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獣人と歩む異世界  作者: 佐々木ブルー
第一章 獣人との出会い
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1.転生

 苦しい、苦しい、苦しい。

 息が出来ない。

 嗚呼、そうかこれが死か。

 妹を守ることが出来たし、こんな終わりもそんなに悪くはない。

 ただ、もう少し生きたかったな。

 もう、意識が……。

 そうして、俺は目を閉じた。


 ★


 気が付くと、苦しさは消えていた。そして、目を開いて見渡すと、辺りは霧がかっていて、柱の様なものが幾つか立っているだけで他には何もない。

 ここは所謂(いわゆる)あの世というやつなのだろうか。


佐々木 光太郎(ささき  こうたろう)さん、18歳。火事に遭い、妹を助けるが、一酸化炭素中毒にて死亡」


 後ろからそんな少女のような声が聞こえる。

 声が聞こえた方に振り向くと、白い翼を生やした少女が立っていた。


「私は、3級の天使メルノ。貴方を導く者です」


 天使ということは、本当に俺は死んでしまったのだろう。

 俺は今後、どうなるのだろうか。


「貴方の人生は終わりです。18年の短い人生、どうでしたか?」

  

 どう、と聞かれると答えづらいが、俺はそこそこ幸せだった。


「短い人生だったけど、それなりに幸せでした」


 俺のその返答を聴き、メルノは微笑むと、一度深呼吸して尋ねてくる。


「さて、ここからが本題です、貴方には2つの道があります」


 2つの道、とは一体何なのだろうか。


「1つ、地球に生命として生まれ変わる」


「2つ、地球とは別の世界、『メキバニア』に転生する」


「どちらがいいですか?」


 メルノは問いかけてくる。

 さて、どうしたものか。

 というか、信じられない程冷静だな。

 普通、死んだとなったらこうも冷静ではいられないだろう。

 別に俺はとても冷静なキャラって訳でもない。

 まあいい。

 地球に生命として生まれ変わるってことは一から何かしらの生き物になるってことだと考えられる。

 そして、メルバニアに転生するってことはよく本とかである異世界とやらに行くということだろう。


 そこで2つ疑問が出て、メルノ質問する。


「生まれ変わりや転生をしたら記憶ってどうなるんだ?」


「生まれ変わった場合、記憶は消えます。転生する場合は記憶は保持したままです」


 なるほど、それなら……。


「メキバニアへの転生にします」


 忘れたくない記憶が沢山あるし、異世界転生というのもなかなか面白そうだ。


「それでは、良い転生を」


 そんなメルノの声を聞くと眩い光に包まれた。


 ★


 光が収まると、そこは高原で、メキバニアに転生したことを自覚する。

 そして、さっきまでの冷静さが嘘だったかのように消える。

 訳が分からない。急に死んだって告げられて、挙げ句の果てにこんな訳の分からない世界に飛ばされて、いやまあ転生を選んだの紛れもない俺なんだけども。

 まって、本当に理解が追いつかない。

 何であの天使と話している時あんなに冷静でいられたの?

 そもそも天使って何?

 メキバニアって何?

 疑問を挙げればきりがない。

 そんなことで悩み、一人(うずくま)っていると


「大丈夫ですか?」


 という声が聞こえて顔を上げる。

 視界に入ったのは緑の帽子をかぶった少女だった。


「大丈夫じゃないです!」


 何を言ってるんだ俺は馬鹿か。


「あの私で良ければ話聞きますよ? 別にお金を取ったりはしません」


 予想外の言葉に驚く。

 こんな優しい人がいるのか。

 しかし、騙されている可能性もある。

 昔、沢山の嘘をつく人を見ている内に、目を見ると嘘をついているかがある程度分かるようになった。

 嘘はついていないだろうけど、若干の罪悪感を感じながら目をじっと見る。

 だけど、騙されているかもなんて喜憂だった。

 この子の目はとても綺麗で、嘘をついているようには思えない。

 そうして、安心し、話を聞いてもらうことにした。


 ★


 その中で場所を移動し、ケルノ村というところのベンチらしきものに座って話し始める。

 けれども、異世界から来た何て言っても信じられないだろうし、この世界について当たり障りのないように尋ねるぐらいだった。

 話の中で得た情報はあの子の名前はフリアで、16歳だということ、この世界には魔法なるものがあること、魔物という存在がいること等だ。

 魔法があったり、魔物がいたりするのは流石、異世界だと思う。

 そして、フリアのあまりの優しさに一つ疑問に思い尋ねる。


「ありがとう、ところで、どうしてそんなに親切にしてくれるんだ?」


 普通、赤の他人にここまで優しくはしてくれないだろう。


「えっと、それは私の恩人に『困っている人は助けなさい』って言われたから」


 なるほど、良い言葉だ。

 それに、その言葉を大切にしてくれるフリアの気持ちが何より良い。

 こんなにも色んなことを教えてくれたんだ、何も持ってないから特に何もできないけれど、感謝の気持ちは伝えよう。


「色々教えてくれてあり……」


 そう言いかけたところで強めの風が吹き、フリアの緑の帽子が外れると、犬のような耳が露わになる。

 近くにいた大柄な男はそれを目撃すると


「獣人だ! 捕まえろ!」


 と叫んだ。

 今の一瞬に一体何が起こったのだろうか。

 正直、とても怖い。獣人というものがこの世界でどんな存在なのかも分からない。

 ただ、こんなに親切にしてくれた子にするべきことは決まっている。


「フリア逃げるぞ!」


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