15.ニンニン
短いですが1話だけ投稿します。申し訳ありませんが、次回投稿予定は未定です。
マッドタイガーを討伐した私達は、洞窟ダンジョンへと戻ってきた。
もう1つの周辺探索チームは、ゲーム時間で1時間足らずしか経ってないからか、まだ戻ってきていないみたい。
このままログアウトしても良いのだけれど、何となく物足りないので、どこかに出かけてみることにした。
「そだねー、じゃあ次はここに行こうか」
以前にヤーバンの町のギルドでスクショした、掲示板の画像をスライム達に見せる。
「ぶにょにょ(またヤーバンに行くのかー?)」
「ぶにょーん(よく見なさいよ、ソフィアが指さしてるでしょ。ヤーバンの近くの、NPC進入不可のダンジョンよ)」
そう、おそらくプレイヤーの所持しているダンジョン。
ご近所付き合いがてら、そこに行ってみることにしたのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
おもち、おはぎ、カレー、紫おいもを連れて馬に乗り、15分ほど走らせ、お目当てのダンジョンへとたどり着く。
「これかぁ」
――――――――――――――――――――――――
ダンジョン名:ヤヨイの家(ヤヨイ)(ログイン中)
ダンジョン傾向:???
ダンジョン階層数:???
ダンジョン内魔獣:???
ダンジョン階層ボス:???
所持:???DP
――――――――――――――――――――――――
小山に石造りの階段が続き、その上に神社の鳥居っぽいのが見える。
この小山自体がダンジョンなのだろう、侵入出来なかった。
で、先程からさめざめと泣く声が聞こえる。
このダンジョンの奥からだ。
「ぶにょーん(気味が悪いわね)」
「ぶにょにょ(おばけが出たりしてな!)」
「ゴポッ(……いや、モンスターの気配は感じない)」
「ブヨル(ダンジョンマスター1人だけっぽいぜぇー)」
プレイヤーはまだ、他のプレイヤーのダンジョンに入る事は出来ない。
けれど、交流が出来ない訳じゃない。
私はエリアチャットで「こんにちは」と文章を送った。
……。
…………。
……返信なし、かぁ。
ま、別に仲良くする必要も無いんだけ『こんにちはどなたですか』返信チャット遅っ?!
「ダンジョンマスターのソフィアだよ。お話しない?ダンジョンの外に来られる?」と文章を送る。
……。
…………。
……『かしこまりましああ』やっぱ返信遅っ?! ってか打ち間違えてるし。
タタタタタと駆ける音がしたと思ったら、凄い速さで何者かが階段を降りて来る。
「お、お待たせしましたぁー!」
初期装備のボロ布を来た、黒髪ポニテの女子が降りてきた。
◇ ◇ ◇ ◇
・ヤヨイ視点
私はとある忍者の村に住む、女子高生。
忍者とは、秘伝の術を使った諜報活動をしている者達です。
先祖代々から受け継がれるその職業に憧れ、私も忍者修行の日々に明け暮れました。
そんなある日の事、村の長から呼ばれて、最終試練を言い渡されたのです。
「『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』というゲームで、ランカーになりなさい」
「あの……ランカーとは?」
「自分で調べなさい。試練は既に始まっています。
あなたは電子機器関連の知識が乏しい。それではこの時代、忍者にはなれません」
「わかりました。ちゃちゃっと試練を達成して、立派な忍者になります!」
長から渡されたヘッドセットを握りしめ、そう宣言する。
翻訳ソフトで調べましたが、ランカーとは、ゲーム内の上位者を指す言葉だそうです。
ゲーム内で上位に上るなんて、簡単な試練です♪
今晩にでも達成してみせましょう!
私のそんな甘い考えは、すぐに叩き折られることになります。
ゲーム内の人間に捕らえられ、いじめられ、ゲーム内で死んでダンジョンの中に復活して……
この時の私は知りませんでしたが、このゲームは初見殺し、初心者殺しに溢れているので、ゲームをよく知らない、それどころか機械音痴の私など、ランカーどころかまともにプレイする事すら難しいのでした。
とても試練を達成できそうもなく、ダンジョン内で泣いていると、メッセージが届きました。
ソフィアさんという方からです。お話がしたいそうです。
たどたどしく返信し、急いで駆けつけました。
同じくゲームをしている人間の方なら、ランカーになる秘訣が聞けるかもしれません。
打算的な考えによるこの出会いが、私の世界を大きく広げることになるとは、この時は考えもしませんでした。