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5000柱の女神に見守られながら旅する異世界転生記~体験版~  作者: 武宮川 夏乃介
第三章「戸惑いの女神たち編」
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1話「戸惑いの女神たち編②」

気になったアルビノの子だが、あとでもいいかと俺たちは案内されるままにシスターに付いていく。


やがて、広いテーブルの並ぶところへと案内されて席に勧められたので座る。

シスターは少し失礼しますと言い、奥の方に消えていった。


その隙を狙ってかラナが話しかけてきた。


「あんた、一体何考えてるんだい? ……こんなとこ早く出て宿取らないと」


「いや、なんか気になるからここに泊めてもらおう」


そう答えると、妙な奴だなって目でリョウタロウを見つめるラナだった。


そんなことをしていると、奥からシスターが飲み物を持って現れた。

……白湯だったが喉は乾いていたのでありがたく飲ませてもらった。

パーフリィも大事そうに抱えて、ラナは器すら持たずだった。


「あの……」


「あ、はい」


飲めよとリョウタロウは目で訴えていたのだが、呼ばれたのでシスターのほうを見る。

そこで彼は思った。

こうして改めて見るとシスターの子も若い。

まだ17歳くらいでそばかすもそのままという感じだったからだ。


「この度はうちの子たちがご迷惑を、それだけでなくこうして施しまでいただきありがとうございます」


そうして祈るポーズをして礼をしてきたシスターに全然気にしないでと声をかけて、気になっていたことをリョウタロウは聞いた。


「……そういえば、あのベッドに寝てた白い子って――」


その言葉に肩をビクっとさせて、もはやお祈りといった感じではなくどうかお願いしますという感じの礼をしてくるシスターにリョウタロウは戸惑いを隠せなかった。


「あ、いや……別にどうかするとかじゃなくてっ!」


慌ててリョウタロウが否定をすると、シスターはほっとして胸を手で抑えてそれでどうしたんですか? と問い返した。


「いえ、何か病気なのかなって」


「……そうですね」


少し憂いを帯びた表情になったシスターは白い彼女の状態を語った。


「あの子は、あの見た目のせいで貴族から好まれまるで奴隷のように扱われていたそうです……それなのに、彼女が不治の病に冒されたと知るとこの孤児院に……」


クソ貴族め、リョウタロウはそんなことを思い憤るが、その思いを抑えて最後まで聞く。


「あの子はそのような目にあっても、うちの子供たちのために貴族の家で読んだらしき物語を聞かせてあげたりして……とても、とてもいい子なのに……」


シスターは語っているうちに辛くなったのか涙を流し始めた。

それにつられるようにパーフリィもラナでさえグスっと鼻を啜っていた。


「そうなんですね……ちょっと失礼します」


そう言うと、リョウタロウは建物から出るとそっと影になるところへ行き祈った。


その祈りにより現れたのは、白い光に包まれた美しい美女だ。


「あらあら、リョウタロウ様。私をお呼び?」


「はい、医術の女神様」


そして、どうかしてほしい旨を伝えようとするのだが、その言葉を遮るかのように彼女は言い放った。


「あの人の子を治してほしいという願いであればできませんよ~」


「な、なんでですか? 俺を――」


「はい。あなたを見守り、あなたのためであるならばその願いは叶えたいと思いますが~残念ながらあの人の子はあなたではありません~」


「そんな……」


医術の女神の言葉にリョウタロウは、ショックを受けたように呟く。


「仕方ないのです~あなたへの共愛という法の下、その他の人のことをどうこうはできませんので~」


「……じゃあ、俺にあの子を治せる力もダメってことですか?」


「あなたが病気であるならまだしも~残念ながら~」


パーフリィの時は確かに俺のためだけにああいう転移などができたんだということに気づいたリョウタロウはそうですかと力なく答え、そしてゆっくりと歩いていった。


振り返り、


「あ、せっかく呼び出したのに……すいません。もう大丈夫です」


そう呟くと、そのまま女神の前から立ち去った。







女神の園、そこへと帰ってきた医術の女神はため息を吐いた。


「ここでの法があるとはいえ……私は~」


「気を落とさないでください、キヨメ神」


そこに現れたのは、創造の女神・アブソリューナと魂を司るソリューシャの二柱だった。


「アブソリューナ神、ソリューシャ神~……ですが~」


「我らが見守り手助けをするのは、彼のみなのです。それは法の女神の定めたるものですから我らも遵守しなければなりません」


その言葉に少し持ち直したのだが、キヨメ神は彼の様子が気になっていた。







医術の女神に断られたリョウタロウは、出る時に通りかかったベッドのある部屋を覗いていた。そこには真っ白で赤い目の子がおいしそうにリョウタロウが買ったものを食べたり、赤い花に喜んだりする純粋な女の子の姿が見えたのだ。


その姿を見て、彼はまた外に出てある物を買いに出かけるのだった。


散々探し、そしてようやくそれが購入できて孤児院に帰った時のこと。

騒がしいやり取りが聞こえてきたリョウタロウは嫌な予感を感じて、そこへ出張った。


その光景はシスターがとても申し訳なさそうにしながら、謝っているところへ偉そうなヒゲのおっさんが何かを怒鳴り、その子分らしい男たちも周囲の柵を蹴ったりしながら恫喝している様子だったのだ。


「おい、何してるんだ?」


そこへ出張り、シスターを庇いながら立つとヒゲのおっさんは驚いたようにリョウタロウの顔を見るが、下品な笑みを浮かべてその問いに答えた。


「それはこっちのセリフだが、まぁいい。ようするに借金を返せってことだよ」


借金?

シスターのほうに確認の視線を送ると、目を伏せがちになりその通りだとでも言わんばかりの表情だった。


「……ふん、金貨にして100枚の借金、それさえ払えれば俺たちみたいなもんはお役御免ってことで早くおうちにも帰れるんだがなぁ?」


……金貨100枚。

さすがにリョウタロウも持ってない額のそれに口を噤むが、その反応に関係なくヒゲのおっさんは言い放つ。


「……まぁいい。明日まで待ってやるから早く払ってくださいねぇ~じゃなければ――」


そうしてシスターにしがみ付いている子供に嫌らしい笑みでもって見渡し、そしてそれではと目礼をして立ち去って行くのだった。

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