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獣人と歩む異世界  作者: 佐々木ブルー
第二章 獣人解放作戦
26/43

25.あの日

 妹のカミラを探すために、メルカから離れ、3ヶ月の時が過ぎた今日の昼。

 森を抜けた所で、3人の男が子供の獣人を連れ去ろうとしているのを見つけ、木の裏で、その姿をじっくりと見始めた。


「いや!やめて!」


「騒ぐなよ。ガキが」


 そう言うと、3人の男は無理矢理、その子の手と足を縄で縛り、口を布で押さえつけた。


「だぁずげで!」


 悲痛な叫びの声は布により、殆ど聞こえず、誰かが通りかかる様子もなかった。

 そして、その子は、立方体のような形の檻の中に入れられ、男達はその檻を布で覆った。


「おし、じゃあ、サーベントにこいつらを送るか」


 サーベント?

 このチャンスを逃したら、次、いつ、サーベントに関係する者を見つけられるか分からない。

 それに、あの子を助けたい。

 じゃあ、どうする?

 僕の力じゃ、ナイフを持った3人の男に対抗するなんて難しい。

 目眩しの光の力を使えば、助けられるかもしれないが、サーベントの情報も手に入らないだろうし、成功する可能性は低い。

 失敗すれば……僕は捕まえられ、カミラを助けることができなくなるだろう。

 だから、尾行……今はそれしか思いつかない。

 ごめん、君を助けることはできない。

 少し離れた所から、バレないように、慎重に尾行を始めた。


 ★


 尾行を始めてから20分ぐらい経ち、人気(ひとけ)がない、暗い森の中で、3人の男は止まった。

 そして、灰色のフードを被った男と話し始めた。


「獣人1匹」


「……金貨2枚との交換だ」


 そう、灰色のフードを被った男が言い、あの子を檻の中に入れた男達の1人に、金貨2枚を渡し、あの子を入れた檻を受け取った。

 あの子を入れた檻は、大きな物を入れる用の箱に入れられ、あたかも中に獣人なんていない、ただの物のように扱って、馬車に乗せると、何処かへと向かった。

 尾行するなら、次はあの馬車か……。


 ★

 

 そして、尾行を続けて20分程経つと、馬車は止まり、男は辺りを見渡し始めた。

 まずい、尾行がバレたのか?

 そう思った瞬間、男はある魔法を唱えた。


「アオ オービル」


 男がその魔法を唱えると、いつの間にか、男と馬車はその場からなくなっていた。

 一体、何が起こった?

 とにかく、この場所は絶対重要だ。

 ここが、サーベントに連れ去られた、カミラを見つける手掛かりになる。

 そう思った僕は、明日も、この場所を訪れることにした。


 ★


 次の日の昼、僕は昨日、男と馬車が突然いなくなった場所を少し離れたところから観察していた。

 そして、観察し始めてから1時間程経った頃、ある馬車がその場所で止まった。


「アオ オービル」


 昨日のあの男と同じ魔法を唱えると、いつの間にか馬車はなくなっていた。

 間違いない。あの場所は、サーベントに関係している。

 早く、このことをギルドとかに知らせよう。

 そう思い、近くの町へ行こうとしたその時。

 後ろから低い、男の声がした。


「そこで何をしている?」


 どうやら、あの瞬間を見ていたことが、バレてしまったらしい。


「見たな?」


「丁度良い。お前も、商品にしよう」


 なんとかその場から逃げようと、光の力を使おうとしたが、その男は光の力を使う前に、重い拳を僕の腹にいれた。


「ぐは!」


 痛い、苦しい。意識が朦朧としてきた。

 そして、倒れてしまった。


「よし。じゃあな」


 なすすべもなく、檻に入れられ、意識を失った。


 ★


 気が付くと、同じように、沢山の獣人がそれぞれの檻に囚われている場所にいた。

 ざっと、100人ぐらい入るだろうか。

 僕を含む全員の手と足は縄でキツく縛られていて、そんな状態で檻に入れられている。脱出できそうにない。

 一体どうすれば……。

 諦めるしかないというのか?

 いや、ここで諦めてどうする。

 頭を回せ。考えろ。カミラを見つけてすらいない。

 ……そうだ。

 転移魔法、カミラが連れ去られる前、丁度身につけようとしていた光の力。

 あれから、カミラを見つけることにばかり時間を割いて、自分の光の力をあまり磨いていなかったが、僕の、光となる者……つまり、カミラから遠いほど、転移魔法を使うのは難しいが、もし、ここの近くにカミラがいるのなら、使えるかもしれない。


「アイ オア オーカイ!」


 その瞬間、浮遊感を感じた。


 ★


 気が付くと、目の前には沢山の箱があり、その隙間から、手と足を縄で縛られたカミラと、2人の男がいた。

 僕の光の力はまだ未熟で、カミラから少し離れた場所に転移したが、逆にそれが功を奏した。

 丁度、沢山の箱が障害となって、僕の存在がバレていないようだった。

 沢山の箱の隙間から、カミラの周りを観察し始めた。


「……っう」


 殴られたお腹が痛む。

 駄目だ。集中しろ。


「よし、じゃあ、これを買い手の所に運ぶか」


「そうだな」


 男は腰のポーチから、鍵を取り出し、無理矢理カミラを檻の中に入れると、檻の鍵を閉めた。

 そして、男とカミラを入れた檻は移動を始めた。

 どうやら、カミラをどこかへ運ぼうとしているようだ。

 見ているだけじゃ駄目だ。ここでカミラを助けないと!

 そう思ったとき、ある不安が押し寄せてきた。

 もし、力が及ばなかったらどうなる?

 ……きっと殺されたりされるに違いない。

 そんな不安に押し潰されそうになったが、そんなことを考えて今、カミラを助けない方がきっと後悔する。

 時間がない。

 覚悟を決めろ。

 僕は走り出し、2人の男に目眩しの光の力を使った。


「アイ アエ オオ!」


「何だ!?」


 その光に驚き、2人の男は少しよろめき、そこで生まれた隙で、1人の男が腰のポーチから鍵を奪うと、鍵が奪われたことに気付いた2人の男は、俺を手で捕まえようとしてきた。

 しかし、その2人の男は目眩しの光の力の影響で、あまり、視界が良くなさそうだった。

 何とか2人から逃れて、隙を見て、2人の目の至近距離で目眩しの光の力を使った。


「アイ アエ オオ!」

 

「っく!」


「んな!」


 あれだけ至近距離で使ったから、あと5分は何も見えない。

 だが、あの2人は見えないながらも、僕の足音をたよりに捕まえようとしていた。

 そこで、辺りを左に右に移動して、隙をみて、こっそりと足音を出さないようにして、カミラの所へ向かった。

 カミラは驚いた顔をしたが、音を出してはいけないことは察せていたようで、何も音を立てなかった。

 そして、鍵穴に鍵を挿入させて、回したとき、ガチャリという音が響いた。

 その音に反応した2人の男は、音のした方に走ってきた。

 まずい、カミラを連れて、間に合うか?

 もう、魔力をかなり消耗していて、光の力を使うのが難しそうだった。

 そう思ったときだった。


「ぐお!」


「ぐは!」


 2人は目が見えていないため、ぶつかり、倒れた。

 チャンスだ。

 光の力を使って、エプロの所に転移魔法を使って行きたかったが、魔力が足りず使えそうにない。

 そのため、ここから、見つからないように脱出する必要があった。

 できれば、他の獣人の人達も助けたいが、リスクが大きすぎる。

 僕だけなら良かったが、今はカミラを助けたい。

 ごめん……。

 そして、申し訳ない気持ちがありながら、左へ行くか、右へ行くか少し悩んでいると。

 カミラが口を開いた。


「お兄ちゃん……左」


「え?」


「脱出する機会……伺ってた。大体、道、分かる」


 カミラはどうやら、攫われてからも、生きるために、いつか、ここから出られると信じて、今日まで、道をなんとか覚えようとしたりして頑張ってきたみたいだ。

 そのカミラの行動に救われた。

 そして、それから、カミラの指示通りに移動したところ、運良く、施設から出ることができた。

 だが、すぐにここを離れなければ。もう、カミラと僕が脱出したかもしれないことは、あの2人の男が伝えただろう。

 再開の感動を分かち合う暇は、今はなかった。

 向かうのは、ケルノ村の獣人の家。

 ここからメルカまでは魔物が多く、今の魔力のあまりない状態じゃ危険過ぎる。

 そのため、ここから近い、ケルノ村の獣人の家へと向かった。

 あの場所は、獣人以外には、見つかりにくいようにする魔法がかけられているし、強い獣人も何人かいる。

 サーベントに協力する住民は多いが、獣人の家まで辿り着くことができたらかなり安全だ。

 そう思い、がむしゃらに、走り始める。カミラの手をしっかり握って。


 ★


 そして、ようやく獣人の家に着き、中に入ると、ここの存在を教えてくれたスオリさんを見つけた。


「おぉ!シュウ!どうした!?」


「説明は……後で……ちょっと疲れた」


「大変だったんだな」


 そうスオリさんが言ったあと、獣人の家を案内され、獣人の家の人に自己紹介を終えると、ようやく、心が落ち着いた。


「あぁ、やっとだ……」


 そう俺が呟くと、妹の声が響いた。


「お兄ちゃん!」


 カミラは急に抱きついてきた。

 無理もない。2週間、ずっと心細かったのだろう。

 それに、僕も、いつの間にか、目から水を流しながら、カミラを抱き返していた。


「カミラ!」


 あぁ、これがカミラの温もりか。

 本当に温かい。

 あぁ、スオリさんに感謝してもしきれない。

 スオリさんは、獣人か獣人じゃないかを見抜くことのできる光の力を独自に編み出し、それを僕に使って、僕が獣人であることが分かると、知っている情報、獣人の家のことを教えてもらった。

 スオリさんがいなかったら、今頃、どうなっているか分からない。

 今後、どうやって恩返ししようか。

 いや、今は考えなくても良いか。

 取り敢えず、今は、カミラと無事に再会出来たことに喜ぼう。


「カミラ、おかえり」


「うん!お兄ちゃん!」

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