20.勇者の力と光の力
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ブルードラゴンに背中を引っ掻かれて倒れると、俺はいつの間にかメルノと会った場所にいた。
俺はまた死んでしまったのだろうか。
「光太郎さん、貴方に伝えなければならないことがあります」
俺は声がした方向に振り返る。
そこにはメルノがいた。
「話は長くなりますが、最後まで聞いて下さい」
突然の言葉に驚きつつ、俺はメルノの言葉を聞き始めた。
「メキバニアは私を含む5人で創った世界です」
「私達が創った当初は人間、獣人、魔物全てが同じぐらいの強さで、戦うことはあっても、小さなものでした」
「しかし、あるとき魔物の中に魔王という魔物の王が現れました」
「このときからこの世界の力のバランスは崩壊していきました」
「魔王ははじめに魔王の城を作りました。そして、この城の近くに魔物の訓練場を作り、多くの魔物を城の近くに集め、強制的に訓練させ、魔王軍を作りました」
「魔王軍は人間の住む場所を襲い、多くの命を奪っていきました」
「魔王の出現による力のバランスの崩壊を防ぐために魔王を私達の力で倒せば簡単に解決しますが、私達は直接世界に干渉することのないように決められていました」
「なので、この現状を人間と獣人の力を強くさせることで解決しようと思った私達は、獣人の光の力を大幅に強化し、人間の魔力を強化し『希望の光を放つ者、勇者なり』と書いた紙を添えて、空から勇者の剣をゆっくりと降らし授けました」
「そして、ある胎児に勇者の力を授けました」
「この勇者は生まれると同時に光を放ち、人々はこの子供に剣術を教え、10歳のときに勇者の剣を与えました」
「そして、勇者が15歳のとき、魔王軍と人間との大きな戦いがありました」
「しかし、勇者はこの戦いに敗北し、多くの人が亡くなり、勇者は悲しみました」
「魔王は、悲しんでいて隙のある勇者を見つけると、不意打ちを食らわせました」
「勇者はその攻撃をもろに食らい、魔王がもう一度攻撃しようとすると、仲間の獣人が私たちが『光の覚醒』と呼んでいる状態になりました」
「この状態では大量に体力を消費しますが、その分大幅に力が強くなります」
「仲間の獣人はこの力で魔王に深傷を負わすと、魔王は逃げていきました」
「それから、勇者が修行して1年が経過し、勇者は魔王城に攻め込みました」
「ここで勇者は炎が強力な黒龍と戦いましたが、勇者の力には炎が効かないという耐性があるので、力を温存したまま黒龍を倒し、魔王と対峙しました」
「魔王との戦いは接戦でしたが勇者が勝利しました」
この話……たしか、魔法道具店にあった勇者本に書いていた。
あれは、フィクションではなかったのか。
「それ以降、しばらくは人間と魔物との力のバランスは保たれました」
「しかし、勇者の力、魔王の力は引き継がれました」
勇者の力と魔王の力は引き継がれるということは、今後も魔王と勇者が現れ、魔王と勇者の関係が良くならないと魔王と勇者の対立は続くのだろう。
「そして、その勇者の力を受け継いだ者、それが今の貴方なんです」
少し、そう思っていた。
今までの話と勇者には炎が効かなかったことや、あの剣から『お前が勇者になるんだ』と聞こえたということから、俺は勇者の力を受け継いだのかもしれないと思っていた。
でも、俺はメキバニアの人間ではなかった、何故、俺は勇者の力を受け継いだのだろう。
「何で違う世界にいた俺に?」
「第2の魔王を倒した勇者はあまりの戦いの激しさにより、世界を越える時空の狭間が生まれました」
「そして、その時空の狭間が生まれるほどの激しい力のぶつかり合いの結果、第2の魔王と勇者は共に死亡しました」
「ですが、勇者の力は世界を越え、地球にやってきました」
「通常、違う世界にいったものは元の世界に戻すのですが、勇者の力はある胎児に宿りました」
「この勇者の力だけを取り除くことはできません。勇者の力は命と結びついているからです」
「そのため、勇者の力をメキバニアに戻すことはその胎児の命を奪うことを意味していました」
「ですが、私達は命を奪うという直接世界に干渉する行為は禁じられています。そのため、私達は命を奪ったりしませんでした」
そこまで言うと、メルノは一度、深呼吸をした。
俺が勇者の力を引き継いだということは……。
「……そして、その胎児が光太郎さんです」
やはり、俺だった。
「勇者の力は神力の高い者に結びつきます」
「神力とは神への近さを表す数値です。大きく変化することは滅多になく、魂の経験に応じて、神力が高くなったり、低くなったりします」
「そして、神力が特に高い者は天使となり、天使の中で神力の大きさにより、5級、4級、3級、2級、1級に分けられ、神力がある一定にまで達すると神になります」
「天使は皆、同じような姿で始めることで、身体性能の差に関係なく、神となる者を判断するため、そして、元々女性だった者の方が神力が高い傾向にあったため少女の見た目をしています」
「何故、こんな話をしているかというと、光太郎さんは天使になれるだけの神力を持っているからです」
そのメルノの発言に思わず素っ頓狂な声をもらしてしまう。
「え?」
「実際、最初の勇者は天使になる道を選びました。まあ、元々は男性だったので戸惑っていましたが」
「光太郎さんはまだ天使になるかどうかの選択をしません」
「天使になるかを選択するのは勇者の力が離れ、死んでしまったときです」
その言葉にひとまず安心する。
今はメキバニアでのことのみを考えることができることと、天使になるかどうかは選ぶことができることが分かったからだ。
「話を元に戻します」
「最初に光太郎さんが死亡したとき、勇者の力は地球に神力が高い者がいなかったため、貴方に結びついたままでした」
「そのため、光太郎さんには記憶を保持したまま転生するという選択肢を与えました」
「通常、記憶を持ったまま違う世界に転生するということはありません」
「ですが、勇者の力を持っていたため、例外として記憶を保持したままメキバニアに転生するという選択肢を与えると多くの天使との話し合いで決定しました」
「また、勇者の力を誰かに宿らせるために勇者の力を回収するためには生まれ変わる必要があったので、天使になるという選択肢は与えませんでした」
「そして、光太郎さんは勇者の剣に認められ、勇者となりました」
勇者の剣に認められる……おそらく、あの剣から『お前が勇者になるんだ』と声が聞こえたときに認められたのだろう。
勇者になったということは魔王を倒す役目があるのだろうか。
でも、俺はブルードラゴンも倒せないぐらい弱いし、魔王を倒そうともそんなに思わない。
「なので今回、勇者となった者のみにしか伝えることができない様々なことを伝えています」
「そして、光太郎さんに魔王を倒す義務があるのかといえば、実はありません」
その発言にまたしても素っ頓狂な声をもらしてしまう。
「え?」
「私達は何かを強制させたりするつもりはありません。あくまで、今までの勇者にあった魔王を倒すという義務は多くの人間によるものです」
それなら、魔王のことではなく、フリアとの獣人と人間の共存への道に力を入れることができる。
正直、かなり安心した。
「私達はほとんどを生み出すことで解決しようと考えています。直接メキバニアに干渉するのは神だけです」
「なので、大きなサポートはできません。まあ、少しサポートはしていましたが……」
少しのサポート?
特にサポートはあった記憶はない。
「その少しのサポートって?」
「言葉が通じるようにするサポートです」
「世界が違えば、当然言語も違います」
「では何故、会話ができていたのか?」
「実は、私の力で、違和感なく、日本語をメキバニアの言葉で話すように、メキバニアの言葉を日本語で聞こえるように、変えていたんです」
確かに、異世界であるメキバニアに言語が通じるというのは冷静に考えればおかしな話だ。
「例えば、佐々木光太郎という名前は、メキバニアの人には、コウタロー・ササキという名前で伝わっています」
そういえば、文字はどうなっているのだろう。
看板などは日本語で書いてた気がする。
「文字はどうなんだ?」
「文字も、光太郎さんが日本語を書くと、メキバニアの文字としてまわりは認識します。また、貴方はメキバニアの文字を日本語として認識します」
「このようなサポートはできますが、力を強化させたりはできません」
「光太郎さんが今後どうしていくかは光太郎さん次第です」
「ですが、魔王を倒すことを目指すかもしれないので、伝えなければならないことがまだあります」
俺はゴクリと唾を飲み込む。
「貴方は勇者ですが、メキバニアの住民ではないため、魔力がほとんどなく、戦闘の知識などもありません。なので、勇者の力を持っていても、現状、今までの勇者と比べて弱いです」
「そして、今の第3の魔王は今までの魔王と比べものにならないぐらい強いです。第3の魔王が本気でメキバニアを支配しようとしたら、1週間もかからずに支配できるほどの強さを持っています」
第3の魔王の強さに驚き、不安に思うのと同時に一つの疑問が出てきた。
何故、第3の魔王はそれほどの力があるのに、特に行動を起こさないのだろうか。
転生してから、第3の魔王の行動を聞いたりしたことはなかった。
「そんな魔王を今の光太郎さんが倒すことはほぼ不可能でしょう」
「しかし、今言ったのは現状のままの場合です。今まで誰もできなかった勇者の剣の真の力を解放することができれば、もしかしたら、第3の魔王を倒せるかもしれません」
勇者の剣の真の力の解放……どうすればいいのだろうか。
でも、俺は魔王を倒そうとはそんなに思わないし、一旦、考えなくてもいいだろう。
「私はあくまで傍観者、言語の不自由がないようにするぐらいしかできません」
「でも、私個人としては、どのような道に進んでも光太郎さんを応援していますよ」
メルノとは火事で俺が死んだとき、そして、今以外会ったことがない。
何故、俺を応援しているのだろう。
「それは何でだ?」
「何ででしょう?」
メルノは微かに微笑んだ。その姿にどこか懐かしさを感じた。
「さて、ここからは質問を受け付けます。勿論、答えられないものもありますが」
たくさん聞きたいことがある。
まずは光の力について聞こう。
「光の力って何なんだ?」
「光の力はカポーという植物をもとに私が作りました」
「私が光の力を作った頃は、人間は魔法が使え、魔物は多種多様な能力や秀でた身体能力がある中、獣人は魔法を人間と比べて使えず、人間とあまり身体能力に差がなかったので、獣人に光の力を与えました」
「カポーは小さな光の力を持っていました。カポーは枯れる直前に、種を空に飛ばし、大きな栄養となります。そして、この種も光の力を持っていて、カポーは光の力を持つものを引き寄せる性質がありました」
「この種は常に小さな光の力を使っている状態で、光の力にカポーが反応すると、黄色になり、栄養がカポーに渡ります。このようにこの植物は繁殖していきました」
「そして、私はこのカポーをもとに、獣人のみが使うことができる光の力を作りました」
「光の力は誰かへの気持ちによって発生するエネルギーで、このエネルギーと魔力を使って光の力特有の技を使うことができます」
「また、この光の力には特別な場合のみに使える技があります。その特別な技を使うとき、元からその技を知っていたかのように技名や使い方が頭の中に入ります」
「この力があったため、今までは魔物、人間、獣人の力のバランスを取れていましたが、今はこのバランスが崩壊しています」
なるほど、色々分かってきた。
次は何故、第3の魔王が行動をあまり起こしていないのかを聞こう。
そう思うと、この白い世界が揺れ始めた。
「そろそろ、時間のようです」
「それでは、貴方はもうすぐ目覚めます。貴方の未来に祝福を」
ちょっと待て、まだまだ聞きたいことが……。
そう思ったが、白い世界は崩壊していき、俺はいつの間にか気を失った。
★
そして俺は、病院のベッドの上で目を覚ました。
おそらく、さっきのは夢ではない。感覚がリアルすぎる。
そのことを実感すると同時に、俺は今後どうしていくのかなどを考えるのであった。
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