31.被害者罪人A
俺、アランが18のときに、両親は不治の病とされているヒュドラに罹ってすぐに死んだ。
両親がヒュドラに罹った日、俺はゴブリン討伐の依頼を受けていて、死に際に立ち合うことができなかった。
ヒュドラは原因不明で致死率100%。
怒りのやり場もなく、あまりに突然の別れに胸が締め付けられた。
そんなとき、幼馴染のアイシャが俺を支えてくれた。
アイシャは160cmぐらいの金髪の獣人でとても優しい。
感謝してもしきれない。昔から、助けられてばかりだ。
★
それから、丁度2年経った日、俺はアイシャに告白した。
好きにならない理由がなかった。
こんな俺でいいのかとも悩んだが、2人の時間を過ごしていく中でアイシャにつり合う男を目指していこうだなんて思うと、すぐに告白する勇気が出てきた。
アイシャは少し動揺しつつも『喜んで。よろしくお願いします』と笑顔で返事をくれた。
このときばかりは有頂天になった。
普段は行かないような人気のない外の所で2人きりになりたいだなんて提案した。
アイシャも俺の意見に賛同して、魔物の少ない森の方へと向かった。
このとき、なんでわざわざ家でなく、外で2人きりになろうとしたのか、今でも後悔している。
★
それから、森が想像よりも暗く雰囲気があまり良くなかったので、2人で別の場所に行こうかだなんて言っていたときだった。
突如、謎の男達に囲われた。
「そっちの獣人は中々上玉だな。その男は……丁度良い、利用しようか」
そんな声が聞こえ、理解が追いつかない内に腹部に激しい痛みが襲ってきて、意識を失った。
★
目が覚めると、そこにアイシャの姿はなく、1人の男が立っていた。
「取り引きをしようじゃないか。お前が俺達に従うなら、アイシャは売らないし、悪いようにも扱わない」
どんなことをするのかも分からない。状況もよく飲み込めていない。
でも、何よりアイシャを失うのが怖かった。
「本当……ですか?」
「ああ、月1程度なら姿を見せてやる。だが、お前が命令に背いたりしたら、アイシャの命はないと思え」
「……分かりました。従います」
★
それから、俺はサーベントの傀儡になった。逆らおうと何度も思ったが、その度にアイシャの顔が浮かんできて、結局一度も逆らえなかった。
話すことはほとんどできなかったが、実際にアイシャと月に1回会うことができた。
そんな日々を続けていると、ある人達と出会った。
光太郎さんとフリアさん。
何でも、サーベントを潰すんだとか。
良い人そうで、俺のようになる人は少なくしたかったから、やめておくように言った。
まあ、『出来るだけ敵対する奴は少なくしろ』だとか言ってたし、サーベントからそのことで咎められたりはしなかった。
だが……光太郎さんとフリアさんはギルドマスターと何やらケルノ村の近くの山にいる獣人達をノルメへ移動させる計画を始めた。
サーベントはダークドラゴンをフリアさん達の所へ送り、その計画を阻止しようとした。
フリアさんや冒険者達を殺し、生き残った人は売るなりするつもりだったんだろう。
俺は自分の非力さに嘆いて、暗い気持ちだった。
そんな気持ちでいたのだが……計画は成功したそうだ。
予想外のことに喜びを感じ、この人達ならと思ったが……。
サーベントの恐ろしさとアイシャのことを考えると、協力などできる筈がない。
そして、次の命令は『命令だ。光太郎とフリアを殺せ』だった。
いつも、どこからか、俺にしか聞こえない音で命令してくる。
今回ばかりは命令に素直に従えない。命を選べというのか。
もう、命令に従ってばっかりの日々を終えようかそう思ったが、サーベントのやつは『それと……今回の命令に従ったらアイシャは解放してやる。だが、もし、従わなかったら……いいな?』と言ってきた。
怒りや悲しみの中に喜びが混じっている自分の感情に心底惨めだと思いながら、決意した。
俺は……大罪人だ。
「……分かった」
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