【プロローグ】異世界に行くやつが全員不幸な事故で死んでいるとは限らない。
「さて、今君に死んでもらったのは他でもない。」
「はい?」
眼前に広がるは床と天上の継ぎ目すらも見えないような真っ白な世界。
白いキャンバスの中に居るキャラクターは恐らくこんな風に見えているん
だろうな。そして俺にとんでもない事を話しかけてきたのは、これまた
真っ白な体で、柔らかい鉛筆で適当に描いたような輪郭を持つ
シルエットだけの存在。
「あっ、私は神です。」
「ああこれはご丁寧にどうも。うん。コレは夢だ。」
「夢じゃないんだなあこれが。
君の事は私が知っているよ。今垣ハジメ。私立大江戸高校に通う
高校1年生……になるはずだった男。入学式の途中でトラックに
跳ねられて意識不明の怪我人になった。まああと3日もすれば
意識は戻るだろうし後遺症の心配もない。私がここに君を呼んだのは、
意識が戻るまでとある仕事をして欲しくて君の精神をここに呼んだのさ」
「長い三行でまとめろ」
「ハジメ君事故で意識不明
後遺症の心配皆無」
それまで仕事を手伝って
OK?」
「始めからそう言ってくれよ。……てか死んでねえじゃねえか!」
「正直スマンかった」
まったく。この神は話長いくせに分かりやすく改行しないから困る。
……いや、神様相手だからもうちょっと気を使って話した方がいいかな?
「気安く喋って何の問題ですか?何の問題もないね。」
「おう、ナチュラルに心読むなや。
で?仕事って何さ。」
「君に異世界を旅して、君が出会うだろう困ってる人を助けてあげて欲しい。
実はその世界に居る『これから名を上げるだろう偉人たち』の何人かが
ランダム確率で起こるくだらない不幸のせいで大成しなくなってしまって…。
このままじゃ100年くらい文明が遅れてしまうかもしれないんだ。」
「……結構な問題じゃないか。」
話すのが多少遅れたが、俺は困ってる人を放っておけない性分なのだ。
「けど神様なら造り替えることも造作でもないんじゃないか?」
「そうは言うけどハジメくん。肉体を持つ人間と私とでは次元があまりにも
違いすぎるんだ。私が人間たちに助言をするにはまず仲介役の熾天使を呼んで、
その熾天使の言葉を翻訳できる中級天使達に言葉を伝えさせて、中級天使の
言葉を理解できる下級天使に言葉を伝えさせて、その下級天使が人間に助言を
するという形を取らなければトラブルが発生してしまうんだ。
けどそれを膨大な人間たちにやっていったら全員分終わるのに1年を要する。
そんなに時間をかけていたら何人か取りこぼしてしまうよ。」
「長い、3行でまとめろ。」
「私と肉体を持つ人間じゃ次元が違う
膨大な翻訳作業が必要で時間もかかる
時間をかけすぎると何人か取りこぼす
おk?」
「成程、多分俺がアンタの話を聞けるのは精神だけの存在だからかな」
「話が早くて助かるよ。無論報酬も付けるし、仕事を教えてくれる
丁寧で美少女巨乳な天使もつけよう。あとその場に応じた能力を
アタッチメントとして与えてあげるし」
「巨乳天使か……いいだろう。」
「流石高校生。お盛んですな」
「「はっはっはっはっはっはっ!」」
よもや神とこんなにも仲良くなれるとは思わんかった。
しかしそういえば行先は何処なんだろうか?
「ちなみにどんな世界なんだい神さん。」
「おおそうだったハジメくん。今回行くのはヨーロッパ風のファンタジー世界。
ドラゴンとかも飛んでるよ!」
「ヨーロッパファンタジー?……衛生状況とか大丈夫なのん?」
「……さあハジメ君!冒険の世界へれっつらゴー!!!!!」
「図ったなチリ神野郎があああああああああああああああああ!!!」
全てを察したのは、俺の魂が分解されながら『件の異世界』へと
ワープしている真っ最中であった。
次回:『天使だからといって清らかとは限らない』
お楽しみに!
初めて投稿します。なめろうという者です。
こんな感じでお茶漬けじみた軽い小説を
ぽんぽこ書いていく予定です。
ハジメは次回から旅をしていきます。
異世界旅行気分で楽しめて貰えたらめっちゃ嬉しいです。
ちなみに普段はモンスター娘の絵を描いているので、
この作品にも登場します。
魔物娘図鑑はいいぞ。