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9.完売御礼


最近の店の店員は、AIを搭載したヒューマノイドが一般的だ。

ぱっと見、人間とほとんど区別がつかない。


しかし、世の中というのは変わり者が少なからず居る。


例えば、機械が作った飯でなく、生の人間が作った飯を食べたいと言う者。

生の人間が給仕した飯が食べたいという者など。


私がバイトで勤めているメイド喫茶『ブリティッシュ・ブレックファスト』もそんな変わった客の要望に答える店の1つだ。

何と給仕まで人間が行う。前時代的だが、それが良いという人間も居る。


――――――――――――――――――――――――

あちらの客が指名しています。

――――――――――――――――――――――――


「ん、了解」


このメイド喫茶は店員を指名出来る。

店員の一覧、自己紹介、現在の状況は電子ペーパー製のメニュー表の後ろの方に表記されている。

電子ペーパーなので、内容は随時自動変更される。


で、自分の気にいった店員を指名するのだ。

指名された店員は、注文の後3分間、料理到着後3分間だけ話し相手になってあげるという仕組みになっている。


生身の女性とコミュニケーションをとりたい。

でも直接アポをとりつけて会うのは難しい。

そんな男性がメインターゲット。

メイド長目当てのお年寄りも時々来るけどね。


たまに店員を口説いてくる奴も居るけど、ウチでそれを行うと出禁を食らう。

中にはストーカー被害に遭った子も居るみたいで、警察のお世話になることもしばしば。

私? 私を指名する固定客はそういうのとは違った変わり者ばかりなので、関係ない。


例えば、今私を指名したのは、推定10歳の金髪美少女。

ウェーブをかけたセミロングの金髪と、整った顔つき、そして水色の凝ったフリフリドレス。

イギリス人と日本人のハーフ、百乃もものアリー。

ゲーマー友達の1人だ。


「おかえりなさいませ、お嬢様」


私が一礼すると、アリーはふん! と鼻息を鳴らす。


「低レベルの家政婦の真似事は結構ですわ!

それより昨日はどういうことですの!」


昨日? 何かあったっけ?


「わたくしがゲーム内メッセージを送っても、一向に反応なし!

せっかくどちらが強いか決着をつけようと思ってましたのに!」


ああ、あのゲームの話か。


アリーが言っているのは、一人称視点シューティングゲーム(FPS)の『Bloody War Field』のことだ。

つい最近まで私も遊んでいたが、ぶっちゃけマンネリで飽きてきた。

なので新しく来日した『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』を遊ぶことにしたのだけど。

どうやらアリーは私が居なくて寂しかったらしい。


「ごめんねー、最近MDO始めたからそっちばっかりやってた。

ところで注文は?」

「MDO……『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』?

あのゲームは銃が無いはずですわ。パンケーキを1つ」


注文は音声認識システムで自動的に厨房に伝えられる。

ちなみに本来ならこの後に「畏まりました、少々お待ちください」と言って厨房に戻り、注文を口頭で伝えるという茶番を行う。

今更そんな人件費のかかる無駄なことをしているのは、メイド喫茶や人工知能非導入の頑固な店くらいだ。


厨房でわざわざ人間の手によって料理が作られる。

ロボットに任せれば人件費がかからないというのに、いつ見てもこの店は変わっているなぁ。


「パンケーキ上がりー」

「はーい。おまたせアリー」


アリーにパンケーキを渡す。

コンビニなら100円のこのメニューも、このメイド喫茶なら1000円もする。

お金は電子マニーによって支払われる。。

昔は硬貨とかいう不潔な金属コインを使っていたというから驚きだ。


「確かに銃は無いけど、クロスボウがあるからね」

「貴方は撃てれば何でもいいんですの?!」

「何で私は責められているん?」


人を射撃狂いみたいに言うのは止めて欲しい。

私は、ちょっと頭を撃ち抜くのが好きな普通の女の子ですよ、っと。


「それなら、わたくしがMDOを始めれば、貴方と勝負できますわ!」

「ん? ひょっとして私と会えなかったのが寂しかったのかな?」

「貴方よりわたくしが上手いことを証明するためですの!

勘違いしないことですわ!」

「そっかー」

「そうですの!」


アリーはパンケーキを食べ終え、出て行った。

外には高級AI車が停まっていた。

彼女の家は金持ちなのだ。

課金し放題。裏山。



◇ ◇ ◇ ◇



バイト代は即日渡される。

今日のバイト代は時給1500円x5時間で計7500円。


家に帰った。

さっそく私は課金することにした。


「コマンド、ウェ○マネーを購入、5000円分。

それをMDOに全部使用」


バイト代の残りは、生活費の足しにする。


――――――――――――――――――――――――

コマンド受理しました。

ウェ○マネーを5000円分購入しました。

MDOアカウントにログイン完了。

ウェ○マネー5000円分を使用しました。

――――――――――――――――――――――――


トイレを済ませ、レッツ・ダイブ!



◇ ◇ ◇ ◇



湿っぽい洞窟、我がダンジョンへと舞い降りる。


――――――――――――――――――――――――

毎日ログインボーナス:+500DP

所持:1,800DP→2,300DP

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

以下のアイテムを入手しました。

「錆びた銅剣x1(レア度D)」

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

以下のアイテムが売れました:+35,000DP

所持:2,300DP→37,300DP

狂虎天龍槍きょうこてんりゅうそうx1(レア度B)」(5,500DP)

「盗んだ馬x1(レア度E)」(8,900DP)

「盗んだ馬x1(レア度E)」(7,500DP)

「盗んだ馬x1(レア度E)」(6,900DP)

「盗んだ馬x1(レア度E)」(6,200DP)

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

課金(5千円):+50,000DP

所持:37,300DP→87,300DP

――――――――――――――――――――――――


オークションの結果が出ているね。

アイテムを流してから24時間経過していたらしい。

全部売れていたみたいで何より。


私が前日、盗んだ馬を有難がったのが良く分かる結果だね。

このゲーム、移動手段がとても大事。

馬を早々にオクに流すことで、こうして割の良い儲けを得ることが出来るというわけだ。


続いて、入口の採掘場AへGO。


――――――――――――――――――――――――

以下のアイテムを入手しました。

「ミスリルのインゴットx1(レア度B)」

「鉄のインゴットx1(レア度D)」

「竜血宝のインゴットx1(レア度B)」

――――――――――――――――――――――――


おお! ついに来た!

ミスリルインゴット!


このインゴットは軽くて丈夫で、加工次第で浮力を得るという、なかなか面白い素材なのだ。

竜血宝? 売れば金になるけど、宝石としての価値しか無かったはず。

アプデで何か追加されていない限りは、ね。


加工はドワーフが一番優れていて、二番は人間、一方魔族やエルフはあまり加工が得意でない。


インゴットの加工1つにしても、NPCの協力が必要不可欠。

プレイヤーが加工を出来なくもないが、リアル技術を持ち合わせていないと失敗する。

リアル鍛冶師がMDOをやったなら、日本刀とか作れるかもね。

ん? 才能の無駄遣い? 違いない。


さぁて、じゃあ次は、適当にオークションに出ている物を買うとしますか!


◇ ◇ ◇ ◇


本日の結果。

所持:87,300DP

78,540G


「ミスリルのインゴットx1(レア度B)」

「鉄のインゴットx1(レア度D)」

「竜血宝のインゴットx1(レア度B)」



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