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5000柱の女神に見守られながら旅する異世界転生記~体験版~  作者: 武宮川 夏乃介
第三章「戸惑いの女神たち編」
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3話「戸惑いの女神たち編④」

取り立て屋の親分は、焦っていた。

もう一週間が過ぎそして今ではこの辺りを治める貴族の私軍まで出張ってきていた。だというのにその私軍ですらも相手にはならずということ。

さらに相手が誰か分かったのか、あの男は相手の名前を聞いた上である行動に出てきた。


それは、自分たちの関与する裏の出来事による証拠の提示だ。


最初は何をバカなという態度の貴族だったが、この国でも有数の貴族・ゼン伯爵の名を出してそのお方と知り合いなんだと言えば、子爵位である貴族も聞かないわけにはいかず手の者にその証拠を手渡した上で、この書類はそいつの家から押収したもんだと言ってこちらに指を指してきたのだ。


逃げようにも、周囲には衛兵のみならず私兵が囲んでいるため逃げられず。


男は観念したように私兵に連れられていったのだった。







「それで医者や神官が目的だったな……だが――」


そこへ何やら孤児院のほうから泣き声やらが聞こえてきたので、貴族を止めた上でその場所――ベッドのある場所までまさに飛んでいくようにリョウタロウは向かった。


「……なんで」


そこには涙を流しながらも穏やかに眠るように息を引き取ったと見える白いアルビノの子が横たわっていた。


リョウタロウは助けられなかったことに、あの時に見た死にたくないというそれにどうしようもない自分の無力さを痛感し、涙とともに崩れ落ちた。

その場にはシスターも子供たちも涙が溢れ、あのラナでさえも泣き崩れていたのだった。


だが、リョウタロウは立ち上がりそしてシスターにあれをと、治った時にでも履かせてあげたかったモノを持ってこさせるように頼むのと子供たちを集めるように言い放ち、その上でそっとアルビノの子供を抱き上げると決して綺麗とは言えないシーツで顔から体から全てを覆い、その上で立ち上がった。


そして建物から出ると、ラナにナイフを突きつけろと言った上で貴族に対して命令するように場所を開けろと言い放った。


「どけ! もう用はなくなった!」


そしてチラっと周囲を見て、気配の全くない方を見ると足を持ち上げ――


「オラァ!」


そのまま足を振ってまるで邪魔だと場所を開けるかのように色々な建物を巻き込むように蹴った。


その威力に誰もが息を飲み、あれは勝てないと貴族は王への掛け合いを考える。

そんなのに構わずリョウタロウは子供を抱きながらゆっくりと後方へと前向きのままに歩いて街の外に出て、その間にシスターに抱いていた子供を預けると、


「いけ、あとはラナがどうにかする」


「リョ、リョウタロウ様?」


「いいから……。パーフリィも頼む」


「は、はい……!」


そうして追ってきている貴族たちを前に佇み、ここから先は通さないとでも言うようにそこへ立ち止まったリョウタロウだった。

街に走った衝撃に、周囲には街人たちの姿もありその有様に呆然としていた。

そんな中――


「……どうやら間に合わなかったようだ。それで、これからどうするつもりなのだ」


「ああ、お前たちにはまだまだ付き合ってもらう。ああ、言っておくぞ? あいつらを追いかけようとしてもさっきの蹴りがそいつに飛ぶだけだから無駄なことだ」


「……」


そのつもりだったのだろう、貴族は口を噤みそしてじっとリョウタロウを見つめる。ゼン伯爵の知り合いにこのような戦力を持つ者がいたとは聞いたこともなく、また彼があの包みに抱かれし者を助けようとしてまで大事に扱っていたのは一体とそんなことを考えていた。


一方のリョウタロウは、今すぐにでも追いかけたい気持ちではあったし、何よりもシスターに渡したあるモノを自分が履かせたかったという思いだったのだが、必死にそれを抑えてずっと黙ったまま、ラナたちの気配が遠くへ行くまでの間ずっとずっとそこを離れずに立ち尽くしていた。


貴族側は休憩ができる。

しかし、リョウタロウは一週間まるまるずっと立っていたり、動いては無茶な体の運用をしていたので、女神が監修した体だとはいえそろそろ限界が来ている。







「アブソリューナ神」


「……なんですか?」


「そろそろリョウタロウは、限界でしょう。もはや彼の行動に意味はない。そこで私が動きますが、構いませんね」


「……」


「ソリューシャ神、魂を司るあなたはその魂をどうしようと?」


「……もちろん、転生を司る女神に託すつもりです」


「そうですか」


創造の女神、魂の女神、それから今問いかけた懲罰の女神はその一柱一柱に様々な確認をした上で自分が動く旨を伝え、そして――


そのまま姿を消したのだった。







「リョウタロウ、そこまでです」


その瞬間、彼はふらつくようにして膝から体を崩した。


その光景に貴族はおろか、見守っていた者たちは唖然としていた。

何せ瞬きの間に、いつの間にか現れた存在感のすごさは普通に考えても、莫大なる力を持った存在だと感じたからだ。


思わず平服したくなる……そんな存在はその美しい声で、ボソっとリョウタロウに告げた。


「懲罰の女神・ライヴァ。もういいでしょう、リョウタロウ。罰を受けなさい」


「……ライヴァ様か。こういう時は介入してくるんだな」


「ええ、あなたのためです」


その言葉にリョウタロウは何も言わずに、貴族たちへ向かって大声で言い放った。


「神の思し召しだ!! もう抵抗はしないよ! 捕まえたかったら捕まえろ!!!」


貴族たちはその圧倒的存在に神と言うリョウタロウの言葉に、跪こうとするが――


「構いません、彼を捕らえなさい」


その命令とも言える言葉に、貴族はおいと私兵に命令をしてリョウタロウを拘束させたのだった。



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