18.弱い勇者
剣から声が聞こえると、剣は光り出した。
その瞬間、誰かの記憶が流れ込んでくるのを感じた。
そして、俺は剣をブルードラゴンに向ける。
理由は分からないが、そうしなければならない気がしたのだ。
すると、ブルードラゴンは炎を吐くのをやめて、俺に向かって炎を吐いてきた。
「危ない!」
フリアが俺に向かって叫ぶ。
俺はその声を聞き、その攻撃を避けようとするが、足の速さは変わっておらず、その攻撃を食らってしまう。
しかし、その攻撃を食らっても、俺は傷ひとつ負わなかった。
おそらく、俺には炎が効かないのだろう。
そして、ブルードラゴンは炎の攻撃が無意味だということに気付いたのか、炎を吐くのを止め、腕を振り下ろしてきた。
俺はその攻撃を何とか寸前の所で避け、ブルードラゴンの腕を刺す。
「ブルウウウウウ!」
刺した所から紫色の血が出ると、ブルードラゴンは苦しみ出した。
「アエ オア ライキ イル!」
フリアがそう唱えると、光の剣が現れ、ブルードラゴンの腕を刺した。
「ブルウウウウウ!」
すると、ブルードラゴンが暴れ出し、危険だと考えた俺は剣を抜き、その場から離れ、フリアも同じようにその場を離れた。
そして、ブルードラゴンは暴れ回りながら空へ飛び、直径50cm程の炎の玉を口から出し、落とし始めた。
周りは逃げているが、人が多すぎて中々逃げることが出来ず、兵士が50人程しかいない。
そのような状況ではとても今いる全員を守れそうにない。
そんな様子を見て、フリアは唱える。
「アイ オア オフェロ イル!」
フリアは光の盾を出し、何とかブルードラゴンの攻撃から人々を守る。
俺のこの剣で誰かを守るのは出来そうにない。
だったら、することは1つだ。
俺は、もう1度剣をブルードラゴンに向ける。
さっきのことから考えるに、この剣を向けることで、ブルードラゴンの標的を俺に変えることができる筈だ。
そして、俺の考えどおりに、ブルードラゴンは降りてきて、俺に腕を振り下ろす。
俺はその攻撃を何とか避け、ブルードラゴンの腕をもう1度刺そうとしたが、ブルードラゴンは攻撃後すぐに飛び、尻尾を振り下ろしてきた。
俺はそれをギリギリのところで避ける。
尻尾が振り下ろされた地面は抉れていた。
こんな攻撃をまともに食らったら、ひとたまりもない。
だが、尻尾が地面にめりこんで、中々尻尾を地面から抜けだせてない、チャンスだ。
俺はブルードラゴンの尻尾に剣を刺す。
「ブルウウウウウ!」
ブルードラゴンの紫色の血が出る。
まだ、尻尾は抜けそうにない。
そう思った俺は、剣をブルードラゴンの尻尾から抜き、もう1度刺した。
「ブルウウウウウ!」
ブルードラゴンは前回の時より激しく暴れ始めたため、剣をブルードラゴンから抜き、その場から離れる。
ブルードラゴンは暴れながら、俺に炎を吐くが、俺には全く効果がない。
そして、ブルードラゴンは尻尾を地面から抜き、ブルードラゴンは爪に炎を纏わせて、フリアを引っ掻く。
フリアはその攻撃を光の盾で防ぐが、ブルードラゴンの攻撃で光の盾が壊れてしまった。
このままでは危ないと考えた俺は、剣をブルードラゴンの方に向ける。
「ブルウウウウウ!」
ブルードラゴンがすごい勢いで突進してくる。
「まずい、これは避けられな……」
そう言った時、フリアの大きな声が聞こえた。
「アイ オア オフェロ ウル!」
目の前には大きな光の盾があり、フリアが俺を守ってくれたことに気付いた。
「光太郎さん……もう魔力がほとんどありません」
俺のせいだ。
俺が、もっと考えていれば。
いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
このままじゃ、フリアに攻撃されたら、確実に食らってしまう。
だったら、俺が1人でブルードラゴンを倒さなければ。
「ブルードラゴン!こっちだ!」
そう叫びながら、俺は剣をブルードラゴンに向ける。
少し、光が小さくなってきたと思ったが、今はそんなことを考えている暇はない。
「ブルウウウウウ!」
ブルードラゴンは再び突進してくる。
今度は前より距離がかなり離れているため、避けられる筈だ。
そう思っていたが、ブルードラゴンは俺とは少し違う方向に突進している。
何かがおかしい。
そして、俺はとあることに気付いた。
「しまった!」
ブルードラゴンは俺を狙っていると思ったが、フリアの方へ攻撃している。
俺は剣をブルードラゴンに向けたが、ブルードラゴンはフリアに突進し続けていた。
フリアを庇ったら多分死ぬだろう。
だが、考えるより先に体が動いた。
「フリア!」
フリアを押す。
フリアは何とかブルードラゴンの攻撃に当たらないぐらいの場所まで移動した。
誰かがブルードラゴンを倒し、フリアが獣人と人間が共存できる世界にしてくれることを願うと、ブルードラゴンは俺の背中を鋭い爪で引っ掻いた。
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