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【第1話】天使だからといって清らかとは限らない

前回までのあらすじ

まごうこと無き異世界転移。


前回書き忘れてましたが、どんなに異世界で過ごしても現実世界で目覚めたら3日しか経ちません。





眼を開けた時、目の前に広がっていたのは

青く透き通る美しい運河が町中に広がる町だった。


街のいたるところに海の爽やかな青と鮮やかな

木々の緑があり、煉瓦造りの温かみある赤い

建物がその中に強く映えていた。


街中で蛇腹を持つ楽器(アコーディオンに近いか?)を

演奏するスーツを着た男が居る。


運河にはゴンドラを彷彿とさせる船が浮かんでいるが、

それを漕いでいる人間はいない。代わりにタツノオトシゴ

のような顔をした首長竜みたいな生物がゴンドラを

引いて泳いでいる。




「ようしヤックル!今はドラゴンドラを利用する客もいないし、

 一旦昼休憩入るぞ!」


「了解だ相棒。俺は“鉱山トマトと昼晩アサリの赤ボンゴレ”

 をしこたま食ってやるぜ。お前の財布に穴をあけてやる。」


「こやつめハハハ」


ヤックルという名のこのドラゴンは人間と会話が可能らしい。



中世ヨーロッパといえば汚くて不衛生でペストで死ぬ!

っていうイメージがあったのだが、この町は綺麗に整備

されている。


付近にレストランがあるらしく、トマトソースと魚介の

香りが風に乗って鼻に入って来る。実に香しい。





……うん。


「何だよこの町!すっげえ綺麗じゃねえか!心配させんな!」




俺は街中で叫びそうになったが、ある程度声はしぼった。

おかげで振り返ってこっちを見て来る人はあんま居なかった。




と思ったら全速力で走って来る男が居る。



黒いタンクトップを着ている健康的に小麦色の肌をした

やたらと筋肉質な男だ。プロレスラーレベルの筋肉である。



「やあ旅のお方!ここは水の都『ヴァナッチェ』だよ!」

「あっはい。これはご丁寧にどうも。」

「ゆっくりしていってね!!!」




男はそう言うと全速力で俺の元から去っていった。

なんだったんだ……と思った。


「なんだったんだ……。」


あっ口からも出た。




「今のは町人Aです。お役所の中でもかなりエリートな存在ですよ。

 それにしても衛生状況を勝手に心配して、自分で勝手に安心して、

 本当に滑稽な男ですね☆」


ふと背後からハイトーンで可愛らしい、かつムカつくトーンの癖に

殴りたくはならないギリギリな絶妙にウザい声が聞こえてきた。



振り返るとそこには……、


挿絵(By みてみん)


おっぱいがでかい美少女が居た。


深緑色のハイネックノースリーブなワンピースを着た少女。

手には白い長手袋、脚には白いルーズソックスを履き、

黒光りするローファーを履いていた。


暗い色は質量を感じさせるというが、手で収まりきらない

程の巨乳がより重厚で艶やかなものに感じられる。



あっ、頭の方はクリーム色のショートカットをしたメガネが似合う

可愛い女の子でした。はい。


「ふふ~ん、私の顔に見とれてましたか?」

「いえ、乳に見とれてました。」

「セクハラ!」




「それで、貴女が神さんの言ってた天使さんですか?淫魔の間違いでは?」


「そうですとも!私の名前は『レティエル』。貴方をサポートする為に

 神様から遣わされた天使です!……そして淫魔というのも否定しません。

 何故なら私は一度堕天して淫魔になった後に天界に再就職した者ですので。」


「ははあ道理で……ですか。」

「そこは『こんな清楚な天使様が!?』って驚いてくださいよ!

 あと慣れてない敬語は止めてください。こちらの肩が凝ります。

 恐らく長い付き合いになると思うので肩が凝るのは自慢の

 胸のせいだけにしたいのです」


「了解。ところでレティエルさん。これからどうすんの?」


「呼び捨てにしろよ☆ ……まあいいや。

 とりあえず向こうのレストランで作戦会議でもしましょう。」




そうして俺たちがやって来たのはイタリアンのレストランっぽい

洒落た店だった。


ダークな配色の木材を基調とした落ち着きのある床や調度品に、

壁は清潔感のある白。テーブルクロスは優し目な赤と白の

チェック柄で目に楽しい。ガラス製のカンテラの中にある

温かみのあるオレンジの明かりが食欲をそそらせる。





「何が一番驚いてるって、上下水道整ってる事だよ。」


俺は蟹出汁が効いているトマトクリームソ-スの

アランチーニ(イタリア風のライスコロッケ)っぽい何かを

摘まみながらレティエルと雑談していた。


メシは美味い。飲み物の水は“スパークリング”にできる

と聞いていたので試してみたらなんか電流が流れていた事

以外はおおむね不満はない。


「科学技術に関してはあなたの世界よりも遅れていますが、

 代わりに魔法が発展しているので、水道のポンプには

 水と風の魔法。街灯は炎の魔術を改造して作られた

 『プラズマ魔法』が使われているんです。物質的には

 貴方の世界に分がありますが、それ以外の面で貴方の

 故郷が勝っている場所はゼロです。」


「はっきり言ってそうだわ。けど自然環境に人間を

 脅かす生物がクソみたいにいるせいで町の外に

 出るのに一苦労らしい。……でも俺たち暫くしたら

 この町から出るよね。」


「無論です☆」

「死ぬ?」

「お好きにどうぞ。私は生きる気ですよ」

「誰が死ぬか。」


そんなプロの戦士みたいなセリフを言われたらもっと

不安になる。けど『心配するな』って言われてない事は、

ここから出る事が地獄じみているの現われなのかもしれない。


レティエルはイカスミっぽい色をしていながら若干

紫がかっている悍ましいパスタを口に運びながら

にやにやと笑っている。


「まあ雑談はこの辺にしておいて、今回の標的を

 説明しましょう」


「俺たちは殺し屋か。」


そう言うとレティエルは腰につけているポーチから

A4サイズ程の羊皮紙を取り出した。


紙には紫色の鱗を持つ二足歩行のカメレオンが

描かれている。描かれているといってもほぼ写真

のように正確で、未知の顔料で描かれているらしく、

今まで見たことのないような質感だった。


その紙を指し、彼女は説明を始めた。


「彼の名はジキル=スットコーイズ。カメレオン型の

 知的爬虫類種族『リザリアン』の男性です。彼は

 希少品等を売買する商人なのですが、その旅の

 途中で光魔法を乱反射させて明度を増させる

 『ミラーイツ鉱石』を発見するはずなのです。」


「確かに、そんなモノが見つかれば太陽光を圧縮して

 火を起こしたり、日照不足な地で野菜を育てる事も

 できるだろうしな。……しかしジキルとやらに

 起こったくだらない不幸とは?」





「セクハラの冤罪です。」


「は?」



「ジキルさんはヴァナッチェの名門『ガルガリオン家』

 という貴族の令嬢に絡まれて、『手を出した』事に

 されて捕まりました。


 彼が留置所に居る間にミラーイツ鉱石が採掘できる

 エリアをガルガリオン家が『汽車を走らせるトンネル』の

 工事の為に関係者以外を立ち入り禁止にして、その後

『ハッシャクモグラ』というモンスターの巣を掘り当てて

 結局トンネル計画は白紙に。


 挙句の果てに計画が白紙になった後も役所が立ち入り禁止の

 解除を面倒くさがり、結果的にミラーイツ鉱石の発見は

 45年後になっています。」






「神がかったクソの連鎖じゃねえか!!!!!」


白昼堂々とレストランで叫ぶ男の姿がそこにあった。


というか俺だった。



「何故あなたが此処に招かれたか、これで十分理解して頂けた

 はずですよ☆」


「ああその通りだわ。これからもこんなクソ不運を相手に

 戦わなきゃいけないのか…マジ震えてきやがった。」


今さらながら本当に恐ろしい戦いに首を突っ込んでしまった。

これが『不幸』が積み重なった極みという奴か。


「ごちそうさまでした」


レティエルのそうあざとい声が聞こえた。あの不気味な

パスタを食べ終ったレティエルは店員が運びやすいように

皿や食器を出来るだけまとめ始めていた。


俺も皿の上にあったアランチーニ(という名前なのかは

分からない料理)を一気に口の中に押し込み、水で

流し込んだ。


そんなに焦らなくていいのに、にやにやしながらも

苦笑いのように取れる顔をして俺を見ていた。



「明日の午前9時ごろ、西の運河エリアの路地裏で事件が起きるので、

 お互い助け合って頑張りましょうね☆」


「おう。ここで逃げる程俺は図太くないぞ。とりあえずここを出よう。

 支払は俺が……」

「いえ、貴方にお財布を渡して無いので私が支払いますよ」


恐らく神さんあたりから受け取ったであろう財布をレティエルが

持っていた。何故なら白い財布に油性マジックで『ハジメ』と

書いてあるからだ。



「ご飯を奢ったお礼はいつかしてもらいますからね~♪」

「それ、神さんから預かった俺の活動資金だろ」

「何故ばれたし」

「何故ばれないと思った?」


最後までニヤニヤ笑いを崩さないこの不気味な美少女、

レティエル。この時俺は、コイツが俺にしようとしている

事の片鱗すらも理解していなかった。





次回:『美少女だからとって何しても可愛いとは限らない。』



君は生き延びることができるか?俺は無理かもしれない。




ここまでご覧いただきありがとうございます。

女の子の立ち絵を書きたいがために小説投稿始めた感じ有りますわ(*´ω`*)


この小説はバレンタインプレゼントとして取っておいてください。

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