3
外に出ると、忌々しいほどに澄んだ青空が広がっていた。
眩しい日差しに顔をしかめ、額に手をかざして頭上に目をやる。キリクはこんな風に燦々と陽光が照りつけるような真っ昼間が嫌いだ。
──何もかもを、白日の下に晒してしまうような。
ふ、と小さく息をついた。
ニーアのところに行った後のキリクは、必ず精神的に少し不安定になる。黒く蠢く感情が内側を蝕んで、キシキシと嫌な音を立てながら心を軋ませていくのが、自分でも判るほどだ。
思考を切り替えなければ、と目を閉じて、今度は意識的に大きく呼吸をした。
いつもの顔を保って、いつも通りに振舞うのだ。誰にも、何も悟られないように。
「穏やかに微笑んでいるように見える」顔は、キリクがこの数年間で死に物狂いで身につけた仮面だった。その下にあるキリクの思い、キリクの恨み、キリクの激情を、決して他人に見せないために、怒ることも泣くことも、余分なものをすべて覆う仮面。
だから、昼間が嫌いなのだ。隅々まで眩しい光で浮かび上がらせてしまうこの場所では、キリクが隠しているもの、誰にも見せないようにしているものまでを、否応なく暴かれてしまいそうな気がする。
……きっとカイトなら、暗い夜よりは明るい昼のほうがいいに決まってるじゃないか、ときょとんとしながら疑いもなく言い切ってしまうのだろうけれど。
キリクは嫌いなのか、なんで? と本気で不思議そうに聞いてきそうなあの顔を思い浮かべたら、なんとなく少し気が楽になって、くすっと笑うことが出来た。単純は単純なりに、役に立つこともある。
しなければならないことは、たくさんあるのだ。こんなところで立ち止まっている場合じゃない。
そう──差し当たっては、目前の茶会をどう乗り切るかだ。
そこに至って、ようやくキリクは普段の平常心を取り戻せた。先程まで顔を占めていた影を消し去り、現実的な方向へ向けて考えを巡らせる。
ギリギリにはなるが、当日に着るものについては大丈夫だと見ていいだろう。小物はこれから揃えるとして、あと必要なものは……
女性の手、か。
なにしろドレスというものは、往々にして一人ではなかなか着られない構造になっている。クーは今までそういうものを身につけたことがないだろうから、なおさら困惑するはずだ。
どう考えても、着付けのために女性の手伝いが要る。後ろで適当に括ってあるあの赤毛も綺麗に纏めて飾らなければならないし、化粧だって道具はあってもそれを使いこなせる人間がいなければどうにもならない。
キリクはかなり器用なほうなので、髪も化粧も、やってやれないことはない。女性のドレスの造りもおおむね理解しているから、着付けを手伝ってやってもいいのだが、クーはたぶん、全力で拒否するだろう。
「女官か……」
そう呟いて、キリクは神殿へ向かって足を動かした。
***
女官と言っても、他の神女候補のように個人付きの女官を今から探すわけにもいかないので、神殿付きの女官の手を借りる、というくらいが精一杯だろう。
神殿付きの女官とは、神官たちや司教の身の回りの世話全般を請け負う女性たちのことを指す。ある程度位階が高く、教養や礼儀作法なども求められるので、それに伴って気位が高い場合がほとんどだ。
大した仕事はしていないのだが、神殿勤めという肩書は、パレス外の神民にとって相当上のステータスを付与してくれる。本人にとっても家族にとっても誉れだという職なので、一度神殿付きの女官になったらなかなか辞める者はおらず、従って結構年齢層が高い。
その中で、若い女官が確か一人いたはず。
二十歳前後、というところだろうか。以前からキリクが目をつけていた彼女は、まだ神殿に来てさほど長くないのか、至らないところもいろいろとあるようで、そのたび年嵩の他の女官たちに叱られることも多いようだった。
叱責を受けている現場を目撃したこともある。彼女は表面的にはうな垂れて従順に返事をしていたが、その拳はぎゅっと握りしめられているのが見て取れた。
耳は赤く染まり、先輩女官が立ち去るとすぐに上げた顔は大きく歪められ、ぎらぎらとした光を放つ眼は遠くなる背中をずっと睨みつけていた。
反省よりも怒りが前面に出る程度に自尊心が強く、自身の矜持を傷つける相手を憎まずにいられない。向上心があるというよりは自分を見下す誰かがいることに我慢がならない──そういう性格であろうと推測される。
どうせなら、彼女のような女官のほうが扱いやすい。
「やあ」
神殿に到着して、まずはその女官を探した。神官の部屋から出てきた彼女を見つけ出し、微笑を浮かべながら声をかける。
「…………」
長い髪を後ろで緩く束ね、すらりとした裾の長い衣服をまとった女官は、足を止めて、迷ったような間を置いてから、軽く頭を下げた。
手には今しがた替えたところなのだろうシーツを持っているが、もちろんそれを洗濯したりするのは彼女の役目ではない。女官は食事を運んだり神官らの衣装を整えたりするのがおもな仕事で、基本的に決して自分たちの手を汚すようなことはしないものなのだ。
楚々とした動きで済むことばかりだから、このような艶のある上等な服を着ていても、なんの問題もない。はっきり言って個人の能力が求められるものでもないので、神殿付きの女官は、位階と見た目重視で選ばれることが大半だ。
「君に頼みたいことがあるんだけど」
キリクの言葉に、女官は警戒するように眉を寄せ、半歩後ずさった。
女官たちの間でも、棄民出身の神女候補の話題はさぞかし悪意を盛られて囁かれていることだろう。その神女候補の衛士となっている男二人についてもだ。
今の彼女がそこまで露骨に嫌悪を表に出さないのは、キリクが第三位神民であることを知っているからで、呼びかけたのがカイトだったら、足すら止めなかったに違いない。
女官が返事をしなくても構わず、キリクはさらに笑みを深めた。
「もうすぐ神女候補同士のお茶会が開かれるのは知っているだろう? 知っての通り、僕らがお守りしている神女候補は神都に来られたばかりで、未だ彼女付きの女官が決まっていない状態なんだ。けれどなにしろ、男だけでは不如意なことが多くてね、茶会のための準備もままならない。そこで、どうかな、君に──」
「お断りします」
若い女官は、キリクの台詞が終わりまでいかないうちに、固い口調ながらきっぱりと拒絶した。ほっそりと上品な容貌には、冗談ではない、というような怒りと反発心が乗っている。
「もちろん、お礼はするよ」
「そういう問題ではありません」
「じゃあ、どういう問題なんだろう」
「どうもこうも、あんな──」
そこで彼女は言葉を呑み込んだが、蔑むようなその眼差しが、あんな棄民に触れるのも嫌だ、ぞっとする、と口よりも雄弁に語っていた。
「れっきとした神民である自分が、棄民の娘にへりくだるような真似が出来るはずがない、かな?」
キリクが代わりに言ってやると、女官は不愉快そうに唇を曲げた。
「正直申し上げて、理解できません。なぜ、キリクさまのような身分の高いお方が、あのように汚らわしい棄民などの護衛の任に就いておられるのか」
汚らわしい、ときたか。
本当に正直すぎる返答に、思わず失笑が洩れる。
教養はあるのかもしれないが、彼女は迂闊で浅はかだ。経験を積んだ女官なら、同じ断るにしても、のちのち問題とならないように上手に本心を包み隠して言葉を選ぶものだが。
「僕は衛士としての本分を尽くすまでのことさ。君も神殿付きの女官なら──」
「どうぞ、他の女官にお頼みくださいませ。わたくしは多忙なので、これで失礼いたします」
つんけんした険のある口調で一気にそう言うと、女官は手に持ったシーツを抱え直し、キリクの脇を通り過ぎようとした。
素早く片手で壁を突き、行く手を塞ぐ。
「な……」
失礼な、と文句を言おうと開きかけた口は、いきなり間近にまで迫った顔を見て、そのままの形で止まった。
薄っすらと微笑むキリクの金色の目の怪しい光に、息を呑む。
「──君さ、もうちょっと利口になったらどう?」
ひややかな声でそう言うと、女官は顔を強張らせた。
一変したキリクの雰囲気に当惑しているのか、背中をまっすぐにしたまま棒立ちになっている。こちらを見返す彼女は、怒りと怯えが互いにせめぎ合っているような目をしていた。
「な……なに、を」
「君はまだ若いし、経験も浅い。他の女官たちに侮られることも多いんだろう? 彼女らの鼻を明かしてやりたいとは思わない?」
「鼻を明かす……?」
眉をひそめて問い返す彼女に、キリクはもう一段階、声の音量を下げた。
「神女候補は五人。このうち本当の『神女』になれるのは四人だ。その四人は誰なのか、今のところはまだ何者にも判らない。教皇でさえ、ね。あの棄民の娘は、その四人のうちの一人かもしれないんだよ」
「棄民が選ばれたのは何かの間違いだと……」
「あるいは、偽物だと? いいや違うね、水晶は間違いなく彼女を示した。僕はそれを知っている。だから衛士になるのを自ら志願したんだ」
「…………」
「五人のうち、誰が弾かれるのかはまだ判らない。でも、神女になった者には、これから破格の待遇が与えられる。なにしろ、教皇と同様、『位階のない』存在になるんだ。女神の力の一部を受け取った神女の傍に仕えるのは、さぞかし気分のいいものだろうと思わないかい? 神殿付きの女官なんて、比較にもならない」
「…………」
女官がごくりと唾を飲む音がした。
キリクはさらに彼女の耳に自分の唇を寄せて、囁いた。
「棄民は棄民さ。そんなことは僕だって判ってる。でもだからこそ、そこが狙い目だとは思わないか? 彼女にはまだ味方がいない。周囲がみんな冷淡な中、少しでも親切にする人間がいたら、そちらに倒れ込むようにして頼りきる。今のうちに恩を売っておけば、のちにそれが数十倍にもなって返ってくるだろう。何も知らないからこそ、他の神民の候補たちと違って、自分の意のままに操れる隙がいくらでもあるんだ」
女官の目が宙に据えられた。
そこに今、映っているものは何なのだろう。近い将来やってくるかもしれない、自分の輝かしい姿か。
神女の最も近くに侍り、信頼される、ただ一人の女官。
現在、自分を叱責する女官たちは、誰もが羨望の目を向け、頭を下げることになる。
「棄民だ神民だと、つまらないことにこだわって、みすみす目の前の絶好の機会を見逃すなんて馬鹿げてる。この際、君も賢く立ち回らなければ駄目だよ。いずれ他の女官たちだって、同じことを考えるようになるかもしれない。その時になって地団駄踏んでも、もう手遅れだ」
「…………」
女官はしばらくその場にじっと立ち尽くしていたが、やがて、ぎぎぎと音が鳴りそうなほどにぎこちなく、ゆっくりと首を縦に振った。
「──お手伝い、させて、いただきます」
「そう」
キリクはにっこりして、壁から手を離した。
傾けていた上体を元に戻して、何事もなかったかのように、「じゃ、頼むね」とぽんと軽く女官の肩を叩く。
「君、名前は?」
「……マレ、と申します」
「マレ、僕らの大事な神女は、クーという。じゃあよろしく」
踵を返して歩き出すと、その背中に、「──あの」と掠れた声がかけられた。
うん? と振り返ると、女官が何か得体の知れないものを見るような目をこちらに向けている。
「キリクさまがあの神女候補を守っておられるのも、あれこれ気配りをされているのも、優しく笑いかけていらっしゃるのも、すべてご自分のため、だけなのですか」
キリクは微笑した。
「僕は、いつだって自分のことしか考えていない人間だよ」
***
クーの部屋を訪れ、ノックをしてから扉を開けると、途端に賑やかな声が中から飛び出してきた。
「だから、寝るなって!」
「寝てないよ。しょうがないだろ、欠伸が出るもんは。退屈なんだからさ」
「なお悪いんだよ! なにが退屈だ、俺がこんなにも一生懸命説明してるのに! ちゃんと今までの話を聞いてたか?!」
「聞いてた聞いてた」
「じゃあ言ってみろ」
「万人を睡眠へと引きずり込む呪文」
「やっぱりぜんっぜん聞いてないじゃないか!」
何をしているのかと思えば、丸テーブルの上には、やけに分厚い本が何冊も積み重なっている。どうやらカイトがクーに何かを教えていたらしい。その努力はまったく実を結んでいないようだが。
「……珍しいね、二人で勉強とは」
クーがどうなのかはよく知らないが、カイトがそちら方面に興味を示すとは珍しい。キリクの知る限り、彼が自主的に本を開いているところにお目にかかったことは一度もなかった。
二人はその時になって、やっとキリクが部屋に入ってきたことに気づいたらしい。そりゃ、あれだけがあがあと喧しくやり合っていたら、ノックの音など聞こえなかっただろう。
クーとカイトは同時にこちらを見て、同時に口を開いた。
「キリク、おかえりー」
「おう、おかえり」
「…………」
──「おかえり」って、なんだ?
当たり前のように二人の口から出てきた言葉に戸惑ってしまう。それは果たして、今のこの場所と状況に合ったものなのだろうか。ここはクーが寝起きする部屋というだけであって、それ以外の意味はないはず。
少し考えて、キリクは結局その問題を放棄することに決めた。カイトとクーのものの見方が自分と違っているのは、別に今にはじまったことではない。
「それにしてもずいぶん、いろんな本が……」
テーブルの上に積んである本を一瞥して、首を傾げた。
歴史あり、芸術あり、娯楽小説あり、とジャンルがまったく別で、しかも統一テーマもなくバラバラだ。一体これらから何を学ぼうとしていたのか知らないが、これではかえって何ひとつ頭に入らないだろう。
「いや、女性の茶会っていうのは、どんなことを話すものなのか、俺もよく知らなくてな……とりあえず、どんな話題を振られても困らないようにと思って、あれこれ本を集めてみたんだが」
「ははあ……」
少し複雑な気分になって、顎の先をこりこりと指で掻く。
カイトがどんな「お茶会」を想像しているのかはなんとなく判るし、出来るだけクーが恥をかかないようにという、彼の気持ちも努力も理解はするのだが。
……正直言って、そんな和やかな話で盛り上がるような、可愛らしい茶会にはならないと思うんだけどな。
思ったものの、それを外に出すのはやめて、キリクは口を噤んだ。今からカイトの心配を増やしても気の毒だし、第一、面倒だ。
クーのほうを窺うと、やっとうるさい講義が終わってせいせいしたとでもいうように、ううーんと伸びをしていた。
しょうがないからカイトに付き合ってはいるが、茶会なんて心底どうでもいい、と考えているのがよく判る。
「……それで今は、どんな話を?」
笑いそうになるのを堪えながら訊ねると、「アリアランテに伝わる神話」という答えがカイトから返ってきた。なるほど、それはクーが退屈するはずだと納得する。
彼女はそもそも、女神リリアナに興味がない。自分は棄民なのだから関係ない、という考えは、大木なみにしっかりクーの中に根を張って、この神殿に来てもなお、びくとも揺らぐ気配がなかった。
それなのに女神崇拝のための神話を聞かされたって、面白いはずがない。どう考えても、カイトは選択を誤っている。
本から知識を得るのは悪いことではないので、他にもっと有意義なものを──と思いながら、気がついた。
……他には、歴史と芸術と娯楽小説。
アリアランテの歴史は、要するに「棄民が虐げられ、搾取され続けてきた歴史」だ。
芸術というのは、余裕があるからこそ生まれ、発展していくもの。
そして娯楽小説では大抵、棄民は「存在しないもの」のように扱われているから、同じくクーには読ませたくないのだろう。
神民と神民がロマンチックな恋に落ちて結ばれ、幸せな人生を歩む──現実では、その裏にどれほどの棄民たちの人生が犠牲にされているのか、クーはよく知っている。
「…………」
口を閉じ、キリクは置いてあった本を手に取って、パラパラとページをめくった。
アリアランテの神話。それはつまり、女神リリアナがいかにこの国を創り上げ、守るようになったかを語ったものである。
神話の中では、この国における自然物、自然現象、そして文化文明は、ほぼ女神リリアナに結びつけて考えられている。
女神リリアナは絶対にして不可侵。
その代理とされる教皇も、神に加護される神民も同様である、と。
それを文字にして人々の頭に刷り込むことを目的としたものがアリアランテ神話、と言っても過言ではない。
「……クー、『こうもりの話』というのを知ってるかい?」
キリクが聞くと、クーはぱちぱちと目を瞬いた。
「こうもりって、あのこうもり? 暗くなるとどこからともなく飛んできて、人の血を吸うっていう、あれ?」
「そう。アリアランテの神話には、そのこうもりについて書かれた箇所があってね。まあ要するに、寓話の一種なんだけど、判りやすいから、子供にもよく話して聞かせたりするんだよ」
「ふうん。どんな?」
「昔々、こうもりは、女神の使いだったんだ。明るい昼間、青い空の下を自由に飛んでいたのだけど」
女神の使いとしてのこうもりは、他の者から妬まれて、仲間がいなかった。
寂しくなったこうもりは、鳥の前では「自分は翼があって空を飛べるから鳥だ」と言い、獣の前では「自分は卵ではなく仔を産むから獣だ」と言って、それぞれの間を行ったり来たりし、両方の仲間になろうとした。
正しき女神リリアナは、こうもりのそのあざとい嘘に怒り、両者に媚びへつらおうとする卑しい心根を蔑み、こうもりを闇の眷属とし、人の血を吸わねば生きられぬ浅ましい生物へと堕としてしまった。
もう二度と、陽の下に姿を見せられぬように。
「──という話。こういうのなら、神話でもそれなりに読み物として楽しめるんじゃないかな?」
キリクがそう言うと、クーは面白くなさそうに、ふーん、と顔をしかめた。
「つまらない?」
「いや……だとしたらさ、女神リリアナって、ひどくないか」
「ひどい?」
「だって、こうもりはただ、自分の仲間が欲しかっただけなんだろ。そのための嘘くらい、見逃してやりゃいいじゃないか。女神ってのはよっぽど心が狭いのか」
どうやら本当にむっとしているらしい。腕を組んで、目線を空中に流した。
「こうもりが可哀想だ」
ぼそりと零された言葉に、苦笑した。
可哀想、か。
「君はどう思う? カイト」
カイトに話を振ると、そちらはそちらで、うーん、というように首を捻っている。
「その話なら、子供の頃、聞いたことがあるけどさ」
「うん」
「……俺は、そんなに器用な真似が出来るこうもりが羨ましいな、と思った」
ちょっと恥ずかしそうに口ごもりながらそんなことを言うので、キリクはたまらず噴き出してしまった。
「なんだよ、笑うなよ」
気がつけば、クーも同じように笑っている。カイトは「言うんじゃなかった」と天を仰いで、やっぱり笑い出した。
狭い部屋の中に、笑い声が満ちる。
ここはまるで、明るい日差しに包まれているようだ、とキリクは思った。
……この場所は、こうもりには、眩しすぎる。