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獣人と歩む異世界  作者: 佐々木ブルー
第一章 獣人との出会い
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9.フリアの過去 後編2

「何言ってんだお前、獣人ごときが俺に勝てると思っているのか?」


「ああ、もちろん」


「それじゃあ、いくぞ、アエ オア ライキ イル!」


 スオリさんはそう唱えると光の剣が現れ、スオリさんはその剣を持ち、人間達に立ち向かう。


 だが、光った剣に私に投げた小型爆弾を複数投げるとスオリさんの光った剣は折れてしまった。


「やっぱり脆いな」


「もう諦めろ」


 そんな人間達の声が聞こえてくる、だが、スオリさんはまだ諦めていないようだ。


「まだだ、アエ オア ライキ イル!」


 また光った剣を持ち、人間達に立ち向かう。


 だが、また小型爆弾を投げられ光の剣は折れてしまう。


「何度やったって変わらない」


 私はスオリさんが勝てそうにないと思い、覚悟を決めて叫んだ。


「スオリさん!あなただけでも逃げてください!」


 私はこれでスオリさんが逃げれたならもうそれで良いと思ったが、スオリさんから予想外の返答が返ってくる。


「私は大丈夫」


 無理だ、私は知っている、光の力を何度も使うと体力が大量に消費されることを。

 光った剣を2度出しただけで相当、体力を消費しているだろう。


「ボス、何度も剣を出されては厄介です。一気に爆弾を投げましょう」


「分かった。爆弾をあの獣人に投げろお前ら!」


 スオリさんは寸前のところで回避しているが、もう当たってしまいそうだ。

 そして、スオリさんは人間達の投げる小型爆弾に直撃してしまい、ボロボロになっていた。


 ああ、もう死んでしまうのか、あの世では両親と再会できたらいいな。

 私はそんなことを考えているが、スオリさんはまだ諦めていないようだ。


「使いたくなかったが、しかたないアエ オア オル!」


 スオリさんがそう唱えると光の粒らしきものが大量に現れ、一つの玉となり、男達の方にいくと、男達は倒れはじめる。


「なんだこれ、く、苦しい」


 だんだん男達の顔が真っ青になり、息ができなくなっていった。

 私は突然のことに驚き、スオリさんの方を見ると私も顔が真っ青になった。

 何故なら、スオリさんは吐血していたからだ。

 私はすぐにスオルさんの方に向かう。


「悪い、強がってた、あの光の力を使用したものは光の粒となり必ず死んでしまうんだ」


「どうして、私を助けたんですか!」


「困っている人は助けるって言っただろ」


「それと、これ忘れ物だ。これを私だと思ってくれ」


 スオリさんが渡してきたのは忘れた緑の帽子。


「最後にフリアを護る光の力を使う、アウ オア オフェロ」


 スオリさんがそう唱えると私は温もりを感じた。これは多分スオリさんの温もりだ。


「フリアが思い続けて、私の光が続く限り、私はフリアのことを護り続ける!だから、心配しなくていい!私にとっての光はメルノ様だけじゃない、フリアもだ!生き続けて、私達の夢を叶えてくれ!」


 そして、スオリさんは息絶え、光の粒となり空に飛んでいった。


 ★


 それから私は泣きながら獣人の家に戻り、私の声で目覚めた人に何が起こったかを伝えると、沢山の人が泣いた。

 私はその泣き声を聞いて、泣いてばかりでは駄目だ、スオリさんが言っていたように困っている人を助けようと思った。

 はじめに困っている人を助けたのは迷子の子供。ケルノ村の近くまで案内し、すぐにその場を離れ、すぐに獣人の家に戻った。

 2人目に助けた人は魔物に襲われていた少女。光の力は見られると獣人とバレるのかもしれないから、光の力を使わずに倒した。

 3人目に助けた人は自殺しようとしている青年。話を聞くと、どうやら職場でいじめられているようで、それが原因で自殺しようとしていたようだ。

 私はその青年にその仕事を辞めることを提案した。今は何をしているか分からないが、青年は私の提案を聞くと自殺をやめていた。

 人間世界でもこんなに追い込まれる人がいる、人間と獣人とが手を取り合うなんてないと思った。だが、それでも諦めなければ人間と獣人との共存の道が見えるかもしれないと思い、まだ困っている人を助けることにした。

 そして、4人目に助けた人、それが光太郎さん。その時は近くにシュウがいたことを知っていたからケルノ村で話をすることができた。光太郎さんと出会ってから私は人間と獣人とが手を取り合う世界の可能性を感じた。


 ★


「というのが私の過去です」


 そこまで話すと光太郎さんが口を開いた。


「ありがとう、教えてくれて」


「この話ででてきたスオリさんの光の力で私はダークベアの攻撃を防いだのだと思います」 


「ダークベアの攻撃を防いだ光の力はその人の思いが強ければ強いほど防ぐ力が強くなるそうです」


「じゃあ俺が見たフリアを護った獣人はスオリさんって人だったのか」


「おそらくそうです」


「なあ、フリア、俺は獣人のことはあまり分からない、なんならこの世界についてもあまり分かっていない。だけど、フリアと出会って俺は本気で獣人と人間の共存を目指すことにした、こんな俺だけど、ついてきてくれるか」


 光太郎さんはこんなに私達獣人のことを思っているということを改めて理解し、私は嬉しくなった。

 

「はい!勿論!」


「ありがとう」


 光太郎さんの表情はいつもより笑顔だった。

 ふと、もう魔物が増える時間帯であることに気づき、光の力を使おうと思った。


「そろそろうろつく魔物が増えるので魔物をあまり寄せ付けない光の力を使いますね」


 私は光の力を使って、驚いた。いつもよりとても強い光の力だったのだ。

 そこで私は気づいた。光太郎さんは私の光だったのだと。

 そして、私は光太郎さんに話したことでスオリさんのことを思い出し、空を見た。

 スオリさん、私は困っている人を助けることができたでしょうか。今は光太郎さんと一緒に私達の夢を叶えるために旅をしています。私はあなたの分も立派に生きることができているでしょうか。

 『ああ、勿論とても立派だ』という声が聞こえた気がして、振り返る。

 しかし、誰もいない。

 私は空に向かってありがとうと呟いた。

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