第1話 とりあえず異世界転移
ハードモードな異世界物語の始まりです!
「……て…、起きて……」
「ん……」
「起きて、お兄ちゃん!学校遅れちゃうよ!」
「……えっ!?」
「やっと起きた…。もう!」
「今何時!?」
「もう8時過ぎたよ!電車はもう出発してると思うよ!」
「まじかよ!?てか、同じ電車に乗るんだからお前も遅刻じゃないか?」
「今日は、先週の土曜日にあった授業参観の振休だもんっ!」
「もっと早く起こしてくれよぉ~!?」
俺は、葉月 時雨(はづき 時雨)、高校1年生。身長は175cm、体重は58kg。顔は結構いい線いってると思っている。何故彼女が出来ないのかが全く分からない…。友達はいっぱいいるんだけどな……。
「ほら、しゃきっとしなよ!1時限目にも間に合わなくなるよ!」
この有り得ないぐらいに可愛すぎて、俺たち人間と本当に同種族なのかという議論で丸一日潰れちゃうぐらいにプリティーでキュートで、お兄ちゃんラブという完璧な彼女は、俺の世界一の妹・葉月 楓。中学2年生。胸部には年齢の割にはしっかりとしたふくらみがあり、手入れがきちんとされているさらさらな黒髪、身長は162cm体重は44kgバストはBカップ、なんといっても顔がものすごく可愛い!!
声も可愛い仕草も可愛い存在が可愛い!! 何なら可愛いという言葉は我が妹の為にこの世に生まれてきたのではないかという壮大な想像を膨らませずにはいられないぐらいに可愛いこの生物は“俺の”妹です。
……いかんいかん、つい長々と語ってしまった。こんなんだから友達にシスコンとか言われるんだ…。俺はシスコンじゃなく、ただ妹が大好きなだけなのに。
「おっと、学校行かなきゃ!」
俺はパジャマを脱ぎ捨て、ワイシャツに手を通し、ボタンを締める。妹の前で。
「ちょっ!?何急に脱ぎ始めてんの!?へ、変態!!」
「楓が小学校卒業するまでは一緒にお風呂入ってたじゃん。今さらパンツ一丁程度で恥ずかしがんなってw」
「うう~~///」
「可愛い」
「っ/// ほ、ほら早く行きなよ///」
「はいよー」
リビングのダイニングテーブルの上からトーストだけを手に取り口に咥え、靴を履き玄関から飛び出す。
「行ってきまーす!」
「はーい、行ってらっしゃーい♡」
「可愛い」
「………/// 車に気を付けて行くんだよ-!」
「分かってる分かってる」
俺は愛しい妹に一時の別れを告げ、自転車にまたがり、学生の姿が見受けられない道を全速力で漕ぎ進む。雲一つ無い快晴は寝ぼけまなこの俺の意識を覚醒させていく。何とか1時限目には間に合わせなければ……。その一心で自転車のペダルをさらに強く踏みこんだ。
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「……。ちょっと“ズル”しちゃおっかな~!」
まわりに人影が無いことを確認し、自転車を降りる。そして俺はおもむろにつぶやいた。
「“シフトアップ・LV.1”」
途端に、体のどこからか力がみなぎってくる。頭も先程とは見違えるほどに冴えている。何故、一言つぶやいただけでここまでの変化が起こったのか。それは、ほんの少し前、一カ月ぐらい前のこと。その日、俺は今日と同じように寝坊し、自転車を漕いで学校へ向かっていた。ここで事件が起きた。歩行者信号が青になったのを確認し、横断歩道を渡っているところに信号無視をした車が突っ込んで来たのだ。後から聞いた話だと、運転手は直前まで会社の上司と居酒屋でオールしていたそうだ。俺は運良く頭を打つだけで済んだが、親が大事をとって精密検査を受けさせてくれた。そこでは、脳の何処にも異常は見当たらず無事退院となったが、俺は感覚的に自身の脳の異常を把握していた。その脳の異常の正体が、先程の“シフトアップ”だ。どうやら頭を打った衝撃で、脳のストッパーが外れ、短時間の間だけだが本来以上のパフォーマンスが出来るようになっていたのだ。副作用は特に無いが、使用後は凄く疲れる。しかし、そのデメリットを帳消しにして尚メリットだらけの力を手にしたのだ。
俺は、シフトアップで筋力が上がった状態で自転車を漕ごうと、自転車に近づいた、そのとき。
光が俺の体を包んだ。
「見つけた………。」
「何だ何だ!?」
「来てもらうぞ………。」
「はっ?えっ?ちょっ!?」
体を包む光が強くなり、俺は思わず目を閉じる。突如、浮遊感を感じた俺はゾワっとした。いわゆるタマヒュンってやつだ。
謎の光、謎の声、謎の浮遊感。俺は猛烈に嫌な予感を感じつつも、何の抵抗も出来ずに………。
現実世界から姿を消した。
次回 初めての異世界