表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様には蒼いリボンをつけて  作者: なっつ
Episode 3:星に願いを、月に祈りを
52/626

24 【忌まわしき記憶・2】

※過去話です。

※挿絵があります。

著作者:なっつ

Copyright © 2014 なっつ All Rights Reserved.

掲載元URL:http://syosetu.com/

無断転載禁止。(小説家になろう、taskey、novelist、アルファポリス、著作者個人サイト”月の鳥籠”以外は全て【無断転載】です)


这项工作的版权属于我《なっつ》。

The copyright of this work belongs to me《NattU》。Do not reprint without my permission!


挿絵(By みてみん)




「い、いやぁ。ただの通りすがりっすからー」


 ルチナリスの態度に声が(ひる)む。


「顔が見えないのって怖いんですけど!」

「見えても怖いと思、」


 間髪入れずにボコッ! と殴打する音がした。

 空中に薄く人影が見えた気がしたが、目を凝らしたところで、やはり見えはしない。


「声だけで姿を見せないのは卑怯です!」


 でも知っているもの。

 このおばけは口ばっかりで、あたしに悪いことはしてこない。だから、大丈夫。




「るぅチャン難しい言葉知ってるなぁ……」


 声はそれだけ言うと黙り込んだ。

 相談しあっているような囁きが聞こえるが、聞き取ることはできない。


 何だろう。やっぱり食べちゃおうとかそんなことを言っていたらどうしよう。

 でも逃げるわけにはいかない。クマに遭っても背中を向けてはいけないって言うし。おばけに背中を向けたらどうなるかわからない。


「顔見せなさいよ!」


 クマだったらずっと目をそらさないまま後ずさるんだって、そう聞いた。

 攻撃的な態度を取ってクマを刺激しないように。そーっと、そーっと、クマの視界からいなくなるんだって。

 それから考えたら大声を出すのは間違っているけれど。


「いや、それは」

「青藍様に言いつけるわよ!!」


 でもクマじゃないし。

 現に怒鳴りつけるのは効いているみたいだし。






 長い沈黙。






「……どうする?」


 声のひとつがそんな言葉を吐いた。


「出て来るな、って言ったのは(ぼん)だぞ」

「でも言いつけるって、」

「ちょっかい出してたのバレちまうっすね」


 全部同じ声なのに話し合っているのって変。お話を読んでいるみたい。

 ルチナリスはミバ村にいた頃を思い出す。

 昔と言ってもまだ1年も()っていない、それなのに遥か遠くなってしまった過去。


「でもさ、全然見たことないわけじゃないんだし」



 あれは春だったかな。旅の一座が村に立ち寄った時のことだった。

 村はずれの空地に赤と青のストライプが眩しいテントが張られて、ピエロがビラを撒いて。

 その一座のお姉さんが、村の子供たちを集めて朗読会を開いてくれた。

 ミバ村のあたりでは珍しい淡い金髪に白い肌。オーロラを思わせる薄衣の衣装がとっても綺麗だったっけ。



「だよな。俺ら、あっちこっちにいるもんな」



 大きい子たちが「踊り子だ」って囁いていた。

 朗読を終えたお姉さんは「そのお話をやるから見に来てね」って言っていた。

 行った子もたくさんいたけれど、あたしは行けなかった。孤児なんだからそれが普通だと思っていた。



「来た時だって並んで出迎えてるのを見てるわけだしさぁ。耐性あるんじゃね?」



 たった1日だけの興行で、次の日の朝にはテントも荷馬車もなくなっていた。

 まるで一夜限りの夢。元に戻っただけのはずの空き地が酷く荒れ果てて見えた。

 客が期待できない小さな村だからな、って誰かが言っていた。


 お姉さん、綺麗な声してたな。間違ってもこんなダミ声じゃない。

 ……って、今は昔の思い出に浸っている場合ではない。ルチナリスは、はた、と我に返った。

 目の前なのか横なのか後ろなのかはわからないが、とにかく自分の近くではダミ声が相談し続けている。


「だよなだよな。俺らこう見えて結構他の奴らよりキュートだもんな。目もデカいし」


 そんな声がして。


 相談が終わったのか、いきなり全ての音が消えた。

 声も、気配も。

 でもそれは、嵐の前の静けさにも似て――。




 観念したかのようにパッ! と出て来た化け物の姿に、ルチナリスは目の前が真っ白になった。

 目の大きい、羽根の生えた、真っ黒い影が……3つ。


「い……やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」


 絶叫が城中に響いた。


 挿絵(By みてみん)


 化け物。


 悪魔。


 村を襲った異形の影。


 燃える家。


 逃げ惑う人。


 あたしに向かって伸びる禍々(まがまが)しい手。



 魔女が煮立てる大釜から紫がかった何かが吹きこぼれるように。鍵までかけて封じた記憶が噴き出してくる。



『逃げなさい』



 そう言って集落の方へ走っていった神父の後ろ姿が。



『かわいこチャン見~っけ』



 そう言って笑った化け物の牙の隙間から見えた紅が。

 自分に向かって伸ばされた爪が。


 ああ、その顔は。

 どう見ても人間のものではなくて。


 ……それが今、目の前に……!!



 ぐるぐるぐると視界が回る。

 踏みしめているはずの床がぐにゃりと歪む。

 後ずさろうにも足はどうにも動かず。

 視界は黒だか赤だか、チカチカと明滅を繰り返す。

 天使の梯子(はしご)は痕跡すら消え失せ――


「るぅチャン」


 だから、目の前のこれは。


 これは。

 天使、じゃ、ない。


「ルゥ、チャン」

「来ないでぇぇぇっ!」



 助けて。


 助けて。



 青藍様――――――!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


image.jpg

小説家になろう 勝手にランキング
に参加しています。

◆◇◆

お読み下さいましてありがとうございます。
『魔王様には蒼いリボンをつけて』設定資料集
も、あわせてどうぞ。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ