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5.マッド・タイガー


洞窟を出ると、一面の草原が出迎えてくれた。

所々に木があり、地面の草も膝くらいの高さがある。

これは、盗賊プレイが捗りそうなフィールドだねぇ。


私のエリア地図に、敵対NPCの情報が1体映っている。

目視で確認。向こうの木にもたれ掛っている全身緑の魔獣が居る。

あれはゴブリンという、小人の醜い鬼の魔獣だ。


練習も兼ねて、りますか。


矢をセットし、クロスボウを構える。

頭が小さいのでヘッドショットは止めてボディを狙う。


カシュッ!


放たれた矢は、ゴブリンの胴体を貫通する。

ゴブリンは倒れた。そしてドロップアイテムを残して、光になって消えた。

ああ、ゾクゾクするぅ~気持ちいい~っ♪


そうそう、忘れていた。

九尾製クロスボウと矢のアイテム説明はこんな感じだ。


――――――――――――――――――――――――

九尾製クロスボウ(レア度S)

【説明】紅く美しく輝く九尾の尾を使って作られたクロスボウ。

その幻想的なフォルムは、見る者全てを魅了する。

【効果】幻影無効

※対巨人威力超上昇

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

クロスボウ用の矢メタルワイバーンの骨製(レア度S)

【説明】メタルワイバーンの骨を贅沢に使った、クロスボウ専用の矢。

その硬さと重さにより、貫通能力が上昇し弾道が安定化した。

【効果】矢の耐腐食、耐熱性上昇

――――――――――――――――――――――――


矢はゴブリンの後ろの木も貫通し、80mほど飛んだ所に落ちていた。

草が生い茂っているのに、何で分かるのかって?

地図上マーカー追加の効果でアイテムの位置が分かるんだよね。

本当に神効果だ。


落ちていた矢を回収し、ゴブリンからドロップした皮をアイテムボックスに収納した後、マップを確認。

周りは中立NPCばかりらしい。

こちらから手を出さない限りは敵対しないはずだ。


今回の外出の目的は

1.近所にダンジョンが居ないか確認

2.街道を見つける

3.2が済んだら、一番近い町を見つける。

の3つだ。


エリア地図には、自分の周り500mほどの情報しか記載されない。

なので、マッピングのために歩きまわる必要がある。


この世界には、最初から世界地図なんて物は無い。

ある程度日数が経過すれば、飛行系のお助けキャラ持ちが手作り世界地図を作り上げることだろう。

それをユーザー間で取引したりして、ようやく世界の全体像が把握出来るのだ。


それまでの間は、各自手探りで自分ダンジョン周りを探索する形となる。


何か見つかるまで、探索を続けることにしよう。



◇ ◇ ◇ ◇



街道らしき物が、私のダンジョンから4kmほどの場所で発見出来た。

街道を辿れば、町が見つかるはずだ。


途中の敵対魔獣はゴブリンだけしか居なかった。

ゲーム開始直後だから、弱い魔獣だけしかスポーンしていないのだろうか。

もっと手強い相手と殺り合いたいものだ。


で、現在、私は木の陰に隠れている。

木の陰から、街道沿いにある大きな1つの穴を眺めている。


「ねぇおはぎ、あれって」

「ぶにょにょ(ああ、ダンジョンだな! 野良ダンジョンだー!)」

「ぶよーん(そうね。ダンジョン傾向は土の洞窟。

魔獣は、獣系や爬虫類といったところかしら)」


野良ダンジョンとは、ダンジョンマスターの居ない、天然のダンジョンのこと。

今回は洞窟だが、森だったり神殿だったり、場所によって異なる。


なぜ野良ダンジョンだと分かるかというと、プレイヤーのダンジョンの場合、そうであることが空中に表記されるのだ。

逆に、その表記が無いダンジョンは野良ダンジョンであることが分かる。

単に普通の洞窟かもしれないが、こんな場所に洞窟がひょっこり出来るわけが無いのでやはりダンジョンなのだろう。


良い資源が出る野良ダンジョンは、ダンジョンマスターやNPCとの取り合いが発生する。

ま、そういう野良ダンジョンの場合はNPCの見張りが立っているものだ。

今回は見張りが立っていないので、大したことのないダンジョンなのだろうか。


「よし、今日はここの探索をしてから、私のダンジョンに帰ってログアウトだね」

「ぶにょにょ(おう!)」

「ぶにょーん(分かったわ、ソフィアお姉さま)」

「ソフィア?」

「ぶにょーん(……自分のキャラネームくらい覚えていなさいよ、お姉さま)」


白いおもち、じゃなくてスライムに呆れられつつ、私達は洞窟へ侵入することにした。



◇ ◇ ◇ ◇



洞窟ダンジョンの中は、薄暗い通路が続いていた。

これもダンジョンの特徴。ダンジョン内には明りが用意されているのだ。

ただし、意図的に明りが無いトラップの部屋も無くはない。


黒いスライム、おはぎに先行させる形で進む。

おはぎはシーフでもあるので、罠の探知が得意なのだ。

このダンジョンには罠は無さそうである。


しばらく進み、エリア地図に敵対NPCのマーカーが映る。

スライム達を下がらせ、岩陰に隠れ、視力超上昇で上昇した視力を使って見てみる。

奥に大部屋があり、そこにトラックほどの大きさの虎が居た。

それだけでなく、戦っている多分冒険者の人間NPCが2人居た。

なるほど、道中に雑魚NPCが居なかったのは、彼らが狩ったからか。


そしてあの虎は、イベントボスの【マッド・タイガー】だろう。

倒すと必ず1000DPと狂虎装備をランダムで1つドロップする。

ただし、それはプレイヤーかお助けキャラが倒した場合のみである。


というわけで、私も参戦することにした。

クロスボウに矢をセットし、スライム達と共に、急いで戦闘場所へ駆ける。

距離30mほどで、冒険者達が私達に気付く。


「おもち! 回復魔法を!」

「ぶにょーん(はーい)」


指示しつつ、私はクロスボウから矢を放つ。


カシュン!


冒険者の1人は私のヘッドショットによって即死し、ドロップ品を残し光となって消える。

一方、マッド・タイガーの傷が少し塞がった。


え? 何でマッド・タイガーを癒したか、だって?

冒険者を殺す前に死なれたらイベントドロップが無くなるからに決まってるでしょ。


「なっ?!」

「はいはい、邪魔な冒険者はしまっちゃおうね~」


矢を速攻でセットし、唖然とする冒険者にもヘッドショット。

ああ~ヘッドショット即死が気持ちいいんじゃ~♪

もう一人の冒険者も光となって消える。


黒スライムのおはぎが、マッド・タイガーの突進攻撃を受ける。

しかし、スライムに物理攻撃は無効である。

逆におはぎが放出した酸によって、マッド・タイガーは苦しんでいる。


私が戦闘に参加するまでもないので、放った矢を回収しつつ、ドロップ品をチェックだ。

プレイヤーと同じく、NPCも装備と手持ちアイテムを各10%の確率で落とす。

ま、プレイヤーのアイテムボックス内は死んでも無事なので、大量の消耗アイテムはそちらに入れておけば良い。


――――――――――――――――――――――――

以下のアイテムを入手しました。

「薬草x2(レア度E)」

「良質の銅剣x1(レア度E)」

「使い古した靴x1(レア度E)」

――――――――――――――――――――――――


さて、マッド・タイガーも倒してくれたみたいで、ドロップアイテムが現れる。

それにDPも獲得したようだ。


――――――――――――――――――――――――

以下のアイテムを入手しました。

「マッド・タイガーの肉x2(レア度D)」

「マッド・タイガーの牙x1(レア度D)」

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

毎日クエスト『ダンジョンを1つクリア』達成:+300DP

所持:0DP→300DP

「銅のインゴットx1(レア度E)」を入手しました。

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

イベントクエスト『【マッド・タイガー】討伐』達成:+1,000DP

所持:300DP→1,300DP

狂虎天龍槍きょうこてんりゅうそうx1(レア度B)」を入手しました。

――――――――――――――――――――――――


肉というのは、討伐によって2分の1くらいの確率でドロップする、食料だ。

この世界のNPCは、食料として肉を食べる。

もちろんお助けキャラも食料を食べるので、この肉はそのままスライム2体に食べさせることにした。


「お肉、食べていいよー」

「ぶにょにょ(うひょー!)」

「ぶにょーん(あら、悪いわね)」


お助けキャラは一応、何も食べなくても死にはしない。

しかし、満腹状態だと能力が少し上がるらしい。

なお能力値がこのゲームでは確認出来ないから、具体的にどのくらい上昇するのかは分からない。

検証したw○ki民によれば空腹時よりもおよそ10%くらい上昇するらしい。


そして、素材の牙。

武器防具、あるいは薬の素材にもなるだろう。


毎日クエストについては4種類あり、ダンジョンクリア、ダンジョン防衛、ダンジョン拡張、ダンジョン評価の4つがある。

それぞれ説明しよう。


ダンジョンクリアは、適当なダンジョン1つクリア(最奥のボスを倒す)。

これは野良ダンジョンでもプレイヤー作成のダンジョンでも良い。


ダンジョン防衛は、自分のダンジョンの侵入者を5人以上殺すことで達成となる。

これもNPCでもプレイヤーでも構わない。


そして、ダンジョン拡張は、自分ダンジョンの階層を1つ追加すること。

階層を増やすための階段などはDPで購入する必要があり、それは1000DPほどするため、報酬の300DPでは損となる。

なのでダンジョン拡張クエについては別に、毎日行う必要はない。


最後にダンジョン評価。

自分のダンジョンが5度評価される、または自分が他のダンジョンを5種類評価する。

これによってなんと1000DPも貰える。

最も、評価対象はプレイヤーのダンジョンのみなので、初心者保護期間が終了するまではこのクエストは出来ない。

評価するためには、一度でも侵入しないとダメだからね。


毎日クエストは以上のような感じとなる。

一方のイベントクエストは、その時々によって内容も報酬も異なる。

こまめにクエスト画面や公式サイトをチェックしよう。


今回手に入れた槍はこんな感じ。


――――――――――――――――――――――――

狂虎天龍槍きょうこてんりゅうそう(レア度B)

【説明】狂え。そのひと突き、天龍のごとくなり。

【効果】狂気付与確率微上昇

※対霊有効

――――――――――――――――――――――――


って、対霊有効キター!


ゴーストもスライムと同じく物理無効で、普通は聖水で武器を濡らさないとダメージが通らない。

しかし何事も例外が存在する。

そう、例えばランダムエンチャント効果にこのように対~が付いている場合、ダメージが通るようになる。

ちなみにスライムの場合は対流動有効の効果だと、ダメージが通る。


ま、私はヘル・ディスワールド(左足)で対霊射撃有効を持っているため、使うことはなさそうだ。

この武器はオークション行きだね。


さて、スライム達の食事も終わったようなので帰ろっか。


私はダンジョンを出て、街道を離れ元の道をたどり、自分の洞窟へと向かう。

次に買う物は、移動系の物にしよう。移動時間がもったいない。


私は洞窟に戻り、ログアウトすることにした。

今日はもう疲れたから、掲示板を眺めながら宿題して、寝ることにしよう。




◇ ◇ ◇ ◇


本日の結果。

所持:1,300DP



「マッド・タイガーの肉x2(レア度D)」

「マッド・タイガーの牙x1(レア度D)」

「銅のインゴットx1(レア度E)」

狂虎天龍槍きょうこてんりゅうそうx1(レア度B)」

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