午後の図書館
「午後もしばらくここにいますか?」
森野さんがそう聞いてぼくが頷くと、森野さんはまた脚立に乗って別の本をとってくれた。
昼下がりになると、入り口の隣の小窓からは太陽の光が斜めに差し込んできて図書館の床を四角く照らした。
ぼくはその物語の中でまた一人新しい友人をつくった。自分の先生と呼べる人も見つけた。ぼくが知る世界は、少しずつ広がっていった。
気が付くともうかなり日が傾いていて、小窓から差し込む光が床につくる四角形は細長く伸びていた。壁の時計を見るとそろそろ学校が終わる時間だ。もう帰らなければならない。
机の横に置いていたランドセルと午後に読み終えた本を持ってぼくは立ち上がった。
森野さんは朝と同じ机で、今度は何やら分厚い難しそうな本を読んでいた。ぼくは森野さんに一言声をかけた。
「あの、今日はありがとうございました。ぼく、そろそろ帰ります。この本…」
ぼくが差し出した本を森野さんは丁寧に受け取った。
「こちらこそ、今日は来てくれてありがとうございました。この本は私が本棚に戻しておきます。また来てくださいね。」
森野さんは今朝図書館の入り口でぼくを出迎えた時のような笑顔でぼくを見送ってくれた。