32.仕掛け
ひかちゃんが教えてくれた内容はサーベントの残忍さがすぐに分かるものだった。
アランが俺達を殺そうとした事実は変わらない。
だが、憎むに憎みきれない。理由が理由だ。
「……ひかちゃん、アランが意識を失ったことはサーベントに伝わった?」
「分からない……今はあまりカゲの魔力を感じないが……先程までは確かにアラン以外のカゲの魔力を感じていた」
これでもし、アイシャという人が殺されたりしていたら……俺達のせいでもある。
当然、サーベントが一番悪いのだが……。
なんともいえない罪悪感とサーベントへの怒りでいっぱいだ。
フリアもひかちゃんも同じ気持ちだろうか。
だが、まずは作戦のために動かないと。
「何か、記憶を探っていく中で作戦に活かせそうなことはあったか?」
「特にはないな……サーベントはアランに必要最低限の情報と命令しか言ってこなかったようだ」
★
それから、作戦実行当日までの間にシュウからサーベントのアジトの場所を教えてもらい、カミラからはサーベントのアジト内部のことを覚えてる限り教えてもらった。
アランはギルドの方で睡眠魔法と回復魔法を使い、一旦眠ってもらっている。
アイシャが生きていていたら良いのだが……。
そして、作戦実行当日。ひかちゃんの感知で既にサーベントのアジトのどこかにカゲがいることは分かっている。
フリアが先導し、サーベントのアジトへと向かう。
協力を申し出てくれた冒険者は全員集まってくれた。
★
アジトに着くまでの間に攻撃はなかった。
何体か魔物はいたが、熟練の冒険者達にとってはほとんど意味がなかった。
作戦通り、まず、フリアと3人の冒険者達にアジトの奥へと進んだ。
思ったより静かな時間がピリピリとした緊張感の中で過ぎていき、2分程経つと、フリアは○の記号を光の力で上空に出した。
侵入後、フリアの光の力で上空に記号を出してもらうように言っていた。○は順調に侵入できたことを意味する。
そして、様子をうかがっていると、アジトから、武装をした30人ぐらいの男達が襲ってきた。
協力してくれた人達は全員手練れで、1対1ならこのくらい倒せるだろうが、狙う先は全員、俺だった。
そうなると話は違う。
1人を守りながら敵全員と戦うのだと一気に難易度は変わる。
通常ならピンチだろうが、今回においては好機だ。
おそらく、サーベントはこの作戦のことを既に知っていて、勇者の剣を持つ俺を集中攻撃しようと考えたのだろう。
だが、それを利用しに、今日まで種を蒔いた。
そして、今、芽吹くときだ!
「俺は大丈夫だ!」
冒険者達にそう大声で伝えると、浮遊感を感じ始めた。
★
浮遊感を感じてすぐ、俺はフリアの所へ辿り着いた。
「良かった……!」
「ひとまず、成功したようだな」
フリアにはアジトの奥に侵入し、記号を上空に出し、光となる者、今回で言えば俺をフリアの所まで移動させる光の力を使ってもらうように言っていた。
協力してもらう人を募ったあの日、ひかちゃんにカゲの魔力を感知してもらい、わざとサーベントに今回の作戦の一部の情報を流し、俺達がサーベント内部の構造を全く掴めていないと嘘の情報も流した。
だが、フリアのこの光の力のことはサーベントに知らないように隠し続けた。
その結果、協力してくれた人達にも伝えられなかったが、取り敢えず上手くいった。
しかし、それを安堵する暇もなく、ひかちゃんは言う。
「……カゲは近い」
……これから、この作戦で一番大きな敵との戦いが始まる。
「この通路の先にカゲはいる」
そう、ひかちゃんは俺達に伝えると、突如、少年のような声が聞こえた。
「こんにちは。光太郎くんにフリアちゃんにひかちゃん。自己紹介はいらないよね?」
この声の主がカゲ……。
「あ、君達の自己紹介もいらないよ。もう知ってるから!」
「さっきの光の力は驚いたよ〜。ナイスアイディア!」
「それじゃあ、楽しませてね。期待してるよ?」
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