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Ep.4

お腹空くねぇ…

だんだん薄暗くなってきているのに森はぬけない。


「この森どこまで続いてんだ…?」


足もだいぶ痛くなってきた。後10数えて何も無かったらもう今日は森で寝よう。ふらふらしながら木の幹を手で掴んで歩いていく。


いーち、にーい、さーん、…はーち、きゅーう、じゅう。


「はぁ、そんなに都合よくある訳ねぇよなぁ…」


今夜は野宿する覚悟も決めつつ、木に手をかけた。フラフラしていた足元にあった根元に気がつくはずもなく


「うわぁぁぁぁぁああ!!」


ゴロゴロとそのまま前転して進んでいく。


「いてぇ、…身体中が…。」


腰や足を手で撫でながら目を開ける。ただでさえフラフラなのに身体中が痛い。頭やスカートに葉っぱや小枝がくっついていた。


「あれ、あの光って…?」


目の前には暖かい光が広がっていた。たいまつが左右に置いてある小さな門があり、門番らしき人が立っている。


「ひ、人里だぁ〜〜!!」


安心したせいか、今でも泣きだしそうだ。女になったせいだろうか…。

もつれる足で門へと向かう。


「入村しますか?身分証は?」


門番らしき人間に聞かれた。身分証?そんなもの持っていないし、そもそも身分がなにかなんか知らない。


「持っていません…」


あ、思い出した。大体はこういう状況だとこういうはずだ。


「た、旅人です!」


旅人。改めて言うと恥ずかしい。


「…」


少し間が開く。なんで何も言わないんだ。上から下までじろりと一瞥する。


「…はい、どうぞ。お通り下さい。良い滞在を。」


ギギギギギと古そうな扉が開いた。

そこにはガヤガヤと明るい街並みと商店が並んでいた。一際明るい店に入った。


「いらっしゃい、見ない顔だね。旅人さんかい?」


頭にバンダナを巻いた女の人が話しかける。多分店員なのだろう。


「今夜泊まれる場所と夕食を食べられる場所を探していまして…」


「アンタ目の付け所が良いね!ここはカザリハ1美味い飯屋で2階は宿屋になってるのさ!」


「ほ、ほんとですか?!今晩、お願いしてもいいですか?」


「いいよいいよ!ついといで!」


お姉さんに案内されて2階へと登っていく。


「一番右端の部屋使ってね!晩飯は下に来てくれればいつでもいいからね」


手を振りながら下へと下がって行った。

右端の扉をガチャりと開けるとベッドと小さな机が置いてあった。


「はぁぁ〜快適…」


ベッドの上に横になる。うとうとと瞼が下がってくると、ぐぅという自分のお腹の音で目が覚めた。


「寝る前に、飯か。」


リュックを背負って1階へと降りていく。


「お、来たね!こっちに座りな!」


カウンターを案内された。室内は明るくみんな酒を飲んでいるようで寝ている人もいた。


「何食うかい?」


「あ、おすすめとかありますか?」


「いいねぇ、うちの名物ウィズモ鳥の丸焼きだよ!」


目の前にドカンと置かれた丸焼きからは鮮やかなとさかが付いていた。


「この街周辺でしか取れない珍しい鳥なんだよ。とさかが青色でね、これが高く売れるらしいけどうちじゃ丸焼きの盛り付けにも使っちゃうのさ!」


フサフサと揺れる青い毛を調理済みの肉に付けるのは如何なものかと少し引いていたが、早く食えと言わんばかりにお姉さんがこちらを見ていたので少し食べてみた。


「う、うまい…!」


思いの外、美味すぎた。鶏のような味ではないが、歯ごたえがあって味がはっきりしているがサッパリしているのでいくらでも食べられる。1口、2口と無言でパクパクと口に運ぶ。皿いっぱいにあったものは骨だけになった。


「いい食いっぷりだな!姉ちゃん!」


ガハハハと周りから歓声が上がる。


「いい食べっぷりね!これデザートね!」


コトリとアイスクリームに黄色のソースがかかっているものが出てきた。


「このソースは…?」


「このソースはデジャンバチの蜂蜜なのよ!」


「で、でじゃんばち…?」


「あら、森を通ったなら見かけなかったかしら。結構大きい蜂だから見つけやすいと思うけれど…」


もしかして。俺が倒したあれか…?


「あんなんに挑もうとするのは馬鹿しか居ないけどね!この街で養殖してるのはあいつを小さく改良したやつだよ。」


バカしかいないと聞いてブハッと吐き出してしまうかと思った。


「…甘くて…美味しいです。」


食べ終わってシャワーを借りたあと、早々に部屋へと戻ってきた。1階はまだまだざわついている。リュックの中身でも見るか、とリュックを開けた。良く考えれたら見る暇もなかったのだ。


小さなリュックにも関わらず中には結構大きいものが入っていた。


まず水筒、革でできたものだ。途中では川の水を飲んでいたからこれ、飲んでおけばよかった…。中の水、入れ替えた方がいいかな。


水道へ行って蓋を開ける。逆さまにするととぽぽぽと水が流れ始めた。


──ん?


終わらない。ずっと流れている。これ、もしかして水が永遠に出てくる系のやつか…。神様のくれたもんだしなぁ。こりゃあ凄い。


リュックを漁ると明らかにリュックの体積よりもでかいものがでてきた。これはなんだ、マントか。フード付きのマントだった。軽く付けてみたがとても暖かい。着け心地は最高だ。


小さながま口ポーチが出てきた。カチャリと開けると白く輝くコインが5枚でてきた。これはなんだ…?もしかしてこの世界で使えるのかな。というか使えなければ困る。飯も食ってしまったし、宿屋にも入ってしまった。


ひっくり返してもそれだけしか出てこない。


「え、これだけ?」


数点のアイテムをリュックに戻し、やることも無いので寝ることにした。

明日はこの街を見て回ろう。目を閉じるとすぅと眠りについた。




お腹空くねぇ!!!

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