Ep.2
いつもより長めです
「おーい!神様!!」
叫んでも無邪気な声は帰ってこない。そもそも神様かどうかも怪しい存在だ。
「困ったなぁ…」
周りを見渡すとどこを見ても森。そこまで高さがある訳ではなさそうなので太陽の光は地面に届いている。
「…普通はこういうのってマップとかあるよなぁ」
ポケットに手を入れてみると紙切れが1枚入っていた。
"必要なものは河原の小屋に置いてあるよ!幸せな生活を!GOOD LUCK!!"
か、河原なんて見えもしない。どうやって探せばいいのかと思いうろうろしていたが、暑くて木の陰でへたりこんでしまった。
「あっちー…俺よく考えたら元々体力ねぇもんなぁ…」
中学高校共に帰宅部だった俺に体力などあるはずもなく、プラスして今は女になっているのだ。まぁ無理もない。
「すずしー…」
微風を感じながら目を瞑った。その時、2時の方向からごうごうと音が聞こえてきた。
「…?なんの音だ?…あっ!もしかしたら」
耳をすませながら音のする方へと近づいて行く。木々の隙間をぬって歩いて行くとそこには5mほどの高さの滝とそこから下流へと流れていく川があった。
「川だ!」
河原に走っていき、手に水をくんで思いっきり喉を潤した。
「ぷはぁ〜!!最高だ!喉カラカラだったんだよ!」
もう一杯と水面を覗くとそこには黒髪の美少女がいた。
「うわぁ!!…て、俺か」
自分で言うのもなんだが、かなりのレベルだ。こんな大層な顔が俺についていいのだろうか…。誰に迷惑をかけるわけではないが、自分の顔を見る度に緊張してしまいそうだ。
「あ、そうだ小屋を探さないとな…」
ポケットに入っている紙切れによると河原の小屋があると書いてあった。
周りをきょろきょろと見渡していると、滝の裏側が水車になっていた。
「なんでこんな所に…」
上流の方には本当に小さな小屋がぽつんと立っていた。
「これなのかな…」
ガチャリと扉を開けるとキィーと軋んだ音がした。
中は至って普通の小屋で縄や土嚢などありきたりのものしか置いてなかった。
「必要なものって縄なの…」
「おい、そこのお前何してる」
「ひゃい!!!」
突然の声に変な声が出てしまった。
おそるおそる後ろを振り返るとそこには絵に書いた様な金髪ツインテールの美少女が立っていた。
「か、可愛い…」
つい心の言葉が漏れてしまった。
「ふん、…若造はみんなそう言う。しかしあいつも暇人よの…」
さっきまで正面にいた少女はいつの間にか背後にいた。
「これぐらいも反応できないようじゃこの世界、生きていけんぞ。」
ふふふっと可愛らしく笑ったが、言ってる事はとても物騒である。
「アンタは一体何なんです…?」
ちらりと目を合わせながら言うと、少女はきょとんとしてこちらを向いた。
「何?わしを知らんとな?あいつも相変わず何も言わないやつじゃな…」
はぁ、とため息をついた後話し始めた。
「お主は元いた世界で何らかのことがあってこちらに来たんじゃろ?来る途中で何か言われなかったか?」
「あ、言われました…無邪気な女の子の声でした。」
「あぁ、それじゃそれじゃ。そいつはお主の世界の神。そしてわしはこの世界の神である。」
「へぇ……て、えぇ?!?!」
どう考えても僕より年下にしか見えない少女が神様?!開いた口が塞がらない。
「人間の驚く顔は相変わず面白いのぉ」
そう言うと、少女は壁に向かって歩き出した。
「えっ、どこいくんですか?」
「着いてこい。あいつには借りがあるでの。久しぶりの客人でもあるし色々見繕ってやろう。」
神様は壁にかけられた古時計の針を何かしらいじるとボーンボーンと重い音が鳴り響いた。
床がまっぷたつに割れ、地下へと続く階段が現れた。
カツン、カツンと2人の足跡が響く。
「神様は、こんな見つかりやすい場所に住んでいて大丈夫なんですか?しかも見知らぬ俺なんかに色々してくれたりして…」
「わしは元々自然が好きだからここに住んでいるんだがな、基本は自分から迎えになど行かない。あいつからこの世界に送り込まれた者は何も持たされないし何も知らされない上にここ一帯はモンスターの巣でもある。ここの場所も分からずに一生を終えて行く者しかおらんかった。」
モンスター…?俺は一体も出会わなかったよな…。
「だが、お主は自力でわしの家の扉を開けた。それだけでお主は才能があると言っていい。」
神様はニッと笑った。
俺にも少しは才能があると思っていいのだろうか。少し嬉しくなる。
地下室の扉を開けるとそこには異常なほど広い空間が広がっていた。
「まぁ、その椅子に座れ。」
言われた通り近くにあったソファに座る。
神様はゴソゴソと奥の箱を漁っていた。
「まぁ、こんなものか」
ドサッと目の前に小さなリュックが置かれた。
「数少ないがこれらをやる。これからきっと役に立つだろう。」
「えっ、何が入ってるんですか?」
「それは言わないさ、言ったら面白くないだろ?」
ふふふと神様は笑った。やっぱり可愛らしい。
小屋の入り口の扉を開けようとした。
「まて。…これはわしからの餞別だ。特別だぞ?」
神様は俺の片手を握った。不覚にもドキッとしてしまったが、握られた手の甲にはさっきまではなかったものが刻印されていた。
「まぁ、達者でな。」
背中を押され玄関を勢いよく飛び出した。
後ろでガチャンとしまる音が聞こえた。
「か、神様!!」
振り返るとそこには何も無くただ水がごうごうと流れていた。
「……色々ありがとうございます」
真後ろに向かって勢いよく礼をし、歩き出した。万全な準備もできたし!これで安心して旅が出来そうだ。
るんるんしながら歩いていると、前方からとんでもない大きさの音と叫び声が聞こえてきた。
「ギャーーーース!!!」
「キャーーー!!!」
──ここ一帯はモンスターの巣でもある
神様の言葉を思い出した時には足はもう動き出していた。
眠眠侍




