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5


 清藤の粛清は、素戔嗚の登場で半ば強引に終わりを告げた。


 主門は粛清後、病院へと送られた。もう二度と人としての生活は望めないらしい。

 澄彦さんの粛清に過剰反応した結果だそうだ。

 それとこの地が正武家に反旗を翻した清藤をどんな事情であれ許さず、当主の主門には厳しい罰が与えられた。

 都貴は大国主に連れ去られ、消息は分からない。

 素戔嗚が言った様に贄として喰われてしまったのかもしれなかった。

 亜門は赤駒と共に玉彦が祓った。

 彼は狗に喰われた時点で死んでおり、実質的に玉彦に祓われたのは赤駒という犬外道だった。

 そして多門は、胸に色々と思うことがあっただろうけど、正武家の稀人として生きる道を選んだ。

 ちなみに彼に付いてきた二人の付き人は正武家を去った。

 この先正武家に居ても自分たちは力にすらならないと思ったようだ。

 そこで澄彦さんは二人にこの五村で暮らすのであればという前提で、当面の生活と仕事を世話した様である。

 残りの付き人は粛清後、身元不明の人間として警察に保護されその先はわからない。


 こうして一連の清藤の騒動は終わった。




 夕餉の席で澄彦さんと向かい合って目を合わせてお互いに溜息をつく。


「君の旦那はいつになったら起きるの?」


「澄彦さんの息子、すごく寝坊癖がついてるんですけど」


「いやもう大人だしね? 僕には責任ないでしょ」


「私だって自分の旦那様を叩き起こすことは出来ませんから」


「あんな不愛想な息子でも居ないとなれば寂しいものだねぇ……」


 澄彦さんはお新香をぽりぽりしつつ、玉彦の陰膳を見つめた。

 一人息子だから寂しいだけでは言い表せない思いもあるようで、しんみりしている。


「そうそう、明日のお役目お休みにしたから」


「え?」


「起きてからずっと出ずっぱりだったでしょ。比和子ちゃん、休みなさい」


「でも、かなりスケジュールが詰まってませんでした?」


「そんなの蘇芳に回すよ」


 蘇芳さん、ご愁傷さま……。

 彼はここ半年澄彦さんの無茶ぶりに振り回されている。

 澄彦さんはご馳走さまをして早々に下がった。

 私は座敷に残されてお茶を啜る。

 明日、休みかぁ……。

 予定なんて何もないからずっと玉彦のところにいられるなぁ。

 ぼんやりと考えていたら、お膳を下げに来た豹馬くんと目が合う。

 でも何も話せなくて私は逃げるように座敷を出た。


 ほとんど無意識に玄関を出て、本殿へ戻る。

 そこは数時間前と何も変わらず、私を安心させた。

 吹雪き始めた夜空を見上げて扉を閉める。

 雪を払って定位置に座れば穏やかで無意味な時間の始まり。

 何も考えず何も思わず。

 雪が本殿を強く叩きだし、揺らめく蝋燭を見ると一つだけ消えた。

 その分室内が冷えた気がして身震いする。

 上着も持たずに来てしまったから私の身体が冷え始める。

 夏だったらこのままごろ寝して朝まで居ても大丈夫なのにな。と考えて、思いついた。


 玉彦のお布団に入ってしまえば良いんだ。

 そうしたら暖かいし、少しだけ寂しさが紛れる。


 いそいそと襦袢だけになり、少しだけ玉彦を押しやって隣に寄り添う。

 じんわりと身体が温まり始めた。

 こうしていると一緒に寝ているだけで、朝になれば普通に玉彦が起き上がるような気がする。

 仰向けになって天井を見上げて。


「たまひこー。旅行は近場でも良いからゆっくりしたいよねー」


「でも遠くでもいいかなー。あ、でも海外は無理だね。私パスポート持ってない」


「何だったら澄彦さんに有給休暇申し込んで、御倉神所縁の神社廻りなんてどうかな。御朱印帳持ってね」


「……とりあえず私は玉彦と一緒だったらどこでもいいんだけどさ。おやすみなさい」


 触れていた手を握るけど握り返されることはなかった。



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