならないんだろうか。
「あなたは後悔していますか?」
だから、それには答えないってと視線が向きそうになるのを強引に振り切ってあらぬ方を見る。
……くそ、この女神様もいいスタイルをしているな。
そんな邪欲にまみれながらも俺は連行されていくのだった。
▽
「ラナ! これは一体」
「悪い兄貴。リョウタロウが捕まって――」
その報告に驚いたが、妹の言うことを信じてまだ出来上がってはないが一応生活はできるほどに拡張した畑などの食料を与えそして寝床も用意することになった。
ちなみにだが、こちらにもパーフリィが心配で数柱の女神が見守っていることは言うまでもなかった。
懲罰の女神編はちょっと卑猥な表現が強めですが、あくまで罰ですのでご了承いただければ。