夜•射的
香月よう子さんの「夏の夜の恋物語企画」参加作品です
妖精村のお祭り屋台
寄ってらっしゃい
見てらっしゃい
可愛い羽を震わせながら
的になっている景品を
ふよふよ ふよふよ 動かして
悪戯ばかりしているな
妖精村の夏祭り
酔ってらっしゃい
魅てらっしゃい
古びた玩具の射的銃は
緑の蔦が絡んだデザインだ
妖精の国の魔法の蔦が
そのまま生えて絡んでいるのだ
妖精村に夜が来た
お祭り屋台に灯りが入る
ちょいと兄さん覗いていきなよ
可愛い彼女にいいとこ見せなよ
弾には何を使うのだろう
小さな壺に一杯ミルクを差し出して
蔦が生えた射撃銃を受け取る人を
少し離れたところから見る
妖精村のお祭りは
げにも愉快なことばかり
空にも地にも屋根の上にも
蜻蛉の羽や蝶の羽
花の帽子に葉っぱの洋服
みんなみんな着飾って
不思議な屋台を楽しんでいる
寄ってらっしゃい
見てらっしゃい
今宵一夜の夢の内外
動物の声が聞こえる頭巾
姿が隠れる大きなマント
お酒が溢れてくるジョッキ
夜空に絵を描く光の絵筆
あれが欲しいという君の
視線の先を辿ってみれば
妖精の国の王子様が
キラキラ笑顔で微笑む絵姿つきの箱
面白くないね
自分で買えよ
なんて言えないけれど
いい加減に構えて放つ苔の塊は
くるくる回って螺旋の軌道
やあお姉さん愛されてるね
2人の恋が本物ならば
なんでも好きなものが撃ち落とされて
今宵愛になるんだよ
けっ、上手いこと言ってらあ
妖精の国の奇妙な形の石を並べて
キラキラ笑顔の王子様を囲んだ小箱
君に渡せば微笑んで
君が口付けくれたのは
暑さで乾いた唇の
まん真ん中のど真ん中だった
お読みくださりありがとうございました