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獣人と歩む異世界  作者: 佐々木ブルー
第一章 獣人との出会い
14/43

14.フリアの覚悟

「あ、忘れてた」


「何を忘れていたんだ?」


「いや、この剣を渡す時、特別な赤い水晶に手をかざして、光らないと渡しちゃいけないって記述があったんだ」


「はあ」


 俺は少しため息を漏らす。

 これでもし光らなかったら、この剣は貰えない。

 少し残念だ。


「その水晶はちょっと離れた場所にあるんだ」


「その水晶を取りに取りに行ってもらうから、すまないんだけど、あっちの席で待っていてくれないかな?」


「分かった」


「ありがと〜」


 ギルドマスターは近くにいたギルドの従業員らしき人の所に向かった。


「ダイノさん、悪いんだけど、赤い水晶を取りに行ってくれない?」


「いいっすよ」


 そうあっさり返答すると、ダイノと呼ばれた男はギルドから出た。


「それじゃ、あっちで待つか」


 そして、ギルドマスターの指定した席に座ると、フリアとちょっと雑談をして時間を潰す。


 ★


 そうして待っていると、160cmぐらいの身長で黒髪の獣人がギルドに入ってきた。

 あの人がギルドマスターの言っていた獣人だろうか。

 そんなことを考えていたら、ギルドマスターは黒髪の獣人に話しかけた。


「いつもは来ない時間帯だけど、どうしたの?」


「依頼の取り消しにきたんだ」


「そりゃまた何で?」


「実は、ブルードラゴンに橋を破壊されていたらしいんだ」


「そうなんだ、じゃあ冒険者カードを借りるね」


「ああ、頼む」


 ギルドマスターは紙を取り出し、冒険者カードをかざす。

 すると、紙と冒険者カードが青色に光る。


「よし、終了」


「それじゃあまた」


 黒髪の獣人がそう言うと、ギルドマスターは呼び止めた。


「あ、ちょっと待って」


「どうかしたか?」


「そこの2人が話があるそうなんだ。向こうの席で聞いてくれないかな?」


「まあ、暇だし良いが」


 そう言うと、俺達のいる方へ黒髪の獣人は来て、席に座った。


「2人の名前は?」


「佐々木 光太郎だ」


「フリア・オフェレです。貴方の名前は?」


「私はタイミ・フェイロだ」


 そうして自己紹介を終える。


「それで、話ってのは?」


 いよいよ、本題に入るようだ。

 何か有益な情報は得られるだろうか。


「貴方は獣人の差別を知っていますか」


 フリアがそう言った瞬間、タイミの雰囲気が変わった。


「ああ、勿論」


「私はその差別を無くす為に旅をしています」


「そこでここの獣人に話を聞いて、色々と知りたいんです」


「そうか。悪いが、お前達は諦めた方が良い」


 思ってもみない発言に少しの困惑する。


「どうしてですか?」


 フリアの声は震えていた。


「私はそんな世界が実現できるとはとても思えないからな」


 確かに、無謀な挑戦だとは思う。

 だが、俺としてはフリアの行動を尊重したい。

 そして、しばらく沈黙が続くと、タイミは口を開いた。


「お前と同じ、獣人の家出身だ」


「そう言えば分かるだろ」


 獣人の家ということは最初からこの獣人に対する差別のないこの町に住んでいた訳ではなく、差別を受けた経験があるのだろう。


「それに、具体的にどうやって差別を無くすんだ?」


「それは……まだ決まっていませんが」


「考えなしに無くすことが出来る何て理想論だ」


 悔しいが、事実だ。

 これといって何か良い方法は思いついていない。


「私は嫌というほど獣人差別を見てきた」


「だけど、この町は違った」


「あんな村とは違い獣人を快く受け入れてくれた」


「私は、この町で生きるって決めてるんだ」


 この人もフリアと同じように壮絶な人生を送ってきたのだろう。

 そう思うと、この人の発言がより重く感じた。


「お前も諦めた方がいい」


「いつの日か、痛い目を見ることになるだろう」


「お前もここで暮らした方がいい」


「それでも、私は!」


 これ以上言うと言い争いになりかねない。

 何か他のことを話そう。


「何故、獣人を差別する人が多いんだ?」


 タイミは呆れたような口調で話す。


「はあ、そんなことも知らないで、協力してたのか」


「いいか、メルカやケルノ村は3つある国の中で一番小さい『ノルメ』に属する」


「そのノルメの中で、獣人差別の酷い3つの村は、ジルノ村、ケルノ村、ロノ村はまとめて『ジケロ』と呼ばれている」


「獣人を差別するようになったのはジケロからで、獣人が勇者を裏切ったという噂が広まったことからだった」


 勇者というのは勇者本に出てきた人物だろう。


「最初は信じる人は殆どいなかった」


「だが、少しずつ、獣人は避けられるようになった」


「それは光の力を恐れる人が多かったことが原因だ」


「元々、ジケロに住んでいる人々は魔法の能力が低かった」


「また、ジケロには殆ど獣人がいなかったこともあり、獣人を話でしか知らない人も多かった」


「それもあってか、勇者を裏切ったという噂を何度も聞くと、光の力だけではなく、光の力を使える獣人自体に恐怖心を抱き始めた」


 地球でも未知の力は恐れられていた。

 もしかしたら、ジケロの人々と地球の人間は本質的には近いのかもしれない。


「そこで奴隷商は獣人を商売に使ったんだ」


「本来なら獣人が捕まえられる姿を見たら助ける人が多いが、ジケロではもう助ける人はいないと考えたのだろう」


「その予想は的中し、助ける人はいなかった」


 もし、ここで助ける人が多かったなら、獣人は奴隷にされることは少なかったかもしれない。

 だが、助ける人がいない奴隷は捕まえやすかったのだろう。


「ジケロにいる獣人は光の力を使えない者が多い」


「そのため、反抗することは出来ない者が多い」


「そうして獣人が捕まえられている内に獣人は弱いという認識が広まった」


「光の力が使えない獣人は一部の富裕層から需要もあり、奴隷として売るには打って付けだった」


 たとえ、奴隷を買っていることが発覚しても、権力で()み消されるのだろう。


「そして、奴隷商は生きたまま獣人を捕まえた者に20万クロイを与える制度を作った」


「獣人一体の相場が大体、100万クロイだ。奴隷商にとって多くの獣人を捕まえる方が稼げたのだろう」


「ジケロに住む人は貧しい暮らしをする者が多く、飢餓に苦しむ人も少なくは無かったが、奴隷商がその制度を作ってからは飢餓で死ぬ人が例年10分の1程度になった」


「そんなこともあり、国は目をつぶっていた」


 今まで、何故あんなに必死になって捕まえようとしていたのか分からなかったが、そういうことだったのか。


「そして、今に至る」


「私はこの町に来て驚いたよ」


「少し場所が違うだけで、獣人の扱い方が全然違うんだからな」


 この話でかなりの情報を手に入れた。

 だが、どうしてこんなに知っているのだろう。


「何でそんなに知っているんだ?」


「私の母、そして仲間達が教えてくれた」


「今となっては、生きているかも分からんがな……」


「私はそれでも……」


「頑張るだけ無駄だ」


 その言葉に反応し、少し怒りをあらわにする。


「別にそんな言い方しなくたって……!」


「この言い方じゃなかったら何だ、お前達に何ができる?」


「もういいんですよ、光太郎さん」


 フリアは諦めてしまったのだろうか。

 それとも、この話を無視するのだろうか。


「ほう、やっと諦める気になったか」


「いえ、諦めてません」


 フリアの声は力強かった。

 こんなフリアは今まで見たことがない。


「どうしてだ?」


「獣人への扱いは確かに変えるのは難しいのでしょう」


「ですが、私は約束したんです」


「約束?」


「はい、スオリさんという命の恩人に、人間と獣人が共存できる世界にすると」


 その言葉を聞くと、この前のフリアの過去の話を思い出す。


「誰と約束しようと、理想論なのは変わらない」


「そうなのかもしれません」


「でも、この命はスオリさんにもらった様なものなんです」


「光太郎さんも協力してくれているんです」


「もし、共存ができなかろうと、今苦しんでいる獣人や人間を一人でも多く救いたいんです!」


 いつの間にフリアはこんなに強くなっていたのだろう。

 フリアの話から覚悟が伝わってくる。

 俺もその覚悟に答えよう。

 

「俺もフリアと同じ意見だ。これからも共存の道を目指す」


「話にならん」


 タイミはそう言うと、ギルドから出た。

 タイミの話から、共存は難しいという現実を思い知らされたが、それ以上にフリアの覚悟を感じた。

 

読んでいただけただけで嬉しいですが、ブックマーク、評価、感想、レビューしていただけたらもっと喜びます!


あと、「佐々木ブルー@小説家になろう」でツイッターやってます!

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