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獣人と歩む異世界  作者: 佐々木ブルー
第一章 獣人との出会い
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4.白の森とダークベア

 俺は道を知らないため、フリアの後ろに付いていく。

 出来るだけ人を避けるようにしようと思うが、何故か人っ子一人いない。

 何故なのかは分からないが、好都合だ。

 

 フリアにただ付いっていくよりメルカへの行き方を少しは知っておく方がいいだろう。

 そう思い、フリアに尋ねる。


「メルカにはどうやって行くんだ?」


「ここから4kmぐらい離れた白の森を抜けて、5km程進むとメルカに着きます」


「白の森は魔物がいないはずですが、最近魔物が出たという話を聞いたので、白の森では気を付けるようにしましょう」


 白の森の近くに誰もいない。そして、白の森に魔物が出た。考えすぎかも知れないが、危険な魔物がいて、それが理由でこの辺りに人がいないのかもしれない。

 もしそうなら、白の森を抜けるというのは危険な道のりだ。


「フリア、もし白の森に魔物がいたとしたら、魔物を倒したり、逃げたりすることは出来るか?」


「Dランクまでの魔物なら、一体なら倒せます。Cランクの魔物なら逃げることは可能だと思いますが、Bランク以上の魔物なら、逃げるのは難しいです」


「Dランクとか、Cランクっていうのは?」


「メルカのとある魔術師が、それぞれの魔物につけた危険度です。一番下のEランクの魔物なら子供でも倒せるでしょうが、Dランクの魔物は簡単な魔法や、剣を扱えないと倒すことは困難です。Cランクからは魔法や剣に長けていないと倒すのは難しいです」


「なるほど、分かった」


「もしかして、光太郎さんはご両親から十分な教養を与えられなかったのですか?」


 突然そんなことを言うフリアに驚きつつも返答する。


「いや、違うが、どうしてだ?」


 この世界においてそのような要素があったのだろうか。


「魔物のことなどは一般的に知れ渡っていることだと思うので、それを知らないということは何かあったのかなと」


 納得すると同時に昔のことを少し思い出し、返答する。


「違うが、家庭は荒れていたな」


 フリアは何か察したのか少し俯いて、そのことについて話すことはなかった。

 まあ、勘違いに近いが。

 いや、そこまで勘違いではないかもな。実際、家庭は母が死んだ時から荒れていたし。


 ★


 そうして歩いているといつの間にか白の森に着いていた。

 白の森は不気味なぐらい静かで、動物1匹すらいそうにない。

 白の森に入ると歪な形の木や、枯れた植物など以外は何も無かった。 


「魔物何ていそうにないですね」


 本当にそうだ。


「これじゃあ獣人に寛容な町があるという噂は信用出来ないかも知れないかもな」


「そうですね」


「ですが、私は信じます。少しでも可能性があるのなら」


 フリアの言葉を聴き、俺は少し昔のことを思い出した。

 母が亡くなる直前、車に跳ねられた母は重症で、助かりそうにないと医師に言われたとき、俺はずっと母が助かることを信じていた。だから、医師に亡くなったと言われた時は実感が全然なかった。

 だから、フリアは昔の俺に少し似ている気がする。


 そんなことを考えていると、光が見えた。

 どうやら、白の森を抜けていたらしい。

 遠くを見るとメルカらしき町がある。


「白の森を抜けたので、後5km程歩いたら着きますね」


「じゃあ行こうか」


 ★


 それから20分程歩くと、大きなドシ、ドシという音が聞こえ、それと同時に地面が揺れる。

 音が聞こえた方を見ると3mはある黒い熊がこっちに向かって走ってきていた。

 流石に倒せると言っていたDランクの魔物ではないだろうと思い、フリアに尋ねる。


「何かヤバいんじゃないの?」


「逃げましょう!」


 フリアの言葉を聴き、俺とフリアはケルノ村で追いかけられた時のように逃げる。

 だが、今回の相手は熊の魔物だ。逃げるのは困難だろう。


「あいつは一体何だ!」


 走りながらフリアに尋ねる。


「Bランクの魔物のダークベアです!武装した兵士達じゃないと倒せない強さです!」


 フリアは少し早口になりながら答える。

 そう会話してる間にも少しずつダークベアは距離を詰めてくる。

 とにかく逃げて、一度後ろに振り返るとダークベアとの距離は結構近かった。


 何でこの世界に来てから1日の間にこんなに危険が迫るんだ。

 ダークベアから逃げる方法はないのか。

 思いつかない。というか、そんな方法殆どないだろう。

 こんな状況で思いつくわけがない。

 

 俺とダークベアとの距離が大体50cmぐらいの時にダークベア腕を振り下ろしてきた。

 俺は数センチ差で何とか回避するが、ダークベアが腕を振り下ろしてきた時に生じた風に吹き飛ばされる。

 俺が立ち、ダークベアの方を見るとフリアが追いかけられていた。

 この状況なら俺一人は逃げ切れるかも知れない。

 だけど、ここでフリアを見捨てていいのか?

 それは獣人を差別していた人々と同じようなことをすることになるんじゃないか。

 フリアは俺のことを信頼しているんだ。それを裏切るような行為は絶対に駄目だ。

 そうして、覚悟を決めてフリアの方に向かい、走った瞬間、ゴン!という大きな音が響いた。

 その音はフリアがダークベアに殴られた時に生じたもののようだ。

 だが、傷一つ付いていない。見間違いかも知れないが、フリアとは違う獣人がフリアの背後から出てきて、庇っていたように見えた。

 そして、フリアは動きそうにない。


「グマアアア」


 ダークベアが叫ぶ。

 その声に反応して、ダークベアの方を見ると何処か遠くに逃げていった。

 今がチャンスだと思い、フリアを抱えるとフリアに震えた声で問いかける。


「生きているか?」


 フリアは何も言わなかったが、耳を澄ましたらフリアの心臓の音が聴こえた。


「良かった……生きてる」


 思わず声を漏らし、メルカへ向かう。

 あのダークベア以外に魔物や人はいなかった。

 フリアは意識を失っている。

 メルカに行けばフリアを助けられるかも知れない。

 フリアのようにそう信じてメルカに向かって歩く。

 もう、フリアを抱えて走る体力はない。


 ★


 フリアを助けてくれることを願いメルカに向かって歩いているとメルカに着いた。

 その頃にはもう日が暮れていて、水を飲みたいや何か食べたいとも思ったが、一番強く思ったことはフリアを助けたいだった。

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