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獣人と歩む異世界  作者: 佐々木ブルー
第一章 獣人との出会い
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3.旅の始まり

「え?」


 フリアの言葉に思わず、()頓狂(とんきょう)な声を漏らす。


「急に言われても驚きますよね」


 うん。めっちゃ驚いた。取り敢えず何故一緒に行こうかと思ったか教えてもらおう。


「何で、ついていこうと思ったんだ?」


 フリアは3秒程考え、答える。


「私は獣人と人間が手を取り合うことはないと思っていました」


 そりゃそうだろう。あんな扱いをされて人間が獣人と手を取り合う何てことがあるとは思えない。


「けど、貴方と出会ってその考えは変わり、貴方みたいな人がいるなら、獣人と人間が手を取り合うことが出来るかもしれないと思ったんです」


 そんなに俺が良いことをした気はないが、俺の行動でフリアの考えが変わったのは嬉しい。

 だけど、俺が思うにこの世界の人間はそんなに良い人はあまりいないだろう。

 この世界に来てあまり時間が経っていないが、人間の獣人に対しての扱いは本当に異常だ。何故、獣人をあんなに捕まえようとするのだろうか。


「夢物語かもしれませんが、それでも少しでも獣人と人間が手を取り合うことが出来る可能性があるなら、私はその可能性を信じます」


 俺はフリアのように獣人と人間が手を取り合う可能性を信じることはできない。少ない可能性なら期待しない方が良い、俺はそう考える。

 だけど、フリアのその可能性を信じるのもありかもしれない。

 もっとも、そのための課題は山積みなのだが。


「その結果、私がどんなに酷い扱いを受けても甘んじて受け入れます」


 フリアの目は本気だった。そこまでの決意があるなら本当に捕まったりしても甘んじて受け入れることだろう。

 だけど、フリアが良くても、俺は良くない。

 

 俺としては全然一緒に行くのはいい、むしろ来て欲しい、だけど、今回みたいにフリアが捕まる恐れがあると思うと悩ましい。


「って言っても貴方に得はありませんし、ダメですよね。ごめんなさい、貴方の都合も考えずに」


その言葉を聞いて、考えるより先に答える。


「いいよ」


「というかむしろ来てくれ」


 何を言っているんだ。俺の馬鹿、アホ。

 確かにフリアと一緒に旅をするのはとても楽しそうだが、フリアが獣人であることがバレたらどうするんだ。この前の様に助けてもらえることはないだろう。

 そういえば、この前助けてくれたのは誰だったのだろうか。

 いや、今はそんなこと考えている場合ではない。

 フリアが獣人であることを隠せる方法を考えないと。 

 それか、やっぱり無理ですごめんなさいとでも言うか?


「ありがとう……ございます!」


 フリアは本当に嬉しそうに言う。

 フリアの目は涙が浮かんでいる。

 こんなの見せられたら、今更やっぱり無理ですごめんなさい何て言えない。

 よし、フリアと獣人であることを隠す方法を考えよう。


「けど、獣人であることを隠さないとな。何か案はあるか?」


「緑の帽子で耳を覆い隠すぐらいしか思いつきません」


 どうしようか。

 あの緑の帽子じゃ頼りないし。

 

「あの緑の帽子の帽子が飛ばされないようにすることって出来るか?」


「はい、それならサイズの小さいのがあるので、それをかぶれば飛ばされることはないと思います」


 それなら、一つ考えがある。


「取り敢えず、人が多い場所には行かず、緑の帽子が飛ばされることないようにする。これでいいか?」


 これだけでは、運が悪かったらフリアが獣人であることがバレそうだが、今はこれくらいしか出来ない。


「問題ありません」


「よし、獣人であることを隠す方法は決まった。次はどこに行くか決めようか」


「フリア、行きたい場所はあるか?」


「それなら、メルカという町に行きたいです」


 メルカというの町はどのような場所なのだろうか。フリアには悪いが、人が多いなら行きたくない。


「そこはどういう町なんだ?」


「ここから東の方にあり、魔法の技術が高く、ケルノ村で聞いた噂では獣人に寛容で、特殊な力を持った道具があるとか。まあ、噂なのであまり信用はできませんが、光太郎さんのような人がいることだし、本当なのかもしれません」


 魔法の技術が高い、獣人に寛容、特殊な力が高い。気になることが沢山ある。

 行ってみる価値はありそうだ。

 だけど、獣人に寛容であるということが本当なのかも分からないし、人が多ければ避けたい。


「そこは、人が多いか?」


「いえ、人は少ないです」


 それなら、行ってみようか。


「じゃあ、そこに行こう」


「分かりました」


 フリアの返答を聴いた時にふと思った。

 そういえば、俺ってこの世界の常識全然知らない。

 この世界の常識を知らずに旅をするのは危険だ。


「話変わるけど、俺は常識が全くないんだ。分かる範囲でいいから、教えてくれ」


「私もあまり常識があるとは言えませんが、分かる範囲でなら」


 とてもありがたい。


「まず、貨幣の価値は分かりますか?」


「いや、分からない。教えてくれ」


「クロイという単位で、100クロイで小さい魚1匹、2000クロイで宿屋に1日泊まれて、1万クロイで良い薬が買えます」


 2000クロイで宿屋に1日泊まれるというのはいい情報だ。


「ありがとう。これで貨幣の価値が分かった。魔法についても教えてくれ」


「魔法というのは魔力という体のエネルギーを使い、攻撃したり、回復させたり、重力を変化させたり、何かを生み出したりすることです」


「また、獣人のみ生き物や物をどこかに飛ばしたりする魔法が使えます。ですが、その魔法を使うまでに5分程の時間が必要です」


 魔力を使って色んなことが出来るのは分かった。

 魔力というのは人によって量が変わるのだろうか。


「魔力っていうのは人によって量が違うのか?」


「はい、魔力は人によってはない人もいれば1日に100回以上魔法を使うことが出来るだけの魔力を持っている人もいます。また、休めば魔力は回復します」


 ということはこれから行くメルカという町には魔力が高い人が沢山いるのだろう。


「ありがとう。これで常識がある程度知ることが出来たよ」


「お役に立てたのなら良かったです」


 うん、めちゃくちゃ役に立った。


「そういえば、俺は1クロイも持っていないが、そっちはいくら持ってる?」


 俺の言葉を聴くとフリアは腰にかけていた袋を取り出し、中にある金色や銀色そして、銅色のコインを数えた。そして、俺の質問に答える。


「2万クロイです」


 2万クロイということは10日は宿屋に泊まれる。


「そうか、まあそれだけあれば少しの間は生活出来る」


「だが、途中でお金を少しは稼がないとな」


「そうですね、お金を稼ぐ方法はメルカに向かいながら考えましょう」


「そうだな」


 これで、大体の今後の方針は決まった。


「よし、そろそろ出発するか」


「そうですね」


 そうして俺はフリアと共に旅を始めた。

1クロイは1円ぐらいの価値です。


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