未来を見た愚者の話
さらっと読めます。
みんなの心に残るようなものを目指しました。
ある日、ある時、ある国に。
優しくて可愛らしい少女がおりました。
彼女は頭が良くて、人の気持ちも分かり、見目も良い娘で、家族にも恵まれていましたが、ひとつだけ欠点がありました。
彼女の身体は、生まれつき弱かったのです。
彼女が五歳の夜のことです。
薄暗いなか、彼女は珍しくない仄かな熱のなかで、一つの夢を見たそうです。
それは、決して良い夢ではなかったそうです。
あくる日の朝から彼女は、人が変わりました。
ワガママになり、横暴になり、目上の人に媚びを売り、悪い人と付き合うようになり…。
家族は悲しみ、少しずつ心が離れていきました。
家族だけではありません。友人や婚約者までもが、彼女から遠のいていきました。
そしてある日、彼女はとうとう法にまで触れてしまいました。
その罪は重く、広い広場で彼女は殺されました。
最後に見苦しく喚きながらも、喜んでいるような、悲しみを秘めているような瞳をして死んでいったそうです。
彼女の知人、親族は心が軽くなったことを感じつつも、彼女と分かり合えなかったことを嘆いたそうです。
…彼女の本当の寿命が処刑の次の日だったのは、ここだけの話。
ありがとうございました。