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5000柱の女神に見守られながら旅する異世界転生記~体験版~  作者: 武宮川 夏乃介
第三章「戸惑いの女神たち編」
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プロローグ「戸惑いの女神たち編①」

盗賊たちのアジトから荷と親分首ということで街に入るときに、衛兵に提出する。


「ほう? これを君たちが?」


「ええ、一応冒険者として盗賊は見過ごせませんので」


しれっとその頭領の元片割れを連れてそんな証言をするリョウタロウ。

だがそれは元ということでみのがしてもらうとしようと考え、リョウタロウは手続きに向かって2人には待ってもらう。


「……あ、あの~」


「なんだい」


「お、お兄さん心配ですよね……」


「……あんな立派な小屋に畑、池なんかがあれば兄貴なら余裕で暮らしていけるよ。だから心配はいらない」


「そ、そうですか……」


人見知りのパーフリィがラナに話しかけているのを、手続きを終えたリョウタロウはまるで親のような目で見ながら合流した。


「さ、これでもう過去とはさよならだ。ラナ」


「フン、分かってるよ」


そんなことを言いながらも他人の財布とかの場所をチラチラ確認するんじゃないとリョウタロウは思ったが、手を出さない限りは何もしない。


街に入る手続きも終えて、早速賞金や謝礼金が手に入ったということでどうするかと街をうろうろしていると、何やらガヤガヤといった騒ぎになっていたので、リョウタロウは気になってそちらへと向かった。


「自分から面倒ごとに……」


というラナの言葉も無視して、近寄った時そこにはありえない光景が広がっていた。


「オラ、こんなとこで孤児のガキがうろついてんじゃねーよ!」


ガラの悪い男が子供を踏みつけているのだ。


カッとなったリョウタロウは、周囲が全く助けないことを不思議に思いながらも男の足を蹴って子供からどかした。よく見れば心配そうに、また泣きそうになりながら同じようなボロい服装の子供たちがいた。


「ああ? おい、てめぇ」


「にこっ」


リョウタロウは笑うと、道に落ちていた石を掴んでそれを粉々に握りつぶした。


「全く信じられないよ、あの力」


「……か、かっこいい」


ラナの文句に、パーフリィの謎の尊敬を聞きながらもリョウタロウは首を傾け、

これでもやる? とでも言うようにガラの悪い男へと笑みをむけ続けた。


「……く、くそ!」


そう言って青くした顔のまま、どこかへと去っていった。

その後、倒れた子供の汚れをパンパンと叩いて落として立ち上がらせる。


「大丈夫か?」


「あ、あ、ありがとう」


よし、いい子だとまた撫でて周囲にいた子供たちにも同じように笑いかけた。


……なお、そっと見守っている女神たちの何柱かはそんなリョウタロウにはふぅ~という謎の声とともに気絶をさせる笑顔だったらしい。


そうとは知らずに合流したパーフリィとラナとともに子供たちを送ることにしようと思ったのだが……。


「あ、あのね! これでお花買いたいの! 赤いお花……」


子供の1人がそう言うので、手に握られたものを見るとボロボロな銅貨でその手もやっぱり子供らしからぬほどに荒れていて、なんとなく不憫に思ったリョウタロウはよしと声を出して、花屋さんに行こうかと子供たちに話しかけた。


歩きながら手をつないだ子供に話をきくと、彼らはどうやらこの街の孤児院の子らしい。だからさっきのようなガラの悪い男やら周囲が見て見ぬふりをしていたのかと思ってため息を吐く。


やがて色々話を聞いていると、目的の花屋にやってきた。


「いらっしゃい……あら……」


……どうもこの街の孤児院は、街の人たちにはいい迷惑だってのが花屋の店主の態度で分かった感じがしたリョウタロウだった。

だが、そんなのを態度では出さずに、ただ赤い花を一輪下さいと言って金貨を差し出してちょっとした嫌がらせをするくらいはしたのだが。


そして用事が済めばこんなところには用はないとあっさり花屋を後にして、また絡まれるのもなんだしと広場らしきところに出ていた屋台などであらかた食事を買いまくると子供たちの案内で孤児院へと向かうのだった。


そこは孤児院とはこういうところなのかっていうくらいに教会跡のようなボロい小屋で、冬とか最悪だろうと言えるほどにひどい環境だった。


元盗賊で洞窟暮らしだったラナでさえ、こんなとこに人がというくらいなのだからそりゃもうというくらいにひどいところではあったが、何やらシスター服に身を包んだ女性が周囲を心配そうに辺りを見渡していた。


「あの~」


そんな話しかけでリョウタロウがシスターに声をかけると、シスターは子供たちを見つけあなたたち! といった感じで駆け寄ってきた。


「あの責めないであげてくださいね。彼らも訳があって……」


「責めないわ……もう、心配させないで」


と言ってシスターはボロボロの恰好の孤児たちを抱きしめて涙を流していた。

優しいなと思ってそのやり取りを見ていたのだが、やがて俺のほうに向き直り礼をしてきた。


「何とお礼を申し上げればよいか。本当にありがとうございます」


「いえ、今日街にやってきたばかりの旅人なもんで……さすがに街の連中の扱いはひどいなとは思いましたが」


「あ……」


俺の言葉の何かが引っかかったのだろうそっと手を胸にやると落ち込んでしまった。


「あ、すいません」


「いえ。仕方ないことですから……」


そう言ってお互いに黙ってしまうリョウタロウとシスター。

やがて子供たちは早く赤い花をという言葉によって、リョウタロウからこれ何かの御力になればと思ってと言い出してシスターはさっきよりも深い礼をして、建物へと案内をした。


「あ、どうも」


そう言うと、子供たちは先に行くと言って赤い花を持って建物へと入っていき、リョウタロウたちはシスターの案内に従って建物へと入る。


建物に入ると、やはり外見と同じように隙間風が入るかのようにボロボロで、建付けが悪くてとても住めたものじゃないような内装だった。


案内されるままに廊下を通っていると、子供たちが賑やかにしている部屋がチラっと見えたリョウタロウはそこで真っ白な髪と赤い目、いわゆるアルビノと呼ばれる珍しい子供がベットらしきところで伏せっているのを目撃するのだった。



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