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獣人と歩む異世界  作者: 佐々木ブルー
第三章 ジケロ
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42.獣人解放団

 バンパとの話を終えてから、フリアとは一時的に別行動を取ることになった。

 今、フリアはバンパと作戦を練っている。

 フリアは今回の作戦の要となる光の力の使用者だ。事前の話し合いには必須。

 そして、一方の俺はギルドマスターの協力を仰ぎにギルドに戻っていた。

 ギルドマスターは多忙でバンパの家に来れないらしく、こちらから会いにいく必要があった。

 バンパとフリアの二人と共にギルドに行ければ良かったが、作戦の考案には地図だとか必要な物が多く、流出、紛失できないものばかり。

 あと、バンパが頻繁にギルドを出入りして目をつけられることを避ける為ってのもあって、俺一人で一旦ギルドへ来ていた。


「ギルドマスター、ちょっと例の件で話したいんだが」


「あれ、フリアさん達は?」


「今二人には作戦を練ってもらっている」


「……そっか。それじゃあ奥の部屋で話そうか。向こうなら音も響かないし」


 言われるがままにギルドマスターに奥の部屋に案内され、そこで話すことになった。


「バンパから話は聞いているよな。今回のジケロギルドの計画の協力をお願いしたいんだが」


「ごめん。悪いけど僕は今回、力になれそうにない」


 間髪に入れずにギルドマスターは答えた。その回答をもう心に決めていたかのように。

 てっきり協力してもらえると踏んでいたんだが……。


「どうしてだ?」


 一瞬、ちらりとどこかへ視線を移してからギルドマスターは答える。


「……ジケロギルドはここより規模が大きいんだ。比べようがないぐらい」


「そんなギルドとこことが対立したら結果は目に見えているよ」


 確かにそれは事実だろう。ギルドマスターだからこそ、その力を身をもって実感しているはずだ。


「サーベントのときとはわけが違う」


「あのとき危険が及んだのは、僕と協力してくれた冒険者達、そして君とフリア」


「自分から覚悟を持って協力しなかった人達のリスクは小さかった」


「僕には、ギルドにいる皆、ひいてはこの街の皆を守る責務がある」


「ここが無ければ、路頭に迷う子も沢山いるんだ」


「僕も勿論、少しでも多くの子が救われて欲しいと思ってるよ」


「でも、それ以上に僕の周りのみんなを守りたい」


 目が澄んでいる。言葉から、態度から、はっきりと確かな思いが伝わってくる。

 彼女なりの正義、ギルドマスターという立場の責務、そして何より彼女のこの街の人々への思いを確かに感じる。


「ごめんね……。本当に」


「でも、どんなに頼まれてもこれだけは無理なんだ」


 その声色からは、ギルドマスターの歯痒い気持ちが察せられた。

 今回ギルドを頼れないとなるとかなり厳しいが、かといって無理にこの計画に巻き込む気にもなれない。


「なるほどな……ギルドマスターの言うことは十分に分かる」


 そう言って、ギルドマスターの言葉を飲み込んでいると、突然後ろから誰かが近付いてきた。

 何者かと思い、振り返る。


「じゃあ、私が個人的に協力するのは問題ないな?」


 そこには、見覚えのある黒髪の獣人がいた。


「……タイミ!」


「悪いな。少し盗み聞きさせてもらった」


「……ずっと前から気付いてたよ。漏れたくない話だったからね、警戒してた」


「バンパさんと話してたときもタイミは聞いてたよね」


「気付いていたなら、何故……」


 タイミの言葉に割り入ってエプロは答える。


「でも、君は聞くべきだと思ったんだ」


「ずっと、獣人の子達のこと、気にかけていたからね」


「……気遣い感謝する」


「さて、光太郎、本題に入ろうか。盗み聞きではあるが例の計画は把握している」


「私も長年冒険者をしてきた。ギルドマスターほどではないが、信頼のおける仲間達が沢山いる」


「そこで、だ。私率いる獣人解放団に任せてくれないか?」


「獣人解放団?」


「ああ。サーベント壊滅後、獣人を助けるために尽力したいと言ってくれる仲間達と共に立ち上げた」


「獣人解放団の仲間達は皆、光の力に長けている獣人で、総勢30人だ」


「中には、サーベントの一件から入ってきてくれた者もいる」


「まだ、トラウマを抱えているものも多いが……」


 サーベントが残した傷は根深い。もうないとはいえ確かに今も過去という呪いとなって残っている。


「十分、力になれるはずだ」


 タイミのありがたい協力の手を取ろうとしたそのときだった。

 先にギルドマスターは口を開いていた。


「厳しいことを言うけど、獣人解放団の失敗がこのギルドまで影響するリスクは看過できない」


「飽く迄、ギルドではなく解放団として独立しての行動だ」


「一時的にこのギルドとの契約も取り消す。参加者全員がだ」


「これで獣人解放団とギルドとの関係は断たれる」


 そこまで言うと、ギルドマスターは一度押し黙った。


「……僕に止める権利はない」


 エプロの声は震えていた。

 心配だとか、ギルドマスターとしての責任だとか色々な感情と思いとがごちゃごちゃと混じり合って、それがノイズとなって震えているようだった。

 でも、それでもはっきりと耳で捉えられる声量だった。


「本音を言えばこのまま平和に暮らしてほしいって思ってる」


「獣人解放団の人達とギルドとが繋がってた過去がバレるリスクも、そう易々と見過ごせるものじゃない」


「僕はこの街の人達を守る為の行動を取る。ひょっとしたらその為に獣人解放団のことを見捨てることだってあるかもしれない」


 言っている内容は俺たちにとってはかなり厳しいものだが、この街を守るためには仕方のないことだろう。


「けど、どれだけ言っても君達は止まらないんだろうね」


「僕も、何にもなしに君達を売るなんてことはしないよ。成功を祈ってる」


 瞳はやはり澄んでいて嘘偽りない。


「だから、これだけはギルドマスターとしてじゃなくて、一人の友人として言っておくけど」


「必ず、無事に帰ってくるんだよ」


 どのギルドでも、毎年一人は冒険者が命を落としている。

 今までギルドマスターが、エプロが見送ってきた人の中には、それが最後になってしまった人もいるのだろう。

 だからこそ、その言葉は重くのしかかる。

 でも、それに答えるだけの思いが、覚悟が俺にもある。


「ああ、勿論!」


「また必ず帰ってくるさ。私の第二の故郷に」


 複雑そうな感情を抱えながらもなんとか微笑みを浮かべるエプロ。

 目元は少し、赤かった。


「それじゃあ、明日にでもギルドの契約解除の手続きをしよう。その準備はする」


「それからは……もう協力できない」


「僕は、明日の準備をするよ。それじゃあね」


 そう言って、ギルドマスターは準備のためにギルドの仕事部屋へと向かった。自分の弱い姿を隠す為に背を向けていたようにも感じた。多分、どっちもだ。


「……意外だな。この作戦にタイミがそんなに協力的だなんて」


「獣人の仲間が危険な目に合う可能性、十分にあるっていうのに」


 少し前、フリアとタイミが対立していたときからは考えられない行動だ。

 勿論、サーベントの一件で色々変わったところがあったとは思うが。


「獣人解放団は皆、覚悟している側だ」


「それに、私もお前達と一緒に見たくなったんだ」


「全世界の獣人と人間が手と手を取り合って生きる……そんな、いつしか不可能だと諦めていた馬鹿げた夢を」

お久しぶりです! 佐々木ブルーです!

受験が終わったので更新再開です!

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