11.ギルドと冒険者登録
「やったぞ!あの子がブルードラゴンを追い払ったんだ!」
祈ってすぐに聞こえた。
これは、獣人であることがバレていないのか、それとも獣人に寛容なのかどっちなんだ。
そんなことを考えているととある兵士がフリアに話しかけた。
「名前は何ですか?」
「フリア・オフェレです」
「そちらの方は?」
予想外の質問に驚きながら答える。
「佐々木 光太郎だ」
「ありがとうございます、ギルドから報酬が出されると思いますので明日の昼、12時頃にここに来て下さい」
兵士はそうフリアに伝えるとどこかへ行ってしまう。
そして、フリアが話しかけてくる。
「えっと、光太郎さんどうしますか」
どうするか、もし捕まえられたり、襲われたりとかがないなら明日行くが、そうでないならこの場を離れた方がいいだろう。
そう悩んでいると次は中年の男がフリアに近付いてくる。
もしかして、獣人であることがバレたのか?
「ありがとう、獣人の嬢ちゃん」
獣人であることがバレている!
いや、これは大丈夫なのか。
ケルノ村の人のように獣人を差別しているなら感謝の言葉は言わないはずだ。
「フリア、どうやら獣人に寛容というのは本当のようだな」
そうフリアに言うとフリアが泣いていることに気づいた。
「泣いてる!?」
何か泣かせるようなことしたっけ?
してない……よな?
「ど、どうしたんだ?」
「いえ、本当に獣人に寛容であることが分かると嬉しくて」
よし、何かやらかした訳ではないようだ。
「ああ、それならよかった」
フリアの努力が少し報われたようで良かった。
今日ぐらい、少し贅沢したって大丈夫だろう。
「それじゃあ、報酬が出るみたいだし、今日は疲れた。宿屋に泊まろう」
「そうですね。私も疲れました」
そりゃ疲れただろう。あんな凄い光の力を使ったんだから。
★
宿屋にて、俺たちは2000クロイを支払い泊まる。
「そういえば、ダークベアが襲ってきた時何で光の力を使わなかったんだ?」
「ダークベアに光の力が効かないからです。ダークの名がつく魔物に光の力は効きません」
それは厄介だな。もし、今回いるか分からないが、ダークドラゴンみたいなやつが襲ってきていたら、俺たちは殺されていたかもしれない。
「なるほどな。じゃあダークの名がついている魔物に気をつけないとな」
そうフリアに言うと、ふと時計が視界に入った。
時計は11時を指している。
「それと、もう11時だし、寝ようか」
「そうですね、明日、ギルドに行く用事もできましたし」
部屋の明かりを消し、フリアに言う。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
おやすみ、と言ったが、寝れそうにない。
何故、ダークと名につく魔物には光の力が効かないはずなのにスオリさんの使った光の力でダークベアを追い払うことができたのだろうか。
昨日はあまり考えなかったが、メルノとメルカの関係、そもそもメルノという天使は何なのか。
謎は深まるばかりだ。
今考えても仕方ないのは分かっているが、つい、考えてしまう。
そうして、悩んでいるといつの間にか眠った。
★
翌日、俺はフリアの声で目覚める。
「起きてくださーい!光太郎さん!」
寝過ごしてしまったのだろうか。
「今何時だ!?」
「10時半です」
「今からなら間に合いますよ」
「あ、ああ、すぐに準備する」
少しホッとし、急いで準備をしてギルドに向かった。
★
体感で1時間ほど少し早めに歩くとギルドが見えた。
おそらく間に合っただろう。
少し緊張し、俺達はギルドの中に入る。
ギルドに入ると、受け付けらしき女性の人が声をかけてきた。
「話は伺っております。こちらにどうぞ」
言われたとおりに椅子に座ると、袋が渡される。
「こちら、報酬の金貨30枚です」
そういえば、金貨ってクロイで表すとどれくらい何だろう。
フリアに小声で尋ねる。
「フリア、これは何クロイなんだ?」
「金貨1枚で1万クロイ、銀貨1枚で千クロイ、銅貨1枚で百クロイです」
ということは30万クロイか。
「えっと今いいですか?」
話をさえぎってしまっていたのか、申し訳ない。
「あ、ああ、悪い、悪い」
「そんなに強いなら冒険者登録しませんか?」
「冒険者登録?」
一体それは何だろう。
「はい、冒険者登録をすることによって魔物を討伐するクエストを受けることができ、クエストを達成することでお金が貰えます」
それならお金に困った時に稼ぐことができる。
また、フリアに頼ってしまいそうだが冒険者登録をして損はないだろう。
「フリア、またお金が減った時に稼ぐ方法があった方が良いだろう」
「そうですね、この町は獣人に寛容なので冒険者登録しましょう」
「それでは、冒険者登録を行います」
一体何をするのだろうか。
「今から出す水晶に手をかざすことで能力を測定し、ランクを決めます」
「冒険者のランクは分かりますか?」
フリアにこの前、教えられた時のことを思い出し、返答する。
「ランクってのはブロンズとかシルバーとかのやつか」
「そうです」
「フリアさんは?」
「はい。分かります」
「それでは能力測定を始めます」
そう言うと受け付けの人は箱から水晶を取り出し、置いた。
緊張する。
「それじゃあこの水晶に手をかざして下さい」
フリアは言われたとおりに手をかざす。
「え~フリアさん力D、魔力C、防御力C、素早さC」
「シルバークラスの冒険者となります」
シルバーということはブロンズの一つ上だ。
俺は、ブロンズの冒険者の素質すらあるのか怪しい。
頼む、せめて、ブロンズの冒険者にしてくれ。
さっきより一層緊張する。
「それではそちらの方もどうぞ」
目を閉じ、手をかざす。
「ん?反応しない!」
受け付けの人の声に少し驚き、目を開ける。
「ちょ、ちょっと待って下さい」
もしかして、俺には冒険者の素質はなかったのだろうか。
受け付けの人は誰かを呼びにいった。
「ギルドマスター!」
「なんだい、僕は眠たいんだけど」
そう気だるそうに現れたギルドマスターと呼ばれた人の身長は大体160cmぐらいの10代後半の見た目をした女性だった。
「そ、それが水晶が反応しないんですよ」
「見間違いじゃないの?」
「と、とにかく来て下さい!」
「わ、分かったよ。行くから」
「え〜と水晶が反応しないのはどっちだい?」
「こちらの方です」
「それじゃあ水晶に手をかざして」
改めて水晶に手をかざす。
「うっわ本当だ。え〜何で?今までこんなことなかったのに」
「どんな人間でもEランクは出るだけどな〜。というか、どんなに弱かったとしてもEランクの下はないんだけどな〜」
俺が転生したことと関係があるのだろうか。
俺が転生したことを伝えたら分かるかもしれないが、黙っておこう。
「結局、冒険者登録はどうなるんだ?」
「えっと、申し訳ないんだけど能力が分からないから冒険者登録はできないんだよね」
それは困る。
できればフリアと一緒にクエストを受けたい。
「そんな、どうにかならないのか?」
「ん〜そうだな、あっそうだ。君とそこの獣人の人は仲間だよね?」
「そうだが?」
何か解決策があるのだろうか。
「それなら、冒険者登録はできないけど冒険者仲間としてならクエストを受けられるよ」
「冒険者仲間ってのは?」
「一人ではクエストを受けられないけど、誰かの冒険者に冒険者仲間として登録して、冒険者仲間として登録された人が了承したらその人と同じクエストを受けられる制度だよ」
その制度なら一緒にクエストを受けられそうだ、良かった。
「そこの、え〜と名前は?」
「フリア・オフェレです」
「そこの君の名前は?」
「佐々木 光太郎だ」
「フリアさんが光太郎さんを冒険者仲間として登録するなら、一緒にクエストを受けられよ。今、冒険者仲間として登録する?」
フリアがいいなら、冒険者仲間として登録してほしい。
「えっと光太郎さん、それでいいですか?」
「もちろんいいぞ」
「それじゃあ、登録するから待っててね」
そうして待つこと10分。
「登録完了!はい、これ冒険者であることを証明するカード、無くさないでね、再発行めんどくさいんだから」
「仕事したら眠たくなってきちゃった。おやすみ〜」
のんきな人だと思ったが、冒険者仲間として登録してくれたことを考えたら、ありがとうという気持ちの方が強かった。
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