12.魔法道具店と再会
ギルドから貰った報酬の半分、金貨15枚はフリアの腰にかけていた袋に、報酬のもう半分の金貨15枚はギルドから渡された小さな袋に入れたままで、俺のポケットに入れておくことにした。
「報酬が手に入ったことだし、少し買い物でもするか」
クエストを受けられるし、報酬も得た。
少しぐらい使っても大丈夫だろう。
「それなら、魔法道具店へ行きたいです」
特に行きたい場所もないし、フリアが行きたいのなら行こう。
「なら行くか。場所は覚えているか?」
「はい。こっちです」
俺はフリアの行く方に向かった。
★
しばらく歩いていると魔法道具店と思われる看板が見えた。
「ここが魔法道具店です。中に入りましょう」
普段のフリアと比べて積極的だ。
欲しいものでもあるのだろうか。
「ああ、分かった」
フリアが魔法道具店の扉を開けると、聞き覚えのある声が響いた。
「いらっしゃい!」
「ん?あれはもしかして……」
声の主は見覚えのある人物だった。
「おお、久しぶり、元気そうで何よりだ」
そう、魔法道具店の店主はダークベアに襲われて、冷静さを失っていた時に、助けてくれたダイコ・ジブルさんだ。
「この前はありがとうございました!」
この前は言いそびれていた。
「ただ眠っていることを教えただけだ」
それでも、あの状態の俺は冷静な判断ができていなかった。
この人のおかげで何も起きることなくフリアが目覚めることができた。
その事実は変わらない。
「まあ、もし、感謝の気持ちがあるなら何か買っていってくれ」
「あの、向こうの商品を見てきてもいいですか?」
「勿論いいぞ」
向こうの商品に何かフリアが気に入りそうなものがあったのだろうか。
多分、これが魔法道具店に来たかった理由だろう。
欲しいものがなかった俺は店内の商品を見ていると古そうな本が目に止まった。
「これは?」
「そいつは勇者本だな」
「勇者本?」
「ああ、昔、魔王を倒したといわれている勇者の逸話とかが載っている本だ」
「まあ、今でも魔王はいるんだがその勇者の時代の魔王は恐ろしく、毎日、何千人もの被害者が出ていたらしい」
勇者と魔王。
知らないことばかりだ。
値段にもよるが知っておきたい。
それに、もしかしたらフリアの話やこの町に像が建てられていたようにメルノに関係することが載っているかもしれない。
「で、それはいくら何だ?」
「金貨20枚だ」
金貨20枚!
つまりは20万クロイ!
フリアの持っている金貨と合わせれば買えないことはないが、大切な金貨の3分の2が無くなってしまう。
買わない方がいいだろう。
「勇者本は結構貴重品なんだ。これでも安い方なんだよ」
驚きが顔に出ていたのか説明された。
「さすがに無理だ」
「じゃあこれならどうだ?」
そうして渡されたのは2枚の紙切れ。
「それは?」
「勇者本が破れた1ページだ」
「勇者本はかなり昔のものでな、状態が悪いものが多いんだ」
「これなら1枚銀貨1枚で買えるぞ」
銀貨1枚なら買ってもいいだろう。
「そうだな、ここで会ったのも何かの縁だ。2枚買おう」
「毎度あり!」
俺は金貨1枚を出し、お釣りの銀貨8枚を袋の中に入れると早速読んでみた。
勇者が生まれる5年前、魔王が生まれた。
この魔王は魔物を統一し、人間の国を襲った。
人々は戦い、魔物を倒すが、魔王は逃げ、倒すことができなかった。
多くの命が奪われ、悲しみに包まれた。
そして、魔王は人間の強さを知り、魔物を統べた。
それから5年後、伝説に伝わる特徴と一致する勇者が誕生する。
小さな時から、剣術を学び、勇者の名に相応しい実力を身につけた。
勇者が15歳になった時、魔物の群れが人間達を襲う。
勇者は果敢に戦うが敗北。
そんな勇者を人々は助ける。
また、多くの命が奪われた。
勇者は1人では魔王に太刀打ちできないと考え、仲間を探す。
そこで、1人の獣人、1人の魔法使いを仲間にす。
勇者は魔王の不意打ちを受けた。
その時、勇者の仲間の獣人は神々しく光りて、魔王に深傷を負わす。
魔王は逃げ、仲間の魔法使いは勇者に回復魔法を使用す。
勇者は今回のことを反省し、修行する。
それから約1年後。
勇者は仲間と共に魔王城に攻める。
黒龍が襲ってくるも、勇者に炎は効かず、勇者は黒龍を倒す。
黒龍を倒すと魔王が現れた。
勇者は仲間と共に魔王を倒す。
人々は祝福し、勇者を称えた。
それから約100年後、第2の魔王が現れる。
四天王と呼ばれる魔物を従え、今も魔王城にて、魔物の頂点に君臨す。
勇者が無き今、第2の魔王を倒すことはできるのだろうか。
なるほど、勇者は火が効かず、黒龍を倒し、仲間と共に魔王を倒した。
その後、勇者は死亡し、第2の魔王が現れたのか。
勇者の話に出てきた獣人、魔法使いは何者だろうか。
何故、そのような話が勇者本となり、残っているのか。
そもそも、勇者とは何だ。
そもそも勇者は本当にいたのだろうか。
今の魔王は第2の魔王なのか、それとも違う魔王なのか、そう疑問に思っていると、俺とは別の商品を見ていたフリアが何かを持ってきた。
「光太郎さん、光太郎さん、これを買ってもいいでしょうか?」
フリアが持っていたのはピンクのデイジー?のキーホルダーのようなものだった。
この世界にもデイジーはあるのだろうか。
「ああ、勿論。フリアの力で得たものだ」
これが魔法道具店に来たかった理由だろうか、聞いてみよう。
「フリアはこれが買いたくてここにきたのか?」
「これは、スオリさんが好きだった花なんです。この前見かけた時、買いたいと思っていたんです」
スオリさんはこのキーホルダーの花が好きだったのか、花言葉は……えっと何だっけ、忘れてしまった。
「ダイコさん、これ買います」
「銀貨1枚となります」
フリアは元々持っていた銀貨1枚をダイコさんに渡した。
「毎度あり!」
「フリア、他に欲しいものはあるか?」
「特にないです」
「そうか」
俺も特に買いたいものはない。
今日はもう他に買うものはないだろう。
「それじゃあ、さようなら。また来るよ」
「おう、10時から18時は基本営業してるから」
俺はダイコさんに手を振り、魔法道具店から出た。
また、機会があれば来よう。
さて、次はどこへ行こうか。
「フリア、他に行きたい場所はあるか?」
フリアは少し悩んで口を開く。
「場所ではないですが、この町の獣人に会ってみたいです」
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